千曲川のうた

日本一の長河千曲川。その季節の表情を詩歌とともに。
人生は俳句と釣りさ。あ、それと愛。

松井須磨子

2019年08月26日 | 信州吟行
女優松井須磨子さんは松代町(現長野市)の出身です。

松代町清野の正林寺は彼女の生家の近くにあります。

正林寺本堂。


立派な彫刻があるのですが、写真へたくそ。


境内に「須磨子演劇碑」があります。


須磨子の筆になる「カチューシャの唄」が刻まれています。


庫裏には須磨子の写真や資料が展示されています。

須磨子のお墓はこのお寺ではなく、生家の裏山に整備されています。


  鳴りつよき春の踏切須磨子の地  宮坂静生

どこで詠まれたものか分かりませんが、おそらく松代でしょう。
するとこの踏切は長野電鉄河東線(屋代線)ということになります。
平成24年に廃線となり、もう踏切は鳴りません。

正林寺へは長野ICから15分くらい。


さて、松代より少し南、坂城町の大英寺には須磨子の句碑がありますから、これもご紹介しておきましょう。


大英寺です。


門前の駐車場に面したところに句碑があります。



  マントきて我新らしき女かな  須磨子


彼女の最期を思い合わせると、なんだか痛々しい感じのする句です。


大英寺へは坂城ICから15分くらい。

おにふすべ

2019年08月25日 | 千曲川の植物
8月中旬に雨が続いたためでしょう、オニフスベがたくさん生えてきました。


小さくて、真っ白で、かわいい茸です。


マッシュルームのような外見。


草地に出て来ますが、丈の高い草があるところにはなくて、堤防上のアスファルトのすぐ脇に並んでいます。


毎日少しずつ大きくなっています。


数日前は純白だったのですが、

中央部の色がちょっと変わってきました。


オニフスベは大きいものではバレーボールくらいに成長するそうですが、私がこれまでに見た中で最大の奴は20cmくらい。一部が茶色に変色し、発泡スチロールの切れ端のような感じでした。
今出ているのは、さてどのくらいになるでしょうか。お天気次第です。


さてここで、オニフスベという名前について考えてみたい。

Wikipediaは「フスベ(贅)とはこぶ・いぼを意味する」としています。
これに倣ったものかどうかは分かりませんが、ネット上では「ふすべ=瘤」という記述がたくさんあります。
この茸が大きく脹れるので「鬼のたんこぶ」に見立てたネーミングだというのでしょう。

この説の起源はおそらく牧野冨太郎のエッセイにあります。彼はふすべ=瘤を主張し、「オニフスベは鬼の瘤の意であると推考せられ得る。瘤々しくずっしりと太った体の鬼のことだから、すばらしく大きな瘤が膨れ出てもよいのだ。」と言います。
何しろ牧野博士は大家で権威者で偉い人ですから、思いつきの説も絶対化されがちですが、でもこれは間違っていると思います。
博士の「スミレの名は大工道具に由来する」という珍説と同じです。

「ふすべ」は「燻べ」であって、煙でいぶすことです。
例えば、穴に居る狸を追い出すために杉の葉を焚いていぶり出す、それが「ふすべる」です。

牧野博士は「鬼を燻べるということだと解する人があったら、その人の考えは浅薄な想像の説であるように私には感ぜられる。」というのですが、根拠は示されません。


オニフスベはケムリダケとかホコリダケと呼ばれる茸の仲間で、成熟したものを打ったり踏んだりすると大量の黄色い胞子が煙のように吹き出します。ここから、「ふすべているようだ」と言うので名付けられたと考えるのがリーズナブルではないでしょうか。
そして煙茸の類で最大なので「鬼」が付いているのでしょう。単に大きいという意味なのか、あるいは「鬼をもふすべる」ということなのかも知れません。

  焼立る野や草の名のおにふすべ  友也(「糸屑」)
どうも古俳諧はむずかしいですが、近世の俳人が「燻べる」に由来する名前と認識していたことはこれで分かります。



これに関連して、太宰府天満宮で「鬼燻べ」という行事が行われていることにも興味を引かれます。
火を焚いて鬼を追い立てるもので、「おにすべ」と呼ばれていますが、燻の字が使われていますから「おにふすべ」の転と見て良いでしょう。

