のほほん書斎(日高茂和)

訣別のための巡礼

日本全国で、廃墟ブームなのだそうだ。
長崎県内でも、軍艦島めぐりには、全国から多くの人が集まり盛況なのだという。
日本全国で、金山跡やら明治期の工場跡など、現在では使われなくなった産業遺構に人々が引き付けられ、集まっているという。

この現象に、私はあることを思い浮かべる。

いくつかあるなかのひとつが、有名な芭蕉の句である

 「夏草やつわものどもが夢の跡」

である。

自分自身が生きた時代のことではないけれども、その場所に来れば、かつてそこで生きた人々が栄枯盛衰をくり拡げたという、今はなき人々ながら、確かにそこにいた人々への共感と懐かしさをおぼえる性質が、人間には本能的にあるのであろう。
肉体の形質が遺伝するように、意識の遺伝もあるのかもしれない。

幕末から明治維新前後の数年から十年くらい、社会のありようも、人々の価値観も大きく変動することになった。

明治と昭和の大きな戦争。

明治の戦争で日本人は、自国の位置づけの認識を大きく変えた。

昭和の戦争でもまた、日本人は大きな社会のありようと価値観の変動を経験した。

そして高度な経済成長とバブル。さらにその終焉。



今、私は、「夢の跡」を訪ねる人々の足どりに、このままでは持続可能な未来はないのだという、しばらく前まで美徳とされたモノの大量消費を豊かとみる価値観への訣別するための巡礼の姿をイメージしてしまう。
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