千曲川のうた

日本一の長河千曲川。その季節の表情を詩歌とともに。
人生は俳句と釣りさ。あ、それと愛。

カメムシ

2019年10月20日 | 千曲川の動物
日射しの明るい日曜日です。
堤防に停めておいた作業車の窓に小さな虫が。
初めて見ました。


この形はカメムシの類に違いないのですが、背にはくっきりハートの代紋。

知ってる人は知ってる虫なのでしょう。
興味を持たれた方は各自検索して下さい。

カメムシは秋の季語。放屁虫(へっぴりむし)で詠まれることが多いでしょうか。
鎌でクズの蔓を刈り払っていると、葉の裏にカメムシのいることが多く、閉口します。
冬に洗濯物から出てくるのも最悪ですね。


  放屁虫ヱホバは善しと観たまへり 川端茅舎
  亀虫のはりついてゐる山水図   藺草慶子
  今を総てと亀虫と冬籠るなり   金子兜太


ハエトリグモ

2019年09月23日 | 千曲川の動物
トウガラシにアブラムシが発生しました。遊びで栽培してるだけですが、あまり増えるようなら駆除の方法を考えなくてはなりません。
ある朝見ると、葉にハエトリグモがいました。


見えますか?


拡大。

ハエトリグモは巣を張らず、飛びついて蠅を捕まえます。昔はよく家の中にいて便所の窓なんかで蠅を追っかけていました。このごろはとんと見なかったのですが、こういう所にもいたんだ。
はたしてこのクモはアブラムシを食べているのか、俄然興味が湧きます。
しかし観察しようと近づけば瞬間移動で隠れてしまい、私の視力では確認出来ません。

この格好を見ると、飛来する虫を待ち構えているのでしょうか。


蜘蛛は夏の季語。ハエトリグモも当然その一種ですが、多くの歳時記は「蜘蛛」とは別項で「蠅虎(はえとりぐも)」の題を立てています。蜘蛛の巣を懸ける普通のクモとは生態が全く違うからでしょう。

  蠅虎鉄斎の書にはしりけり  青畝
  蠅取れぬ蠅虎と時過ぎぬ   楸邨
  帰国して蠅虎の待つわが家  汀子
  向きかへて蠅虎の鬱と跳ぶ  展宏

「蠅虎」の表記は大袈裟な感じですが、この蜘蛛のハンターぶりは古くから注目されていたようです。
平井照敏編「新歳時記」(河出文庫)は蠅虎の解説に、

蠅をとらえるすばやさが喜ばれ、昔はこれを飼いならして、蠅をとらせて喜んだという。それで虎の字が宛てられ、また座敷鷹とも言ったという。

としています。

わたしはこの歳時記を愛用しているので、「座敷鷹」という呼び方は知っていました。
しかしこの語、広辞苑にも日本国語大辞典にもなく、新旧の歳時記を見ても「新歳時記」以外には取り上げているものがありません。「座敷鷹」を季語とした例句も私の管見には入りませんでした。
それでも古句にあるかも知れないと考えて今回検索していると、思わぬサイトに行き当たりました。なんと「座敷鷹」の専門サイト。

江戸と座敷鷹

座敷鷹情報満載の驚くべき、というか呆れるべきページです。
蠅取蜘蛛ファンの方は是非!

アメリカシロヒトリ

2019年09月10日 | 千曲川の動物
アメリカシロヒトリは年に2回発生します。8月末から9月初旬は2回目の発生期です。
通称アメシロ。桜、桑、胡桃、柳、柿などによく付きますが、大発生した時はあらゆる広葉樹を食うように見えます。

胡桃はまずやられる木です。


葉っぱはほとんど食われてしまった。


こんな感じ。


こちらの木もひどい状態。

こちらは柿の木です。


葉は一枚も無く、青い実がまばらに残っています。


アメリカシロヒトリのヒトリは「火取り」。火取虫の意ですね。
だからその成虫は「蛾・火取虫」であり、幼虫は「毛虫」であって、いずれも夏の季語です。
一般にアメシロの成虫には余り関心が向けられません。アメシロと言えばほぼ幼虫を指しています。だから俳句に詠むとすれば「毛虫」なのでしょう。
単に「毛虫」ではあの爆発的に繁殖して木を丸坊主にしてしまう勢いが想像されにくいように思いますが、ま、しょうがない。なにしろ名前が長すぎるので「アメリカシロヒトリ」と詠んだ句は稀です。

