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ロバート会議規則(7)

2022-03-14 09:50:03 | 日記

会議の進め方

 今回は少々長めです。

 会議に出席するにあたって、まず、心得ておくべきことをまとめています。

(ア)組織(グループ)の権利は構成員(メンバー)一人一人の権利に優る

 少々分かりにくいかもしれません。

 組織は、組織の目標・目的、構成員(メンバー)、構成員の権利、構成員の義務などが書かれた規約(Bylaw)があることが前提です。構成員は、組織の目標・目的に向けて協力し合わなければなりません。そのとき、各構成員は、自分のやりたいこと(やれること)を犠牲にする必要が出て来る場合もあります。組織の目的・目標は、組織を擬人化すると組織の権利という表現になり、自分のやりたいこと・やれることが個人の権利になります。もちろん、セクハラ、パワハラを許し、人権などを犠牲にせよと言っているわけではないはずです。組織の権利が個人の権利より優先するということは、組織の会議にも当てはまります。

 「民主主義の文法」には、会議中に「意見を述べることは俺の権利だ」といって、勝手に話続け、議長に「会議を進めること(組織の目的に向かって進むこと)を妨害している」として、制止、あるいは、退場を命じられる例が出ています。これが分かり易いかもしません。

(イ)すべての構成員は平等であり、彼らの権利も平等である

  会議に関する権利として、「民主主義の文法」では以下の権利を上げています。

 ・会議に出席すること

 ・議案を提出し、討議(審議)で発言すること

 ・役員を指名すること

 ・役員に就任すること

 ・表決すること

 上の2つ目のポツは議案を提出した構成員に関する記述のように見えますので、「議題に対して自分の意見を述べること」という項目があった方がいいように思います。

 3つ目のポツは、英語版(原書)では目的語がなく、単にnominateと書かれています。後ほど出て来る委員会の委員、委員長などを指名することもあるでしょうから、「指名すること」とした方がよさそうに思います。

 「役員」は「officer」の訳語ですが、誰なのかは明確に書かれていません。「presiding officer」だけは明示されており、議長は役員の一人であることは間違いないようです(preside:議長をする)。その他は、会計や書記なども役員と考えているようです。

 「表決」とは、要するに「決を採る」ことです。つまり、議題に対する会議(組織)の態度を決めることです。

 似た響のある言葉に、「決議(resolution)」があります。重要である、あるいは複雑な問題である、あるいはより公式性が必要である、等の議案は書面で提出されます。この書面で提出された議案を「決議」と呼びます。紛らわしいのですが決議は表決されるまで、一議案です。

(ウ)審議を進めるためには定足数以上の出席が必要である

 定足数とは、公式の会議を開くために必要な出席者数です。組織を代表しない少人数の人たちがいろんなことを決めることを防ぐために、定足数は会議に出席できる最大数の過半数とすることが多いようです(組織の構成員の半数を超えていれば、その人たちは組織を代表しているとみるということです)。ここで、過半数は半分を超えるという意味であることに注意が必要です。例えば、会議に出世する資格のある人が全体で60人であれば、過半数は31人であり、全体が59人であれば、30人になります。

 余談ですが、半数以上は、半数を含みますので過半数を説明するときには不適切です。

(エ)過半数が決する

 ある議題が賛否を問うものだとします。このとき、会議出席者全員が表決に加わり(後程説明する棄権する人がいない)、その半数以上が議題に賛成であれば、その議題で提案された内容が組織の結論であるとするということです。これも(ウ)の定足数と似た考え方です。

 注意すべきは、会議出席者が会議に出席する資格のある人の半数+1で、会議出席者全員が表決に加わり、議案賛成する人がその半数+1であったとすると、会議に出席する資格のある人の1/4+1.5人というわずかな人数で組織の方向が決められてしまうと言うことです。会議に出席することの重要性が分かると思います。

 表決は、会議出席者のうち表決に加わった数で可否が決定されます。表決に加わらないことを「棄権」と言います。表決は会議出席者の数から棄権の数を引いた数で可否が決まります。例えば、会議出席者数が10人だとします(定足数は満たしているとします)。ある議題の表決で、賛成3,反対2、棄権5だったとすると、表決に加わった数は5で、そのうち過半数の3人が賛成していますので、この議案は賛成多数として処理されます。

(オ)沈黙は同意を意味する

 棄権によってその議題に対して沈黙(賛否を表明しない)する場合、沈黙した会議参加者は、表決の過半数の決定に従うということを表明していることになります(従わなければなりません)。棄権は、どうしても態度を示したくないという以外、避けるべきです。

(カ)3分の2による表決

 構成員の権利を制限したり、はく奪したり、あるいは既決の事案を変更するなどの重要な議題の表決は、表決に加わった、すなわち、棄権者を除いた会議参加者の3分の2以上で採択する表決を行わなければなりません。

 3分の2による表決の事案は、予め規約で決めておくか、会議の中で議案として提出し、審議し(審議しないものもあります)、表決する必要があります。

(キ)1度に1つの議題、1度に1人の発言者

 審議している議題に直接関係ない議案は取り上げられません。例えば、自治会でゴミの出し方のルールを決めている議題の審議中に、ゴミ集め場所の掃除当番の回り持ち順序についての議案は、(一般には)取り上げられません。一方、ゴミの出し方のルールについては十分審議を尽くしたから表決に移ってくれ、という議案(議事進行議案)は取り上げられることが多いと思います。

 さらに、1人の構成員(会議出席者)の発言が認められると、その構成員には発言権が与えられ、他の構成員は発言を途中で遮ることはできません。他の構成員が発言するためには、発言していた構成員の発言が終了し、次に発言を希望する者(一般に挙手でその意を示す)に発言が認められてからでなくてはなりません。

(ク)討議が認められている議題は十分に討議されなければならない

 議事進行役(一般に議長)は、会議出席者がその議題を討議(審議)しなければならないという意思がある限り、それを無視して表決に持ち込むことはできません。討議(審議)の途中で表決に持ち込むためには、議案としてそれが提出され、出席者の権利を制限することになるため、3分の2による表決が必要です。

(ケ)いったん議題が表決されると、その議題を審議した会議で同一の議案やそれと本質的に同様な議案を取り上げる(議題とする)ことはできません

 要するに蒸し返して、議論を堂々巡りさせるな、ということです。この裁定(それはすでに審議して結論が出ているから議題として取り上げない)は議長が判断し、議案の審議を行うことはないのが普通です。

(コ)討議(審議)において個人攻撃をしてはいけない

 言わずもがなです。議論は論理的、理性的に行われるべきです。場合によっては客観的な証拠に基づいて行わなければなりません。会議参加者は個人として尊重される権利を有しています。