読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

香納諒一著「心に雹(ひょう)の降りしきる」

2012-03-07 | 香納 諒一
主人公の県警捜査一課都築刑事は、母子家庭で育ち母親とは断絶、妻には逃げられ愛人には裏切られ離婚後は独り暮らしで人の愛し方が分からない奴だ。
そしてとに角やる気がない、金のためなら悪い事もする。7年前に娘が行方不明になった社長からは、偽の情報で一芝居打ち報奨金をむしりとった。
その少女の遺留品が発見された。これはまた金づるになるかと、まったく期待せずに捜査を再開した都筑だが、数日後、情報をもたらした探偵・梅崎の死体が発見される。
梅崎はいったい何を掴んでいたのか? 都筑は足取りを追うのだが・・・。
もともと、自分の利益のためにしか行動しなかったのが、段々と感傷や恐怖などの感情に流されない、精神的肉体的に強靭ないい奴へと変身してゆく過程が面白った。
犯行の犯人が二転三転してのこった展開や県警内の人間関係軋轢、DV男から逃げる母娘などが絡み、
危なかしい主人公を応援しつつ行方不明の少女の謎解きに惹きつけられ一気に読めました。
『たとえほんの僅かでも希望があったら、諦めないってことよ。時には希望を持ち続けているほうが辛くても、私なら絶対諦めない。』(P371)

2011年9月双葉社刊
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香納諒一著「熱愛」

2011-06-02 | 香納 諒一
元刑事のくずれの探偵・鬼束啓一郎は、当座の金欲しさにヤクザの次男坊・仁科英雄に依頼され、兄を暗殺したと言われている凄腕の謎の殺し屋“ミスター”を探す依頼を引き受けることになる。
障害を持った幼い息子と妻を同時期に喪った過去に苦しむ鬼束は、
英雄・大輝兄弟とミスターの正体を探るうち、裏社会の抗争に巻き込まれていく。
心に闇を抱えた主人公の鬼束が、鮮やかな殺しの腕を持つ殺し屋に魅せられ、
殺し屋の謎に迫っていくその中で何故刑事を辞めたのかや
妻子を失った訳も徐々に明らかになり切ない胸の内が判るに付け切ない気持がよく表現されている。
謎を追い求めるうち殺し屋の正体も二転三転して・・・驚きの正体!
やがて絶体絶命の窮地に立った鬼束と英雄は…。
謎の殺し屋を追う元刑事の、「深い闇に沈んだその心」に救いは?
男たちの魂の絶望と再生を描く渾身のハードボイルド作品。
夢中になり一気読みしました。

2010年9月 PHP研究所 刊
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香納諒一著「噛む犬 K・S・P」

2011-03-24 | 香納 諒一
警視庁歌舞伎町特別分署KSPシリーズ第3弾!
新宿高層ビル街の一角の植え込みから白骨体が見つかった。自殺か他殺か?
沖幹次郎、村井貴里子らK・S・P特捜部が駆けつけたが、身元はチーフ・村井貴理子の元教育係りだったこともある今でも敬意を寄せる先輩だった警視庁捜査二課の溝端悠衣警部補だった。死亡前の動向を探る面々。すると未解決の轢き逃げ事件を単独捜査していた形跡が浮上。
被害者は暴力団組員で、溝端は保険金の受取人である婚約者とも接触していた。
彼女が秘密裏に突き止めようとしていたものとは何か。
やがて警察組織と政財界の闇に繋がる事態になりやがておぞましき全貌が明らかになる。
『真実とは何だろう。・・・拠り所にすべき正義が見つからない。あるのは、組織の事情ばかりだ。』(P183)と苦悩しつつ警察上部組織との軋轢が多くを占めるが、組織に飲み込まれず真実を追求する姿には感銘をうける。
警察組織での差別、いつもながら男女の性差別他キャリアかノンキャリアかの旧態依然な警察内部の抗争、権力内部の欲望と個々の人間関係の絡み合いの中でドラマをサスペンス風に展開していくこの物語はまた続編を期待したい。
『デカを犬と呼ぶのは、獲物に喰らいついたら、けっして放さないからだ・・・噛まない犬は、デカじゃない』(P362)

2011年1月徳間書店刊
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香納諒一 著「 夜よ泣かないで 」