もう一つ、時季の問題があります。「秋の毛虫」という季語はありませんから、さてどうしよう。

  垂れ毛虫皆木にもどり秋の風  臼田亞浪
  葛咲けり毛虫地に置く糞ゆたか 飯田龍太

こういう大先生になれば季重ねなんてへっちゃらなのですが。

小さくてもマムシ

2019年07月16日 | 千曲川の動物
河川敷に停めておいた車に戻ると、運転席ドアに近い地面にヘビが。
近づいてみると、どう見てもマムシです。おそらく30センチちょっとのサイズ。



いっちょまえに口を大きく開け、尻尾の先をふるわせて威嚇してきた。
私の座右の銘は「穏便に穏便に」ですから、遠くから足で砂を蹴って追い払うことにしました。



日向ぼっこの邪魔をされたと怒っているのか、なかなか動かなかったけれど、ようやく橋脚の根元の草むらへ。
やれやれ、マムシはやはりちょっと怖い。
近くの山に「マムシ沢」というところがありますが、案内板を見ただけで行きたくなくなります。

マムシの付く地名は各地にたくさんあるのだろうと思います。


  男らのものがなしくも蝮山  飯島晴子

  蝮谷から梯子など見えてをる 岡井省二

  石踏めば石がぐらりと蝮沢  辻田克巳


へび

2019年02月05日 | 千曲川の動物


ジムグリという蛇だろうと思う。
五月、車で河川敷の道を走っているとこいつがいて、もう少しで轢くところだった。ヘビ対応の自動ブレーキは装備していない。
真っ直ぐに伸ばせば90cmくらいありそうだったが、引っ張って計測するのはやめておいた。きっと蛇が嫌がるだろうからだ。(ああ、なんて優しいのだろう)。

安部公房が蛇ついて論じた文章に、イキモノの気味悪さは「擬人化のしにくさ」と相関するとあったように覚えている。たしかに蛇は、その日常生活を想像しにくく、擬人化しにくい。蛇が主役となる話は幾らもあるが、ほとんどは人間に変身して活動するものだ。蛇のまんまでは主役になりにくい。実に感情移入しづらいと思う。
ネズミもライオンも熱帯魚もカメもスーパースターになったが、蛇が主人公のディズニーアニメなんかは多分制作されないだろう。

スーパースターはともかくとして、蛇も俳句では立派な主人公になれる。

蛇逃げて我を見し眼の草に残る  高浜虚子
蛇穴を出て見れば周の天下なり  高浜虚子
水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首     阿波野青畝
全長のさだまりて蛇すすむなり  山口誓子
蛇いでてすぐに女人に会ひにけり 橋本多佳子
草の根の蛇の眠りにとどきけり  桂 信子
蛇消えて唐招提寺裏秋暗し    秋元不死男
音楽漂う岸侵しゆく蛇の飢    赤尾兜子
若き蛇跨ぎかへりみ旅はじまる  西東三鬼
蛇遣いなかなか袋より出さず   田川飛旅子

蛇ばかりではない。ミミズもカエルもゲジゲジも蚊もゴキブリも、何でも来いだ。
俳句は面白い。

蜂の子

2019年01月11日 | 千曲川の動物


S どーもこんばんわ、サピアでーす。
W ウォーフでーす。二人あわせて、
WS サピアとウォーフでーす。
W さあいよいよ食欲の秋ですねえ。
S おいしいもんが、いろいろ出てきますなあ。
W しかしまあ何とゆうても秋はアレですねェ。焼いて食べたり、ご飯に炊込んだり、まさに秋の味覚の王様やからね。
S ほんま、アレは美味しいなあ、蜂の子。
W そうそう、蜂の子を土瓶蒸しにして熱いところを……、食えるか!そんなもん。松茸や、マッタケ。
S いや、蜂の子かてうまいでえ。
W うまいて、虫やないか、あんなもん。おお気色わる。
S お前な、蜂の子と聞いてトンボやらカマキリやらの一種と思うからいかんのやがな。蜂の子ォと聞いたら、明太子ォとか、お汁粉ォとか、ナタデココォとかを思い浮べてな、食べ物の一種だと考えればいいんや。そら確かに虫やけどな、「食べ物」ちゅうカテゴリーに入れたら自然と食べられるもんになるんやて。
W そんなもんかいなあ。
S フライパンでさっと炒めて砂糖醤油からめたやつなんて、香ばしゅうていけるでえ。
W そうかな。なんやだんだん旨そうに思えてきたなあ。わし、まだ食べたことないけど、きっと大好物や思うわ。
S そんな奴は、おらへんやろう。
WS どーもしっつれーしましたァ~。

