形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

ザリガニの味

2011-06-22 15:46:52 | 自然と野遊び

小学校低学年の頃、東京駅までおふくろに連れていかれ、
初めて一人で汽車に乗って、おふくろの郷里、桑名まで行った。 
といっても一人で行ったのは名古屋までで、名古屋駅には
おふくろの姉の旦那、イサオおじさんが迎えにきてくれていた。

イサオおじさんは頭がきれいに禿げていたが背が高く、
とてもほがらかな人だった。 駅で私を見たとたん、
「おお!一人でよく来たな~!」  
と大きな声をかけてくれた。

名古屋で桑名行きの電車に乗ろうとしたら、乗客が降りないうちから、
みんながド~ッと乗り込んで行った。 降りるほうは必死で、泳ぐように
して降りていた。 イサオおじさんも、大きな体にまかせて先に乗り込み、
小さい私はおじさんにしがみついて一緒に乗った。 当時の日本は今と違い、
マナーがメチャクチャ悪かったが、人々のバイタリティーは凄かった。

翌日から大好きな網でやる魚獲り三昧の生活が始まった。 
その頃は都会でも田舎でも、子どもたちは集団でよく遊んでいた。 
リーダー格の年長の少年が、みんなをまとめて面倒を見、小さな子も
リーダーにくっついて遊んでいた。 

連れられて行って驚いたのは、田んぼのそばの小川に、ザリガニが
たくさんいたことだ。 濁った水の中に垂れ下がった、アシの葉っぱに
つかまって、遠い向こうまでズラーっと並んでいた。 
もっと驚いたのは、子どもたちがザリガニを見向きもしないことだ。 
東京じゃ考えられなく、みんなが獲ろうとしているのは魚だけだった。

その魚獲りも、私から見たらシロウトの獲りかたじゃなかった。 
東京の子どもが、竹の棒の先についた丸い網で、頼りなげに獲るのと
違うのだ。 連中は手慣れたふうに小川に入り、柄のない大きなザル
みたいな網をアシの茂みの中に受け、サッと片足で茂みを反対から、
ガシャガシャとかき混ぜ、網の中に逃げてきた魚をすくい取る。 
なんでもU字の形に穴があって、片方から脅すと反対側から飛び出してくる
そうだ。 魚は大小のナマズやフナ、鯉、雷魚、たまにウナギが入った。

私はザリガニが気になってしかたなく、リーダーのマサシちゃんに
獲ってよと頼んだ。 みんなはなんでこんなものを?!みたいな、
びっくり顔で私を見たが、それでも獲ってくれた。

簡単である。 ただ網を持って、アシの葉っぱにつかまっているザリガニを
道を歩きながら、ザーっとすくい取るだけだ。 2、3回すくって持っていった
バケツにいっぱいになった。 私はバケツを持って帰り、叔母に茹でて食べ
させてくれるように頼んだ。

夕食にそれが出てきた。 真っ赤に塩茹でにされたザリガニは、竹の大ザルに
山盛りでうまそうだった。  ところが食べてみると意外に身がなく、
けっこうな大きさのものでも、尻尾のところにほんの小指の先ほどしかないのだ。 
それにかなり泥臭かったが、全部食べた。 夜中になってお腹を下し 
何度も便所に駆け込んだ。


形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/



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