3月5日の放送では、征韓論争をめぐり、西郷隆盛の朝鮮への渡航を阻むために、大久保利通が政務の現場に復帰を決断し、竹馬の友であり、倒幕維新の盟友でもある刎頚の友西郷との、政治の上での決裂を覚悟する場面が放送された。
ドラマでは、夜遅くに、意を決した大久保が、隆盛の弟の従道の家を訪ねて、胸の内を涙を流しながら語るシーンで西郷隆盛と大久保利通の友情が描き出されていた。
大久保は言う。
青年のころに、自身が苦境を乗り越えられたのも、世の中をよくするために藩の重臣となって倒幕維新を成し遂げられたのも、西洋を視察し、新国家のビジョンを描くことができたのも、すべて西郷さんがいてくれたおかげだと。
その西郷さんの、冷静に判断すれば暴挙ともいえる朝鮮への渡航を阻んで西郷さんの命を守るためにも、新国家建設を遂行していくためにも、西郷さんとの仲違いを恐れて逃げ回っているいるわけにはいかない。
それが、西郷さんの友情と信頼に応える唯一の道になると。
また、このことは西郷さんならばいつかは分かってくれるだろうが、自分もいつ暗殺されるかわからない立場にいるので、もし、そういうことになったら、この思いを西郷さんに伝えてくれ、と。
じっと話を聞いていた従道は、大久保の思いを理解して、大久保に酒のグラスを差しだし、杯を合わせる。
私は、このシーンが、この長いドラマのクライマックスだと思う。
幕末維新の、奇跡のような歴史の主人公である西郷隆盛と大久保利通の友情が、このドラマの主題だと思うからである。
この、大久保の述懐シーンの次の回の放送では、今度は西郷が身の回りの世話をする身近な人に、「一蔵どん(大久保のこと)」は自分のことをよくわかってくれていると語るシーンで二人の友情を演出する。
また、その次の回では、西郷の朝鮮への派遣を、機会を逃さず公家の岩倉具視らに働きかけて阻止の工作をする大久保について西郷は、「さすがは一蔵どんじゃ。機会は逃がさぬ。」評し、笑みを浮かべる。
西郷と大久保がおかれた当時の状況から、決裂すれば二度と会えなくなるであろうほどの重大な事の成り行きのなかで、お互いを理解しあう姿が感涙を誘う。
西南戦争で西郷が没した翌年の五月に、大久保も不平士族の手により斬殺される。
そのとき、大久保が携行していたもののなかに西郷からの書簡があったという。
その手紙は、海音寺潮五郎の小説「西郷と大久保」によれば、大久保が米欧視察の長い旅の間に、西郷が書き送ったものを馬車の中で広げていたのだという。
その書簡の内容にとても興味が持たれるが、知るすべはないものだろうかと思いは募る。
まだ、最終回を迎えていないが、前に見たときの記憶では、刺客に斬られた大久保の懐中から書簡がこぼれ落ちる演出で、幕を引くのではなかったかと思う。
西南戦争で自刃する時に、きっと西郷さんは「一蔵どん」を思い浮かべたことだろう。
その翌年、紀尾井坂で凶刃に倒れ行く時の大久保もきっと「吉之助さぁ(西郷隆盛)」のことを思い浮かべたに違いない。
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