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「東海道四谷怪談」
通し狂言では、昨年のコクーン歌舞伎が面白かったですが、
吉右衛門の伊右衛門、
本当に冷酷なヤツ、に徹していました。
観客に少しも媚びることなく、良心の呵責なんてクソ食らえ、
の無頼漢ぶり、ーーーいいですねー。
たしかに伊右衛門って、こういうのだった!
伊右衛門の見るお岩さんの怨霊=幻覚に怯えるふうもなく、
人を何人斬っても、まだ士官できると思っている、
自分の欲を満たすことしか頭にない、極悪非道の男なんですが…、
よく考えると、伊右衛門は直接手を下していないのよね、お岩さんには!
この二人は愛憎が入り交じった、腐れ縁のような夫婦、
結局、赤穂の浪人暮らしの貧困が、二人を破滅させたともいえるわけで、
同情できなくもない境遇なわけです。
見初められた縁談も当初は一応断っていることですし…。
(橋之助のような二枚目ならおぼこさんに惚れられても納得ですが、
どうもこの伊右衛門にはあり得ない!なんて、つい思ってしまいますが…)
福助お岩さんがまたいいんですねー、適当にコメディーで。
でも、いつになくリアルです、ホントにコワーくなりますよ。
顔がね、細面でしょ、
それが髪がぞろりとなると、そりゃーもう……
宅悦さんじゃないけど、きゃー!!!
このときばかりは、3階でよかった!?
いえいえ、怖いものもっとよくみたかった!
そのうえ、毒で顔が腫れ上がるということは…、声も変わるんだー!!
と観ている人に気づかせるんです。
そう、腫れ物ができたときの声変わりね。
ところで、今回お岩さんの死に方が曖昧でしたね、どうしてかな?
そこまでリアルにしなくていい、ということかな?
それはそうと、宅悦さんってもっとワルじゃなかったかな!?
歌六さんの宅悦は、とってもいい人、お岩さんがお気の毒でしかたがない、
観客と同じ心情ね。
庵室の場で、私初めて気がついたのですが、
ここでの百万遍の数珠回し、
伊右衛門の母(この息子にこの母あり、ですよね)が息子を守ろうとしていたんですね。
でも、お岩さんはそれを許さなかった!
母をも殺めてしまうのねー。
小仏小平の主従関係、与茂七、直助、お袖の愛憎劇のカット、
たしかに、そのほうが冷酷な伊右衛門とコワーいお岩さん、が浮き彫りになる。
大詰の仇討の場の、結末までみせない、
「本日はこれにてお開き」の幕の下ろし方
歌舞伎の、省略の妙、余白の美、とでもいいましょうか、
こういうところもニクいですねー。
吉右衛門歌舞伎の醍醐味、でした。
2008/05/06 観劇 新橋演舞場
通し狂言では、昨年のコクーン歌舞伎が面白かったですが、
吉右衛門の伊右衛門、
本当に冷酷なヤツ、に徹していました。
観客に少しも媚びることなく、良心の呵責なんてクソ食らえ、
の無頼漢ぶり、ーーーいいですねー。
たしかに伊右衛門って、こういうのだった!
伊右衛門の見るお岩さんの怨霊=幻覚に怯えるふうもなく、
人を何人斬っても、まだ士官できると思っている、
自分の欲を満たすことしか頭にない、極悪非道の男なんですが…、
よく考えると、伊右衛門は直接手を下していないのよね、お岩さんには!
この二人は愛憎が入り交じった、腐れ縁のような夫婦、
結局、赤穂の浪人暮らしの貧困が、二人を破滅させたともいえるわけで、
同情できなくもない境遇なわけです。
見初められた縁談も当初は一応断っていることですし…。
(橋之助のような二枚目ならおぼこさんに惚れられても納得ですが、
どうもこの伊右衛門にはあり得ない!なんて、つい思ってしまいますが…)
福助お岩さんがまたいいんですねー、適当にコメディーで。
でも、いつになくリアルです、ホントにコワーくなりますよ。
顔がね、細面でしょ、
それが髪がぞろりとなると、そりゃーもう……
宅悦さんじゃないけど、きゃー!!!
このときばかりは、3階でよかった!?
いえいえ、怖いものもっとよくみたかった!
そのうえ、毒で顔が腫れ上がるということは…、声も変わるんだー!!
と観ている人に気づかせるんです。
そう、腫れ物ができたときの声変わりね。
ところで、今回お岩さんの死に方が曖昧でしたね、どうしてかな?
そこまでリアルにしなくていい、ということかな?
それはそうと、宅悦さんってもっとワルじゃなかったかな!?
歌六さんの宅悦は、とってもいい人、お岩さんがお気の毒でしかたがない、
観客と同じ心情ね。
庵室の場で、私初めて気がついたのですが、
ここでの百万遍の数珠回し、
伊右衛門の母(この息子にこの母あり、ですよね)が息子を守ろうとしていたんですね。
でも、お岩さんはそれを許さなかった!
母をも殺めてしまうのねー。
小仏小平の主従関係、与茂七、直助、お袖の愛憎劇のカット、
たしかに、そのほうが冷酷な伊右衛門とコワーいお岩さん、が浮き彫りになる。
大詰の仇討の場の、結末までみせない、
「本日はこれにてお開き」の幕の下ろし方
歌舞伎の、省略の妙、余白の美、とでもいいましょうか、
こういうところもニクいですねー。
吉右衛門歌舞伎の醍醐味、でした。
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福助さんは福助さんのお岩さんになりましたね、玉三郎さんの怖いけど美しさのお岩さんでもなく、勘三郎さんの情が勝るお岩さんでもなく、冷たく残酷なお岩さんになりました。
吉右衛門さんも冷たいからほら、あのさっぱり感の冷たさゆえに気味悪さ倍増でした。
あの最後の口上、今月はうまい演出でしたね、これは芝居だからねって、お客さんを恐怖の底に落としたという確信の元(確かに落とされましたよ、ど~~~んと)の口上で、それではっと我にかえりましたもんね。
芝居はこういう余白がたまりませんね
歌舞伎のリアルにするところと、見立てを大事にするところ、双方あるから面白いですね。
福助さん、
減量で臨んだのですね、ホラーもね。なるほど、です。
最後の口上、
“恐怖の底に落としたという確信のもと”
そうなんですねー。これですよね。
それに引きかえ、
御所五郎蔵、の幕切れ、あれはストンと落ちませんよね。
今回の演舞場は、吉右衛門さんの演出でしょうかね?どうなのかな?
小仏小平が塩冶ゆかりの主家のために、民谷家に伝わる秘伝の薬を盗んだこととか、
直助、お袖の因果の結末とか、
複雑な人間模様、廻り廻った因縁話…、
演舞場では、
それはさらりと横に置いて、
おあとがよろしい、ようで、と
これ落語の落ち、に近い?
吉右衛門の型、なんでしょうか?
いろいろあって、面白いですね。