中学生の時に、音楽の先生にほめられたことがある。
名前は忘れたが、スラリとしたきれいな先生だった。
教材にモーツァルトが取り上げられたときに、曲名に続いて「K」で始まる番号が付いていて、
先生は「このKは何のことかわかりますか」と問われた。
私はすかさず「ケッへル!」と答えた。
先生は、たぶん知っている生徒はピアノを習っている子以外は知るものはあるまいと思っていたと思う。
普段はマジメに授業に取り組まない私が以外にも答えたので驚いているようだった。
何のことはない、まだオーディオ機器さえ持っていなかった離島住まいの私は、当時クロスオーバーと呼ばれていたフュージョン系音楽や、ジャズ、クラシック、謡曲などをFM放送で聞くのが異文化・異世界との接点で、好奇心に
満ちた楽しみだったのだ。それで、ケッヘル番号のことを知っていただけのことだったのだが、ほめられた嬉しさを、近頃モーツァルトをよく聴くようになって思い出した。