新月のサソリ

空想・幻想・詩・たまにリアル。
孤独に沈みたい。光に癒やされたい。
ふと浮かぶ思い。そんな色々。

風が運ぶもの

2024-09-19 05:33:09 | 

風が吹く。びゅんと吹く。
何もかもをさらっていく。
じめじめといじけた気持ちも
もやもやとやり切れない気持ちも
ぜんぶキレイにさらっていく。
あとはスカッと晴れるだけ。

風が吹く。ざざっと吹く。
何もかもをうばっていく。
やっと芽がでた小さなフタバも
やっと掴んだちっぽけな温もりも
ぜんぶキレイにうばっていく。
はじめからまたやり直し。

風が吹く。町に吹く。
海にも山にも空にも何処にも
みんなのところに風が吹く。
うらの空き地や、ふるびた門扉、
野原のくぼみや、ビルの谷間に。
猫の背中に、あなたの頬に。

そうして風とたっぷり遊んだら
イヤなものもウレシイものも
無作為にためらいもなく空に返す。
ぜんぶをキレイに空に返す。

あきらめることをせず
逆らうこともせず
風の意味を知るのでしょうか。

それとも私たちの記憶の中に
不変の風が吹いていることを
ただ思い出せばいいのでしょうか。

去って行ったものたちは
少し形を変え、少し色味を帯び
私たちのもとへいつかまた

きっと風が運ぶのだろう。