2010-05-04 | 香納 諒一
唖者でホームヘルパーの麻生 純は、新宿の暴力団大石組の先代の妻絹代のを
介護中偶然大物政治家の狙撃現場に出くわし、返り討ちにあった襲撃者の最期を看取る。
その時偶然看取った男から授かった未来予知の「不可思議な力」。
やがてその能力によって翻弄されることに。
彼女は巨大な陰謀に巻き込まれていく。
ハードボイルド小説。やがて看取った男の異母弟の出現でその男を愛すのだが、
愛にのめり込む過程に切得力が感じらえないため最後まで中途半端、
大変な事件の後の最後章の終り方も社会的影響についての説明がない為
不完全燃焼気味・・・。
2006 年 双葉社  刊
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香納 諒一 著「虚国 」

2010-04-10 | 香納 諒一
廃墟の撮影に訪れた元探偵のカメラマン辰巳翔一は、廃墟のホテルで絞殺された女性の死体を発見する。
それは、「ちっぽけな田舎町の、ちっぽけな事件」のはずだった。
この国の様々な場所で、長い間ずっと繰り返されてきた公共事業という名の箱物行政。
この忘れ去られた海辺の地方都市町にもちあがった空港建設計画。公共事業は悪なのか。
賛成派反対派で街が二分化される中、殺されたのが反対派女性であり、辰巳が死体を発見したことから、
最愛の女性を殺された地元紙記者安昼らに依頼されて事件の犯人捜しに巻き込まれていく。
登場人物達は、狭い田舎町のしがらみの人間関係の中で生きる知り合い同士、
真相を究明するうちに、元妻、愛人、家族、親子などの関係が炙り出されて来て疲弊する共同体の中で、軽んじられる命と欲得に溺れる人間の性を描き出す。
雑誌連載時の「蒼ざめた眠り」を改題改稿。
題名の虚国の意味とこのミステリーのテーマが明らかになる。
決定的瞬間を待つカメラマンの心情は、同じ写すことが趣味の私にもよく理解できた。
第3弾、シリーズ化の期待大。
2010年3月小学館刊

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香納諒一著『ステップ』

2009-06-17 | 香納 諒一
時空ものタイム・スリップハードボイルドミステリー題名は『スキップ』だが一日に八回死んで生き返る『ターン』のほうがスッキリするストーリー。
主人公の斉木章は、今はバーを経営するが彼の隠された裏の顔は盗みのプロ。
一年前の事件で相棒と愛する彼女を失った。そんな斎木章のもとに、孤児院で一緒だった弟のような存在の悟が転がり込んできた。
女をめぐるトラブルで清瀧会の幹部を刺したという。事態の収拾をはかった斉木だが、捕えられ命を落とす。だが、気がつくと昨日に戻っていた。
悟を救うため、そして、“今日”を取り戻すため、斉木は前回の失敗を繰り返さないように生き返るたびに、前の轍を踏まぬように情報収集に励みますが、なぜかまた死んでしまいます。一つの事件を、複数の視点ではなく、時間が巻き戻って一人の男の側の視点で、その都度異なる意味合いを加えてゆき、ジグソーパズルを埋めるように徐々に真相に迫ってゆくという、その都度、殴られたり殺されりと、その道はあたかも修羅の道であるように思えるが、友人や恋人が犠牲になる事実を回避するためになら、斉木は何度でもその前のポイントに戻って選択すべき道を変更する。まるでロールプレーゲームを何度もリセットして挑んでいるようなもの、死んだり殺されたりして、元の木阿弥になってしまうストーリーが、徐々に生き返るペースの時間が短くなる、死ぬ前の過去とダブル記憶、そして、それらを繋ぎ合わせていくうちに少しづつ解明させる謎が最後に明らかになる。
残念だが登場人物とその背景に魅力がないし、心理描写も深みに欠けるし共感が出来ない。何度も死ぬリアル感のない物語の構想は現実的でない。
2008年03月双葉社刊
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香納 諒一 著 「血の冠」