  鬼すべの火に初髪をいたはりぬ  磯貝碧蹄館



ミニトマトをいただいた

2019年08月21日 | いただきもの歳時記
Nさんからたくさんのミニトマトをいただきました。


ずっしり。


採りたて。


オカメインコはトマトを食べませんが、一応報告だけしときます。

野菜は何でも好きですが、トマトはうれしい。
最近のトマトは美味いですからねえ。


トマトはもちろん夏の季語。例句は山程あるでしょうが、とっさに浮かんでくるような句がありません。浮かんでくるのは、

  赤茄子の腐れてゐたるところより幾程もなき歩みなりけり

という斎藤茂吉の奇怪な一首。なんのこっちゃかわからん、と思いつつ、一読わすれられないインパクトがあります。

いただいたミニトマトは茂吉の歌とはだいぶ遠いポップな感じですけどね。

桃をいただいた

2019年08月19日 | いただきもの歳時記
Kさんから桃をいただきました。
収穫が始まったばかりの(多分)川中島白桃。


今年の初物です。


袋をかけたままの状態でいただきましたので、剥がしてみます。


白桃というのは、皮ではなく果肉が白いと言うことです。
割と固めの品種でしかも収穫直後ですから、果肉はしっかりしています。
とろとろと柔らかい桃とはまた違うおいしさ。私は種まわりのちょっと酸味のあるところが好きです。
うまい。


オカメインコにフルーツを与えることについては諸説あります。
私は見せただけ。彼も特に興味は示しませんでした。


さて、桃の俳句といえば好きな作品がたくさんあります。

  中年や遠くみのれる夜の桃   西東三鬼
  磧にて白桃むけば水過ぎゆく  森 澄雄
  桃食べて体が匂ふ今朝の秋   殿村莵絲子
  白桃を投げれば鬼が口ぬぐふ  仙田洋子
  翁かの桃の遊びをせむと言ふ  中村苑子

桃はちょっとエロいですね。

じゃがいもをいただいた(2)

2019年08月19日 | いただきもの歳時記
またまたじゃがいもをいただきました。


こんどはMさんから。しかもたくさん。


立派なキタアカリです。

キタアカリはホクホク系の薯ですから煮物に使う時は注意が必要です。とにかく煮崩れやすい。
かき回さないこと、煮すぎないことが大事です。「煮直した二日目のカレーが美味い」という迷信を未だに信じている方は特に気をつけて下さい。じゃがいもの消えた、もっちりルーのカレーになってしまいます。

じゃがいも料理のレシピはメイクイン系か男爵系かを区別するべきだ、と私は全国民に訴えたい。

さてしかし、こんなに大量では食べきれないかなあ。おすそわけ先を考えなくては。



  コロッケに藷のかたまり夜学果つ  辻桃子

わるなすび

2019年08月18日 | 千曲川の植物
堤防沿いの草地に見慣れない草の群落が。堤防の上から見た時は、葉の形からオナモミかなあと思いました。


しかし近寄って見ると、


この花は、


明らかにナス科です。


茎や葉の裏には鋭い棘があります。


スマホに入れている植物検索アプリを起動してカメラを向けると、すぐに「ワルナスビ(悪茄子)」と判明しました。

悪茄子!!

ミニトマトのような実を着けるのだそうですが、有毒。
食えず、棘だらけで、繁殖力旺盛。全く始末の悪いナスだ、という命名なのでしょう。
動物名・植物名を通じて、頭に「悪」のつく名前は外にないと思います。

季語になるんでしょうか?
いろいろな歳時記に当たってみましたが記載はありません。

でも花は夏実は秋であることが明らかですから、季語扱いで詠んで構わないと思います。
なんと言っても「悪」の一文字にインパクトがありますから面白い句が出来るのではないでしょうか。

みんなで詠んで、歳時記入りを目指しましょう。

お施餓鬼

2019年08月16日 | いただきもの歳時記
菩提寺の施餓鬼会に行ってきました。

毎年のことながら、暑い。特に今回は台風10号が運んできた熱い空気が澱んでいるようです。

扇子が必需で、私も持っていきましたが、儀式や住職の挨拶のときなどそうパタパタもできません。扇子を閉じるとじわっと汗が出て来ます。
すると隣でジーっというかすかな音。ちらと見ると携帯用のミニ扇風機を使っていました。その手があったか。

