紫苑の部屋      

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八月納涼歌舞伎二部、三部

2007-08-17 15:40:17 | 観劇
二部の山本周五郎「ゆうれい貸屋」と
やっぱり渡辺えり子演出「舌切り雀」が面白い。

お客もよくわかっている、
「舌切り雀」、立見席も三列、超満員、
勘九郎最後を飾ってえり子さんと組んだ「桃太郎」が評判をとりましたからね。
私はなんといっても、三部も含め、
平成中村座のレギラーたちと相棒の三津五郎、
今回初めて?孝太郎らが加わって、
一人の俳優が演目ごとにいろいろ姿を変えて、
達者な役どころを演じ分けて見せてくれるのが、
ホントに楽しかった。

「舌切り雀」ー鳥の王国、夏の宵
何をやらせても勘三郎流に流れていく本筋に、
三津五郎が加わるとキュッと締まる、
はちゃめちゃに見える白鳥の踊りを
(でもれっきとした日舞の振りに則っていた、と思う…)、
勘三郎&三津五郎の踊りで締めてくれれば、
かえってふたりの踊りのすばらしさが際立つ。
(当たり前か、そういう演出だものね)

ひびのこづえ衣装もなかなかのものでした。
冒頭のきらびやかな鳥祭り?のひな壇、
この華やかさが、えり子さん、なにか意表をつくことをやらかすぞー、という期待感をもたせます。
孝太郎鳥の国の孔雀王、王妃鶴姫が芝のぶさん(美貌ですね)
舌を切られたすみれ雀(福助姐さんの滅多に見られない黒衣、素敵ね)
代わりに、心の内に思ったことを読みとる元人間の小人の賢者(三津五郎)
意地悪ばあさん(勘三郎)は憎めないのよね、賢者の後釜になって一軒落着。
そうそう蚊ヨの扇雀、なんでもこなせる芸達者さんが虚しいアホな役するから面白い、
盛りだくさんでしょ。

さて、その前の演目、「ゆうれい貸屋」です。これはいい。
周五郎文学ですし、
落語になっていたんじゃないかしら、って思うような、世話物の真骨頂、江戸市井に生きる人々の活写がいいなー。
怠け者職人(三津五郎)と世話焼きの大家さん(弥十郎)の、パンパンパーンと飛び交うセリフ、そのやりとりが面白い、小気味いい。
情のある実直な女房に上方の孝太郎が好演してましたよ。
幽霊商売を思いつく、頭の切れる辰巳芸者のゆうれい、
福助姐さんのこういうお役、大好きよ~!!
幽霊だから現代語、というのも工夫なんでしょうけど、
4次元を彷徨うわけではないのよねー、商売をした幽霊達(勘三郎、七之助)、江戸っ子よね、
どうせなら、気風のいい辰巳芸者のべらんべえ調を聞きたかったわね。

三部「裏表先代萩」は
打って変わった伝統歌舞伎、
といっても、伽羅先代萩(なんでキャラか→酔狂な足利頼兼が伽羅の下駄を履いたからだそうよ)の裏話を挿入させた黙阿弥作。
二部から続けて見たせいか(エキサイトしましたからね)、
表の先代萩は退屈、
勘三郎はやっぱり世話物がいいのね、
裏話の小助がイキイキしていい。
政岡は、猿之助、玉三郎、籐十郎、どれもよかったけど、
私は最近の籐十郎のがよかった、まだそのイメージが残っている…。
勘三郎は政岡、小助、仁木弾正、三役の面白さを見るわけですからね、政岡だけピックアップして比べる筋合いのものではありませんが…。
問注所の裁きは裏話のほうの小助・お竹、
大詰の控所での刃傷、仁木弾正を仕留めて、平凡に終わる、
黙阿弥にしては、少し不燃焼気味の、演目だったかなー。