2009-04-24 | 香納 諒一
主人公は内勤警官の青森弘前中央署会計課係長の小松一郎。
元警察官の越沼が殺された。頭蓋骨が切断され、脳味噌に王冠のように釘を植えつけられて。それはかつて「キング」と呼ばれる殺人者が繰り返した、26年前の忌まわしい迷宮入り事件の手口と同じだった。
小松は、幼馴染みの警視庁警視正・風間次郎によって捜査の協力を指示され最前線に立たされる。少年時代二人はキングの被害者だったのだ。
手口から地元有力者で外科医を密かに容疑者として風間たちは追跡するが連続猟奇殺人はさらに続いて又も元警察OBが殺される。
そして解決の鍵となる捜査資料が署内で紛失した。
署内に事件と関わりのある者がいるのか? 北の街を舞台に心の疵と正義の裏に澱む汚濁を描く警察小説。
サイコサスペンスの趣きでしかもどろどろした土着的・日本的な物語。
登場人物たちの会話が弘前訛りであるが特長でこれは読んでいてもわかりにくい著者が何故訛りに拘るのか理解しがたい。
心理描写も細かく過去の迷宮入り事件を含め面白いミステリー展開で最後まで飽きさせないが後半犯人が明らかになるのだが謎の解明が中途半端で悔いが残る終り方。

2008年7月 祥伝社刊
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香納諒一著「孤独なき地 K・S・P」

2009-04-11 | 香納 諒一
K・S・P(Kabukicho Special Precinct歌舞伎町特別分署)の野性刑事・沖幹次郎を主人公とした警察小説。
事件の真相を求めて疾駆するハードボイルドサスペンス。
新署長赴任の朝、署の正面玄関前で衝撃事件が起きた。
刑事と連行中の容疑者が雑居ビルから狙撃されたのだ。
新宿歌舞伎町を舞台に、警察・暴力団・中国マフィア・汚職企業が絡む
連続殺人事件の真相を描く。
無骨なキャラだが楽しみな沖警部他登場人物のキャラも細かな心理状態も
描かれて・・・最後の事件の結末の付け方に異議があるが続編へのフ布石か?
続編が楽しみです。(続編は200年8月刊の「毒のある街 K・S・P2」)
2007年 徳間書店
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香納 諒一著 「毒のある街 K・S・P2」

2009-04-08 | 香納 諒一
K・S・Pシリーズ「孤独なき地」に続く第2弾続編。
ただ1作目を読んでなくても充分楽しめます。
K・S・Pとは「警視庁歌舞伎町特別分署」の略。
沖幹次郎は張り込みの帰り女性の踏み切り飛び込み自殺の現場を目の当たりし
女性を介抱するが「妹をやつらから助けてという」謎の言葉を聞き気になるまま救急車に女性を託す。
翌朝署長から突然の人事でK・S・P特捜部のチーフをはずされ新チーフのキャリア警部の村井貴里子の下に着く。
怒りを抑えきれない沖だったが、その矢先、新宿進出を目論む関西系暴力団による射殺事件が起きる。
さらには新宿再開発を巡ってチャイニーズマフィア「五虎界」の朱除志らが暗躍を始めた様子に気付く・・・。
警察の縦割り組織と序列に苦しめられつつも、愛する家族をも危険にさらし
ながらもなお、敢然と凶悪犯罪組織に立ち向かう刑事たちの活躍を描いた警察小説。
登場人物や事件の背景、それに伴う心理描写まで、細やかに丁寧に描写されて
おり人間の弱さや欠点を上手についた沖の取調べの心理作戦等面白い。
前作よりスケールアップされた緻密な心理描写に一気に読めました。
最後はチャイニーズマフィアとの決着はつかず持ち越しに続編が楽しみです。
2008年09月 徳間書店刊
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香納諒一著『記念日―anniversary』

2008-07-10 | 香納 諒一
目を覚ましたら、横浜中華街の安ホテルの1室。主人公の男は記憶を亡くしていた。そばにはアンと名乗る女がいて、男が車から投げ出されたところを偶然見かけ助けたのだという。身元を確認するものは何もない俺はいったい誰なのか。
なぜ、そんな目に遭ったのか。記憶を取り戻すべく男は香港出身だというアンを頼りに投げ出された現場を見るためにそこを訪れると、複数の組織が追いかけてきて拉致される・・・。
記憶を失った男を主人公にした 映画『ボーン・スプレマシー』のCIAの暗殺者ジェイソン・ボーンの“自分探しの旅”によく似ているなと思ったがもちろん場所は日本であるし、どうやら著者は中国人と日本人の混血の双子という設定で話を展開している点が面白い。
記憶喪失の主人公に、マフィア、CIA、公安、いろいろな組織がからんで話が展開していく。
自分は誰なのか。何故、記憶を失ったのか。次々得体のしれない男たちが、主人公を襲う。どうやら主人公は重大な国家機密を隠しもっていたらしい。
誰がほんとの事をいっていて、誰が嘘をいっているのか。誰を信じればいいのか。記憶は戻るのか?錯綜する真実が明らかになったとき男はある決意をする。
最後に表題となった記念日の意味が理解できる。
記憶をなくしても言葉や言語、習慣好みは無くならないのか・・・。

