停泊地)高円寺JIROKICHI(08.3/8)
メインアーティスト)
吾妻 光良&The Swinging Boppers(略称:バッパーズ)
(吾妻 光良vo,g/早崎 詩生pf,牧 裕b,岡地 曙裕dr,近 尚也tp,富田 芳正tp,名取 茂夫p,西島 泰介tb,糸井 将太a.sax,渡辺 康蔵a.sax,西川 文二t.sax,山口 三平b.sax)
このブログを読んでいる大半の方々は、「吾妻 光良」ってなにもの?という感じですよね。専門誌以外で大きく取り上げられることは、まず有りませんので、知らなくて当然だと思います。
しかし、これが一旦、ブルースとかその関連の世界に一歩踏み入れると知らない人はいません。しかも、この話題をふると、急にみんな頬がゆるみ始め、楽しく、熱く語り始めるんですね。J-POPの中でも個性的な活動をしている、EGO-WRAPPIN'やクランボン、東京スカパラ等等、熱狂的なシンパは数多くいます。
勿論CDショップ店員といった玄人筋にも熱いファンが多く、バッパースのCD発売の情報が入るや否や、本部の指示とか関係なく勝手にどんどんショップの一押し展開し始めます。 それを見たレコード会社の若い営業担当などは、「吾妻 光良」ってなにものなんだろう?という感じで目を白黒させているのを目撃しています。
バッパーズの音楽は簡単に言うと、ビッグバンドの演奏するジャズ、ブルース、ラテンなど様々な音楽をバックに、吾妻さんがギターを弾き、歌を歌うというバンドです。'40~50年代のジャンプ・ブルースと呼ばれるスタイルがベースになっていますが、結成から四半世紀を経て今では唯一無二の音楽集団という感じですね。
吾妻さん本人を含めほとんどのメンバーが他に職業を持っているアマチュア集団です。従って、大手レコード会社所属にもかかわらず、CD発売全国イベントとかは有りません。都内を中心に、ちょこちょこっとやるだけです。これが逆に希少価値になっているようですね。
CDはJ-POPなみに、数万単位で売れるし、ライブは渋谷QUATTROクラスで、直ぐに
SOLD OUTになります。“今度バッパーズが関西に来るらしいよ”などという情報が入ると、大騒ぎになるらしいです。
そしてそのバッパーズは、本日、高円寺「ジロキチ」に登場です。前回、前々回ともに渋谷「QUATTRO」での観戦だったので、彼らのホームグラウンドでのライブは、前回以上に楽しみです。
7時からスタートするのに、整理券をもらう為に一旦5時半にこなくてはいけません。予約とか前売りとか一切ありません。
40分前に付いたけど既にたくさんの人が並んでいます。やっともらったのが「91番」。この番号だと勿論立ち見。しかも後の方になります。座れるのは40番ぐらいまでか。この人たちは昼ぐらいから並んでいるのかな。みんなそこそこの年格好のなのに熱いですね。中央線沿線老舗ライブハウスの筋金入りのバッパーズファンなんでしょうね。私の後ろ20人ぐらいで本日SOLD OUT。
一旦解散して、六時半に、整理番号順に並びなおして、正式な入場になります。
さあ、お揃いの蝶ネクタイをしたバッパーズのメンバーが登場して、エリントン・ナンバーの「Things Ain't What They Used To Be」でオープン。
そして吾妻さんが登場。一部の前半は、昔を振り返り、ブルース系ナンバーのオンパレード。
そして後半は、北京五輪記念として、中国にちなんだナンバーを、と前説があり、思わず、心のなかで“よし、きっとアレを聞ける!”と叫んでしまった。
オリジナルの「中華Baby」のあとやってくれました。
わたしのフェイバリット・スタンダード・ナンバー、
「On A Slow Boat To China」。この曲、村上春樹風に表記すると
「中国行きのスロウ・ボート」となりますね。私も含め、ソニー・ロリンズやフィル・ウッズのサックス系の名演でこの曲の虜になったジャズファンは大勢いると思います。そして、インスト系のイメージだったこの曲が、ボーカル曲として最高のナンバーだと知らされたのが、今回画像で出した、バッパーズの'83年のデビューアルバムです。
(みんな若いですね。20代ですよ!このLPは超レア盤で結構な値段らしいです。売るつもりはありませんが・・・)
そして中国ものの最後は、魚や野菜とかじゃなくて肉が一番と歌い上げる「やっぱり肉を喰おう」。バッパーズのライブでは、歌詞がその時々変更されることが多く今回も、予想通りここで“冷凍ギョーザ”が出てきました。このあとも「三浦元社長」とか時事ネタてんこ盛りです。
吾妻さんの魅力は、その強烈な個性ですね。歌詞にも表れているんだけど、皮肉なギャグ好きで、自虐的で照れ屋といったところ。なにか、ビートタケシや爆笑の太田さんに通じる、江戸っ子風ボードビルダーの芸風を感じます。だから自然と、ストレートなブルース・スタイルではなくジャンプ・ブルースというブラスとの掛け合いやウキウキするようなブギ・スタイルを選んでいったんだと思います。
しかし、この独特なスタイルを生み出すのに少し時間が掛かっています。
掲載のLPでは、日本語の歌詞はありません。一曲だけシングルカットした時に日本語の歌詞に変えています。その時は、少し恥ずかしがっていたようだと、プロデュースした永井隆さんは、ライナーで書いています。
ちょっと油断するとコミック・バンドになってしまいます。なので今のようなスタイルなるまでに、長い熟成期間が必要だったんだと思います。
二部のハイライトは、バッパーズ珠玉のバラード「しかしまぁなんだなぁ」。
長期間、酎ハイで熟成され、鍛え上げられた吾妻さんのハスキーボイスが、会場全体をうっとりと包み込みます。
最後は、「学校出たのかな」で締めくくり。
そして、アンコールの最後は、転勤から戻ってきた山口三平さんのバリトンサックスを
フィーチャーして、「ハニーサックル・ローズ」でお祝い。
いや~、久しぶりに熱くて、濃いライブを堪能しました。近くにいた若い2人組みは、バッパーズのライブは始めてらしい。文字通り腰を抜かして、“スゲー”といったきり放心状態。
しかしまぁなんだなぁ、バッパーズのライブを観ると必ず、焼き鳥でホッピー
やりたくなるなぁ。
そうだ、今日は久しぶりに、高田馬場の「鳥やす」寄って船にもどろう!