お坊さん10人によるイベントは1時間程で終了。

お塔婆をいただいて本堂を出ると別室にテーブルが用意されて折詰とお酒が並んでいます。しかしここで飲食するのはお坊さん達と幹部役員で、われわれは1セットづついただいて帰ります。


こんな感じ。すぐさま冷蔵庫へ。


夜、京都五山の送り火のTV中継を見ながらこの折詰を開けてみると、かすかに違和感のある匂いがします。この時期ですからねえ。
食品ロスは遺憾なことですが、私の座右の銘は「無難に無難に」ですから、廃棄処分としました。

福無量は冷やしといてまたいつか飲むことにします。



  町中にかつと日当る施餓鬼寺   山田みづえ

  送り火の法も消えたり妙も消ゆ  森 澄雄

古本から紙魚が出て来た

2019年08月14日 | いただきもの歳時記
昨年、幸田露伴の「評釈芭蕉七部集」全七冊を購入しました。1983年岩波書店刊、当時の定価11,800円。

安東次男の「芭蕉七部集評釈」をはじめ七部集に関連する本を読むと、しばしば露伴の評釈についての言及があります。それで読んでみたいとずっと思っていました。
ふと思いついてネットで検索したら案外簡単に見つかり、すぐに注文しました。

35年前の本ですからさすがに外箱は灼けていましたが、中の本は上等。読んだ形跡のない綺麗な状態でした。


6,599円で入手しましたが、良い買い物だったと思います。

それから1冊づつ取り出しては読んでいたのですが、昨夜ちょっと調べたいことがあり、書架から箱ごと持ってきて机上で本を引き出すと、


虫が出て来ました。


紙魚(しみ)です。


知識としては知っていましたが、実は私、紙魚を見たのは初めてです。

ルーペで観察してから駆除。全部の本を調べましたが1匹だけでした。ウチへ来てからだけでも1年以上、どうやって生きていたのやら。

この本は表紙に和紙が使われているので、それを囓っていたのでしょうが、幸い目につくような食害の痕はありませんでした。

  光琳忌きらゝかに紙魚走りけり  飴山實
  指先の銀はつぶせし紙魚のもの  品川鈴子
  雛箱の紙魚きらきらと失せにけり 臼田亞浪
  紙魚の銀身をうねらせて走るかな 野村喜舟

紙魚の別名はきらら虫。きららは雲母のことですから、銀色の鱗粉のようなものを纏っているのでしょう。
しかし机上の紙魚はキラキラ感がありません。
たぶん、喰った本が渋かったのでしょう。

初めて紙魚の実物を見られたので、ちょっと得した気分。これは本のオマケに付いて来たものということにして、無理矢理「いただきもの歳時記」に放り込んでみました。

手打ち蕎麦をいただいた

2019年08月14日 | いただきもの歳時記
打ち立ての蕎麦をいただきました。
趣味で打つ方からいただいた方からのおすそわけです。


年季が入っているようで、とても綺麗な出来上がりです。

さっそく、我が家で一番大きい鍋を出して茹でました


期待通りうまかった。

しかし全部は食べきれませんでした。


翌日、茄子汁のぶっかけにして昼食。見映えはともかく、うまい。


蕎麦自体は季語ではありません。
新蕎麦、夜鷹蕎麦、年越し蕎麦などは季語になります。
夜鷹蕎麦は夜鳴き蕎麦に同じ。

  夜蕎麦売いつの間にやら子をでかし  柳多留


ホタテ貝をいただいた

2019年08月11日 | いただきもの歳時記
青森産の帆立貝をいただきました。
甥が青森の女性と結婚し、そのご縁で時々いただきもののおすそわけをいただきます。


なんかイキモノ感満載。


殻に、別の生命体が……。

やっぱバター醤油で焼いて食うのが一番かなあ。

貝類は春の季語になっているものが多いですが、帆立貝と鮑は夏、牡蠣は冬となります。

私一個の印象に過ぎませんが、帆立貝の作例は少なく佳句に乏しいように思います。私もこれまで俳句に詠んだことがありません。

何故なのか分かりません。ひょっとしたら安岡力也と武田久美子が邪魔しているのかも。