2008年5月 光文社刊 2100円
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香納 諒一著 「贄の夜会」

2008-05-22 | 香納 諒一
2007年「このミステリーは凄い」7位作品。
二段組で581ページのかなりのボリュームです。登場人物たちの生きてきた背景がそれぞれに異様でかつ濃密。
少年猟奇事件の犯人だった弁護士、11歳で米兵を殺害し台湾へ逃れたプロの殺し屋、娘を事故で亡くした刑事、この三人の視点で物語は展開される。 
ある夜、「犯罪被害者家族の集い」に参加した女性二人が帰路、何者かに殺害されます。 一人はハープ演奏者・木島喜久子で、両手首を切り落とされて、もう一方の被害者・目取真(めどるま)南美は頭を石段に叩きつけられて殺されました。
警視庁捜査一課強行班の大河内茂雄は捜査する中で南美の夫・渉の怪しい行動に注目します。もう一人は、「集い」にパネラーとして参加した弁護士・中條謙一がじつは19年前におきた中学二年生の時に同級生の首を切り校門にさらした他、数件の殺人事件の犯人であった事実を突き止めます。少年法改正以前の事件でもあり、二十歳前には医療少年院を出た中条は大検を受験、その後早稲田大学を出ると司法試験に合格、司法修習と下積みを経て三十歳には独立し、池袋のサンシャインに事務所開設していた。
妻の南美殺しの犯人を追う夫の目取真渉は、勤め人は隠れ蓑、実は殺しを仕事とするスナイパー。幼い南美に悪戯しようとした米兵を殺した少年仲里弘樹は、逃れた台湾で母を蹂躙した老人を殺し、流氓の組織に入り劉小東となり、やがて結婚して目取真渉に・・・二人の人生に、沖縄の米軍兵士幼女強姦事件や神戸少年A事件、パリ人肉事件、山口組の抗争、警察組織の腐敗、佐川急便事件、チェーンソーが元の白蝋病、絵画を利用した政界の裏金づくりといった過去の日本の恥部を取り入れ、内容共にてんこ盛りの1冊。
他にも警察の中に存在するキャリアとノンキャリの壁や新聞記者達との駆け引きに、捜査の妨げとなる公安の秘密主義といった警察小説としての一面も。
主要人物が死んで、緊張のうちに真犯人に迫ってゆく後半はまさに映画をみるシーンのようにワクワクさせる。殺伐とした殺し合うシーンの多い中、ラブストーリーも挿入させられており、スナイパーと刑事の人生観や心理面描き出し上手い。両極端の二人が協力して挑む終盤は圧巻です。快楽殺人、復讐、警察スキャンダルなどが入り乱れ、壮大なスケールの長編ハードボイルド小説です。
2006年5月文藝春秋刊 3000円
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香納 諒一 著「第四の闇 」

2008-01-15 | 香納 諒一
インターネットの掲示板サイトで心中した妻の恭子を失ってからは、
ネット上で古本屋を営む新田元は、酒に溺れる日々を過していたが、
心中事件を追っていた友人のルポライター、小杉の切断死体を発見する。
恭子と運命を共にし死んだ女性の弟であるジローや、
渋谷の不良仲間らと事件を探り始める。
すると小杉より前にも、ネット心中サイト主宰者などが連続して
同様の殺され方をしていたことが判明。
事件が不可解な進展を見せ始めたころ、正体不明の人物から深夜に電話が入る。
電話の主は「過去に抱えている闇を理解しろ」と挑発、その後も
執拗に電話で犯人に関する発言を繰り返した。
やがて事件の闇はマスコミへの犯行声明が出されるに至って
公開殺人へと発展する。
序盤は登場人物の多さに、伏線の複雑さにゆむのを難儀するが
後半はその伏線が生きてきて二転三転の結末がおもしろい。
最終の後半意外な驚愕と慟哭の真実が明らかになる社会派サスペンス。
実業之日本社(2007年9月刊) ¥ 1,890
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