辺野古新基地建設事業・公有水面埋立変更承認申請に係る意見書
「普天間飛行場代替施設建設事業 公有水面埋立変更承認申請」が今年の4月20日に、防衛省から出された。
沖縄県知事は申請を不承認とする見通しだが、県として申請を縦覧し、意見書の提出を広く求めた。コロナ禍の影響もあり、意見書の受付は大きく遅れたが、9月中旬に実施され、多くの意見書が提出された。今回の意見書提出自体が、沖縄県を支援する声の顕在化として位置づけられたからだ。実際、10月9日時点で、県に寄せられた意見書が速報値で1万8904件だったと発表した。2013年に当初の埋め立て承認申請が公開された際の意見書数は約3千件だったため、今回の設計変更に対して寄せられた意見書の数は約6倍となった。
インターネット上にはさまざまな団体や著名人が公表した意見書を見ることができる。
しげの自身も意見書を書こう!と呼びかけてきたし、実際に提出した。多くの人たちが提出した意見書の内容とは少し強調する部分が違う。というわけで、ここに内容を公開しておく。
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辺野古新基地建設事業・公有水面埋立変更承認申請に係る意見書
沖縄県知事 玉城デニー様
2020年9月28日
提出者氏名 茂野俊哉
住所 xxx 電話 xxx
利害関係の内容
本件は日本国政府が当事者自治体の意向に反して強行している事業の一環として申請されているものです。この事業の遂行は日本国民に根強く存在する沖縄への差別意識を背景におこなわれているものであり、人権の見地、立憲民主主義の見地のいずれからも許されないものです。直接的な抑圧をおこなっているの直接の加害者は政府ですが、その政府の行動を容認している国民もまた、利害関係としては加害者の責を負うものです。したがって、この差別と人権侵害の事案において、我々は沖縄県民に対する加害者としての責を負うものであり、日本政府による不当な差別と抑圧をやめさせるよう働きかけるのは市民の責務です。
意見
沖縄県知事は、今回の公有水面埋立変更承認申請を不承認としてください。
理由
1 本件の埋立変更に合理的な実現性はなく、変更内容にも虚偽が認められる
変更の根拠となった海底地盤の問題は、当初隠蔽されていました。地盤の問題が隠蔽しきれなくなり、地盤改良の実現可能な工法も存在しないことも明らかになったため、変更によって技術的問題は全く解消されていないにも関わらず、実現不可能を覆い隠す虚偽の説明をし、工事続行の正当化を図るのが埋立変更申請の実態と考えます。
2 「普天間基地移設・辺野古新基地建設」自体が虚構である
辺野古の新基地は、1997年時点で説明された普天間基地移設の代替施設である、という根拠自体が虚構です。普天間基地は1996年時点でアメリカ政府が無条件返還を検討していたこと、また、在沖米軍の兵力は必ずしも沖縄に駐留する必要や軍事的根拠を持たないこと、代替施設の提案自体、米軍の引き上げを恐れる日本政府が作ったものであること、等々は、公開された外交資料等で、すでに明らかになっています。
3 沖縄県民の過半数以上が基地建設に反対している
当該自治体の住民の過半数以上が反対している事案を国が強行する、などという暴挙は、沖縄以外の地域では決して実施され得ないことです。民主主義の原則からも、地方自治の原則からも許されないことです。
4 基地建設の強行の真意は「抵抗するものへの制裁=心を折ること」
上記のとおり、辺野古新基地建設は不要であるばかりでなく実現可能性も乏しいものです。
にもかかわらず、建設作業は続行されており、投入=浪費される費用、時間、労力は膨れ上がるばかりです。秋田県と山口県に計画していたイージス・アショア配備が撤回されたのと対照的な状況です。結局、政府の狙いは沖縄県民への制裁であり、抵抗の心を折ってしまうこと以外にないと考えられます。
5 沖縄差別支配の歴史と、歴史から醸成された強力な差別意識が原動力
米軍基地を身近に置くことは危険や被害を伴うことであり、そうした住民の犠牲を伴うことを沖縄に集中的に背負わせることで、日本のそれ以外の地域に住む人々は現実を直視することを回避してきました。沖縄の基地負担が過重であることは政府も一貫して認めています。しかし、その一方で、その不都合を正当化するために、多くの日本国民は沖縄への強力な偏見・差別意識を秘めています。沖縄県民が基地反対の立場を表明するたびにその差別意識は吹き出し、偏見に基づく虚偽の情報を根拠に誹謗中傷を繰り返す人々が現われます。そして、積極的な誹謗中傷を口にしない人々も、沖縄県民に対しておこなわれている理不尽なふるまいを容認し、県民の抵抗を無視することで応えています。この無視という態度自体が、究極の差別であると考えます。
以上、本申請の不当性は見逃すことができず、また、沖縄への新基地建設の続行は日本政府による沖縄県民への不当な抑圧であり、その根源である日本における沖縄への差別支配の歴史を問い返した上で、今なお日本国民が、沖縄への抑圧を正当化し、抑圧に加担する、加害者の側に位置するものであるとの認識に立ち、そうした当該者の責務として、沖縄県知事が今回の公有水面埋立変更承認申請を不承認することへの全面的な支持と支援を誓うものです。