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天皇陛下の民事責任について

2017-07-02 17:31:01 | 日本国憲法
憲法の最初の方を勉強していると、天皇には刑事裁判権/民事裁判権は無いが民事責任までは否定されないと本に書いてあったりします。

これは簡単に言うと、民事責任はあるが民事裁判権は及ばないというのは、

「民事責任がない」

となると、天皇陛下には一切の支払義務は生じない、という事になってしまうからです。

例えば天皇陛下が、宝飾品や高級食器を購入されたとしても、販売業者の側は、「民事責任のない」相手に対しては、一切の代金請求をできません。

要するに天皇陛下との間での「売買契約」が成立しなくなります。

現実問題として、それでは困るわけです。

さて、天皇陛下の「民事責任」について、憲法学会の通説では、「天皇は民事責任を負う」とされているものの、最高裁判所による判例は

「天皇には民事裁判権は及ばない」

となっています。

昭和天皇がご病気のとき、多くの自治体で病気平癒を願う記帳所が設置されたのがきっかけで、千葉県でも知事の判断によって記帳所が設置されたのですが

「このようなことに税金を使うのはいけない」

という苦情が裁判所に持ち込まれたかと思うと、いきなり住民が

「天皇は千葉県に出費をさせて、その公金を不当に得ているわけであるから、記帳所の設置に使われた公金を返還するべきであり、千葉県に代わって天皇から不当利得を取り戻す」

という理屈で、裁判を起こしたのです。

以下は、最高裁判所による平成元年11月20日の判決です。

「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である」

この判決には多くの批判がありましたが、とりあえず、こう考えてみてください。

仮に天皇陛下が民事裁判で敗訴するようなことがあれば、裁判官が陛下に賠償金の支払いを命じることになります。

一裁判官が天皇に支払いを命じるということは、憲法第一条の象徴規定の趣旨を否定する事になります。

具体的に言うと、天皇陛下の民事裁判権を認め、結果的に陛下が膨大金額の賠償をしなくていけなくなった場合

債権者は皇室の御物、例えば皇室が収蔵する美術品や、宮中三殿、さらには三種の神器でさえも、皇室財産である以上、これを差し押さえることが出来てしまいます。

特に、三種の神器は天皇が天皇たるあかしであり、これを裁判所が差し押さえる、という状況は、日本国の象徴たる天皇の存在理由を、裁判所が否定する事となってしまいます。

結局、象徴の否定は「日本国憲法」それ自体を否定する事にもなるわけです。

である以上、はじめから「天皇陛下の民事裁判権」を認めるべきではありません。

天皇には刑事裁判権?民事裁判権は無いが民事責任までは否定されない

というのは、そういう意味です。