 蜂の子を食べて白骨泊りかな   野見山朱鳥

台風一過

2013年09月22日 | 千曲川の動物
9月16日(2013)の台風18号で千曲川は久々の増水となった。いつも犬と散歩する河川敷は濁流に呑まれていた。
台風が通り過ぎるとすっかり空気が入れ替わり、気温は高いけれど爽快な風が吹いた。秋だ。

水の引いた川原を歩くと、ここは少し生臭い。
どこから流されてきたのか、夥しいザリガニが死んでいる。







あの激流ではどうにもならなかっただろう。







そして水が引き始めても本流へ泳ぎ帰ることができない。それにしても沢山だ。





こちらはサワガニ。川から遠くなってしまった場所で、乾いた砂の上を歩いていた。
ザリガニよりは陸上に強いから生きていたが、つまみ上げると弱々しくあがくばかりだった。



川まで持って行き浅瀬に放す。カニは水底にじっと動かず、全身に水が沁みわたるのを待っているようだ。



このカニ、数日中に恩返しにやって来るのではないかと思っている。

ちょっきんちょっきん、お礼にあなたの悪縁を切りませう、ちょっきんちょっきん。


すっぽんぽん

2013年07月16日 | 千曲川の動物
ここら辺は毎年スッポンが産卵に来る場所。私の見るところ3匹は来ていると思う。
千曲川本流のすぐ脇だが、岸を這い上がるのが比較的容易な地形で砂が厚く堆積しているので産卵場所としては都合が良いのだろう。
6年ほど前、一度だけ産卵中のスッポンに遭遇したことがある。



しかし写真を見て頂きたい。
どう見ても子スッポンが孵化した跡とは思えない。カラスかなにかに掘り出されて食われてしまったようだ。



このところ毎年こんな状態である。
何とかここのスッポンの繁殖を、と思っているのだが、難しい。誰かやってくれる方いませんか!?
情報提供します。

おはぐろとんぼ

2013年07月15日 | 千曲川の動物
もの思へば沢のほたるもわが身よりあくがれ出づる魂かとぞみる 和泉式部

和泉式部の思いは蛍となって闇の中を浮遊し明滅する。さすが和泉式部、かっこいい。



もし私の妄想が私から離れてそこいらを漂うとしたら、ホタルではなくオハグロトンボになるのだろう。これは私一個の感覚ではなく、オハグロを見たことのある人は多くその霊性のようなものを感じたことがあるのではないだろうか。
オハグロはなにか妖しい。川筋の小暗い木の下や草藪にいて、どうも陰性である。前後の翅をひらひらと別に動かすので、トンボらしくない。ヤンマやシオカラのような威勢の良さがなくて根暗な性質のくせに、尻尾はメタリック。どんだけカッコつけるのか、どんだけコンプレックスを抱えているのか。
7月、千曲川のオハグロはアカシアの林の中にいる。もう少し経つと川辺に戻って恋の季節になるらしい。

  おはぐろ蜻蛉川ゆつたりと流れゆく  水原春郎

平々凡々の句に見える。オハグロの妖しさ、霊的な感じについては言及されていない。
そのようなものを言葉にして一句をなせば、おそらく虚仮威しの句となって破綻するのだろう。だから平凡な景物と取り合わせるのが正解なのかも知れない。
だけど、やはり何か妖しいオハグロの句を作ってみたい。読んでみたい。




さを鹿立てり

2013年07月15日 | 千曲川の動物
やまたづの向ひの岡にさを鹿たてり神無月しぐれの雨にぬれつつ立てり 良寛

イノシシの足跡とシカの足跡は判別が難しい。
というか私はそれまでシカの足跡を見たことがなかったので、千曲川の河原でそれを見たときはてっきりイノシシだと思った。イノシシもその足跡も近年珍しくなく、よく見掛けていたので「ああ、こんなところにも出るのか」と眺めていただけだった。



だから葭叢から目の前にシカが飛び出してきた時は本当に驚いた。ほんの数メートル先だった。
ナマのシカは修学旅行以来である。向こうも驚いたようで、一瞬止まってこちらを見たが素晴らしい跳躍で去っていった。
それから夕方などときどき遭遇している。





いまや爆発的に増えているということで様々な被害があるようだが、とりあえずシカはとても美しい動物である。

  暮れぎはのせせらぎ渉る牡鹿かな  松栞
  さを鹿の角ゆらしては空を嗅ぐ
  川の水飲んで男鹿の枯色に
  西山に月あはあはと鹿の声