私は小劇団の舞台などをよく見に行くが、ダンス、特にバレエなどはほとんど縁がない。だが、朝日新聞の8/19夕刊に掲載された「世界バレエフェスティバル」についての記事の中のアレッサンドラ・フェリの言葉には興味を惹かれた。フェリは2007年に一度引退したものの2013年に復帰し、現在58歳だという。
どのダンサーにも自分の体が今までと同じではないと感じ始める瞬間がくる。今までできていたステップができなくなる。それに気付く瞬間は、誰にとっても本当に怖いものです。
それでも
跳躍や回転ができなくなってから、シンプルな動きにどれだけの深みを宿らせられるかという挑戦が始まるのです。歌舞伎や能が私の良き指針です。ひとつの動きに、どれほど膨大な叡智が翻訳されていることか。
私は1962年生まれで、現在58歳。2022年10月には60になる。そろそろ自分の「老い」とも向き合わなければならない年齢だ。
ただ、この10年くらいを振り返ると、肉体的には眼鏡がないと本や新聞が読めなくなり、髪も白くなり薄くなったけれど、治療家としては、自身のフィジカルな運動能力に頼るような施術のやり方はしていないので、フェリが言うような「自分の体が今までと同じではないと感じ始める瞬間」はまだない。
だが、その先のことは分からない。とすると今から考えるべきは、どれだけ数多くのテクニックを身につけるかではなく、1回の施術、1つの動きの中にどれだけ膨大な叡智を込められるか、であり、それは私にとっては、どれだけ認識を多重化、多層化できるか、ということかもしれない。
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