四世鶴屋南北 作
奈河彰輔 補綴・演出
通し狂言 絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)
国立で一度観ています。
その時は、極悪に徹した仁左さま、の印象は薄く
中途半端な悪で消化不良に陥ったのでした。
一言で言えば、面白くなかった。
今回、「一世一代にて相勤め申し候」と
仁左衛門はこれっきりで演じ納め、とのことなので、見逃せませんでした。
さて、今回、打って変わって面白かった!
仁左衛門自らの監修、のせいか
太平次の、徹頭徹尾のワルぶりが生き生きとしていて
そこが物語にメリハリを効かせていた。
複雑な筋立てで、登場人物も多く互いに血縁関係が込み入っているし、
しかもそのほとんどが次々と殺されていく。
殺めることになんのためらいもない太平治は、極悪非道そのもの、
しかしそこに、退廃的な時代の空気がイメージされていて、
どこか憎めない、愛嬌さえある人物像に造形されていく…
そういう油地獄の与兵衛にも通じたところが、仁左さまだからこそにじみ出てくるのですね。
通称が、立場(たてば)の太平次、というのですから、
悪役の中でも取り分け悪い実悪(じつあく)の大学之助に対して
世話敵、とかいうようですが、太平治のほうをメインにする構成に仕立て直しているのでしょうか。
仁左衛門の大学之助は声のトーンも変え、お役への工夫の跡がうかがえるのですが、
太平次ほどの悪の魅力に欠けます。
国立のときは、大学之助のほうに力点が置かれていたように思えます。
だから面白みに欠けていたのでしょう。
ところで、この狂言は、大阪天王寺の合邦辻閻魔堂で起こった実際の仇討ちを
南北がいち早くお芝居に仕立てたそうで、
あの摂州合邦辻と同じ場所、ということらしい。
本来は、発端から大詰まで7幕のところ、4幕仕立てになっているので、
太平治への敵討ちが大学之助の成敗になっていたりするのですが、
働きに失敗したことへの報酬ということで、うまく辻褄が合わせてあります。
こういうのは、補綴のお仕事なのでしょうか。
殺しにも、ちょっとした意味合い、理由を忍ばせているのも憎い。
お松を殺す太平治、一緒になる約束を違えたら、悪事をばらす、とお松にいわせていますね。
ところで、ゆすり場のうんざりお松は、悪婆物の原型といわれているらしく、そののちの黙阿弥の切られお富や弁天小僧、にもつながっていく、南北の先進性がうかがわれ、傑作とよばれるゆえんです。
【2018/4/16 歌舞伎座観劇】配役↓
奈河彰輔 補綴・演出
通し狂言 絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)
国立で一度観ています。
その時は、極悪に徹した仁左さま、の印象は薄く
中途半端な悪で消化不良に陥ったのでした。
一言で言えば、面白くなかった。
今回、「一世一代にて相勤め申し候」と
仁左衛門はこれっきりで演じ納め、とのことなので、見逃せませんでした。
さて、今回、打って変わって面白かった!
仁左衛門自らの監修、のせいか
太平次の、徹頭徹尾のワルぶりが生き生きとしていて
そこが物語にメリハリを効かせていた。
複雑な筋立てで、登場人物も多く互いに血縁関係が込み入っているし、
しかもそのほとんどが次々と殺されていく。
殺めることになんのためらいもない太平治は、極悪非道そのもの、
しかしそこに、退廃的な時代の空気がイメージされていて、
どこか憎めない、愛嬌さえある人物像に造形されていく…
そういう油地獄の与兵衛にも通じたところが、仁左さまだからこそにじみ出てくるのですね。
通称が、立場(たてば)の太平次、というのですから、
悪役の中でも取り分け悪い実悪(じつあく)の大学之助に対して
世話敵、とかいうようですが、太平治のほうをメインにする構成に仕立て直しているのでしょうか。
仁左衛門の大学之助は声のトーンも変え、お役への工夫の跡がうかがえるのですが、
太平次ほどの悪の魅力に欠けます。
国立のときは、大学之助のほうに力点が置かれていたように思えます。
だから面白みに欠けていたのでしょう。
ところで、この狂言は、大阪天王寺の合邦辻閻魔堂で起こった実際の仇討ちを
南北がいち早くお芝居に仕立てたそうで、
あの摂州合邦辻と同じ場所、ということらしい。
本来は、発端から大詰まで7幕のところ、4幕仕立てになっているので、
太平治への敵討ちが大学之助の成敗になっていたりするのですが、
働きに失敗したことへの報酬ということで、うまく辻褄が合わせてあります。
こういうのは、補綴のお仕事なのでしょうか。
殺しにも、ちょっとした意味合い、理由を忍ばせているのも憎い。
お松を殺す太平治、一緒になる約束を違えたら、悪事をばらす、とお松にいわせていますね。
ところで、ゆすり場のうんざりお松は、悪婆物の原型といわれているらしく、そののちの黙阿弥の切られお富や弁天小僧、にもつながっていく、南北の先進性がうかがわれ、傑作とよばれるゆえんです。
【2018/4/16 歌舞伎座観劇】配役↓
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