先代萩の比定されている時代、
足利将軍(ダメ領主)、山名宗全(悪玉系列)、細川勝元(善玉系列)、
もちろん伊達騒動を表立って舞台には乗せられない、からですが、
宗全VS勝元、この時代(明治になるのか)の評価がわかるわけですね、
それにしても守護大名の、今日の敵は明日の味方、入り乱れた室町末期の混乱期、歴史物の舞台として面白い、という江戸市民の変わらぬ関心事でもあったのでしょうね。
そもそも伊達騒動、
お江戸の平和が続いたそのなかで、
何がしかの亀裂でお家騒動がたびたび起こって、体制にも不穏な空気をもたらしたのでしょう。
それに敏感に感じ取った江戸市民がいた、ということですね。

今月注目した脇役の俳優さん、
市川右之助さん、
「ゆうれい」の隣の魚屋の気のいい女房、
道益弟、(悪玉に加担しているのにそう見えなかったのは、どういうことかしら?毒薬調合のこと知っているのよね?)
全く違った役だけど、よかったなー。
これまでも見ている俳優さんなんですけど…、
道益より町医者っぽく、そんなお役またやってほしいなー。

中村芝のぶさん、
鳥国王妃鶴姫
その美貌はネット上では騒がれていましたが、
成駒屋(芝翫に惚れ込んで入門したらしい、平成12年に名題昇進)だから、
これまでも平成中村座に出ていたのかしら?
私が歌舞伎座で見たのは初めてです。
確かにひときわ綺麗でした。当年40歳、楽しみだわー。

各演目と配役は→観劇一覧参照

猛暑(2007/8/14歌舞伎座観劇)

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4 コメント

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saさん、こんばんは (sion)
2007-08-20 00:27:26
芝のぶさんのオフェーリアですか、綺麗でしょうね。
声も綺麗なのでしょうか。
今回、ほとんどしゃべってませんよね。
確かに美しい姫君でした。
なぜ猿之助一座(役もらえる)に行かなかったのか、って問いに、
一目会って、芝翫さんしかいない、って直感した、
との答え、なんかいいです。

歌舞伎座でもお役、もらえていたのね、
筋書き買わないから、わかんなかったんだわ。
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蚊ヨ ですか… (Sa)
2007-08-19 21:30:25
子育てが一段落して毎月歌舞伎座へ通う時間が取れるようになったその最初(7年くらい前かしら?)、芝のぶさんを舞台で拝見して、そして筋書きのお写真を拝見して、「近年女性も歌舞伎の舞台に立つようになったのか」と、マジに思ってしまいました。

万斎さんのハムレットでもオフィーリア役で舞台に立ちましたよね、ハイビジョンで放映したロンドン公演を友人に録画して貰い、見ました。その録画の中にパーティでの私服(スーツ姿)の芝のぶさんも拝見したのですが、ああ、彼は女形になるべく体型であり、お声なのだなあとふと感じたのを覚えています。

さて、納涼歌舞伎、私は落に近い日をとっているんです。楽しみです!
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雀の配役、中盤からHPに出てましたよ (sion)
2007-08-18 19:59:10
扇雀さんは、お母さま似で、
以前、俳優祭で、ママのコスプレ着ましたね。
お兄様も十二夜で面白いキャラこなしてますしね。

ところで、歌舞伎座で10月の演目と配役、発表されていたの、気づきました?
待ちに待った仁&玉コンビよ。
玉&愛、新コンビも。
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蚊ヨって…… (かほる)
2007-08-18 00:48:17
sion様、こんにちは!
私、海老様の出る月以外、筋書きを買わないので分からなかったのですが、かよ=蚊ヨとは!昨夜、これ読んで思わず笑ってしまいました~。
勘三郎はギャグかましながら時々、素になる(これも演出?)のですが、扇雀は終始真顔ですよね。しかも、結構すごいコスプレあり。ちょっと菊五郎的で私も好き♪

「演劇界」の件のお書き込み、気付きませんでした(BBS、トップに上がらない構造でスミマセン)。教えていただき、ありがとうございました!
早速、見に行ってきます。
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