どうにもツイてない。今日、図書館で読んでいる途中だった本を盗まれた。図書館の本ではない。自分の本だ。テーブルになっている閲覧席に本を置いて、ちょって昼食を食べに席を外した30分くらいの間のことだった。
確かに不用心だった。が、これまで少なくとも5年以上同じことをずっとやってきたが、それで本を盗まれたことは一度もなかった。そもそも誰かが盗みたくなるような本ではない。数学書だから。
今回盗まれたのはポントリャーギンの『常微分方程式』。ポントリャーギンは旧ソ連の数学者で、位相群やリー群など位相幾何学の分野で活躍したが、同時に世界的に評価の高い優れた教科書を執筆したことでも知られ、この『常微分方程式』は彼の代表作の1つである。
私の持っていた『常微分方程式』は、もう35年も前、千葉大の理学部数学科に合格した時、従姉妹の旦那さん(この人も東北大の理学部数学科の出)から、お祝いにと大学時代に使っていた本を譲り受けた中の1冊である。私は在学中、解析学がどうにも好きになれず全然マトモに勉強していなかったので、読むことができなかったが、1年半かかって去年(2015年)の3月に基礎解析の本を一通り読み終えたので、それに続いてこのポントリャーギンの『常微分方程式』を読み始め、やっと半分まで進んだところだった。
そんな本だからカバーはなく(ボロボロで捨ててしまった)、赤いハードカバーの表紙にも結構傷みがあり、紙魚(シミ)でページの色も茶色に変わってしまっていて、かなり古い本だということは一見してわかる。しかも、そこかしこに書き込みもしてあるから、たとえ古本屋に持ち込んだところで、二束三文どころか「ウチじゃあ引き取れませんから」と断られるのがオチだ。
数学の専門書の、しかもそんな古~い汚い本を一体誰が何のために盗ったのか全く理解できない。草加の市立図書館には、おかしな数学マニアでも出没するのか?
もちろん、それが非常にいい本でありながら今では絶版で手に入らない、というならわからないでもないが、ポントリャーギンの『常微分方程式』は日本語版が刊行から50年過ぎた今でも現役バリバリで本屋に並んでる(さすがに普通の本屋には置いてないが、理学の専門書を扱っている大きな書店なら見つけられる)。
だから私も、このまま本が出てこないなら買い直すことはできるのだ。新品なら定価が4000円を越え、中古でも3000円くらいする値の張る本だが、注文すればほどなく手元に届くだろう。けれども、それではあの書き込みが失われてしまう…。
私は基本的に本に書き込みしたりページを折ったりすることは嫌いなのでしないが、昔から数学書だけは例外で、記述の間違いを直したり、説明を補ったり、証明の行間を埋めたりと書き込みをたくさんする。数学書は元々ある本文と自分で入れた書き込みを合わせたものが私にとっての完成品であり、財産なのだ。なくしちゃったからまた買おう、ではすまない。
図書館の事務室には届けを出したので、もし館内で見つかったら連絡をもらえることになっているが、見つかるかどうかはわからない。取り敢えず『常微分方程式』と同時並行して田村一郎の『トポロジー』を読んでいるので、まずはそちらに戻るのと、『常微分方程式』を読み終えたら取りかかるつもりだった村上信吾の『多様体』を書店に注文してきた(村上の『多様体』は足立区立図書館にもあるが、数学書は読み終えるのに1~2年はかかるので、さすがに図書館で借りて読むことはしない)。
とはいえ、やっと半分まで読めた『常微分方程式』が無事に戻ってくるのを祈っている。
──というところまで書いて記事をアップしようとしたら、図書館から電話があって、本が見つかったという。
見つかった場所を聞いたら、視聴覚コーナーのゴミ箱の中に捨てられていたとのこと。いや~よかったよかった。
近々予約の上伺おうと思っているものです。
blogの内容も興味深く、あちこち理解できないながらも目を通すのが楽しみなのです。
図書館で大事な本が、、のくだりは夢に出てきた(公園みたいなところで発見してました)
ほどだったので、ほんと見つかって我がことのように嬉しくなってみたりしてます。
ご心配いただいて、ありがとうございました。何とか無事に見つかってホッとしています。
ご連絡、お待ちしています。ブログともども、今後ともよろしくお願いします。