深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

治療法がいっぱい

2005-10-02 13:23:29 | 一治療家の視点

世の中には、あきれるほど多くの治療法がある。私自身も治療家として、カイロプラクティック、鍼灸、キネシオテーピング、頭蓋仙骨治療・・・といった治療法を実際に使っているが、どんな治療法を使っている先生も「この方法では治りません」とは絶対に言わない。かくして、世の中は「ウソのようにアトピーが治った」り「見る見る癌が小さくなった」りといった”奇跡の治療”なるものであふれかえることになる。

今まで病気とは無縁だった人、治療というのはお医者さんに行って注射を打ってもらうことだと思っていた人--そんな人たちが、いわゆる自然療法、代替医療を受けることを考えた時、一番迷うのは
「とにかく初めて名前を聞くものも含めて、やたらいろんな治療法があって、みんな治る治ると言ってるが、何を信用すればいいんだ?」
ということなのではないだろうか。

結論を言ってしまえば、
(かなりうさんくさい治療法も含めて)どんな疾患に対しても全く効かない、という治療法はない。
しかし
どんな疾患に対しても効く、という治療法もまた、ない。
のだ。
なぜそうなってしまうのだろう?

まず患者サイドの理由として、プラシーボ(あるいはプラセボ)効果ということがある.

プラシーボ効果とは”偽薬効果”のこと。癌の患者に「これはとてもよく効く抗癌剤です」と言って砂糖菓子を与えていたら、本当に癌が治ってしまった、というアレである。アメリカでの実験結果では、患者の30~40%にプラシーボでの改善が見られるという。つまり、患者が「これで治る」と信じさえすれば、どんな方法でも30~40%程度の人には治療効果がある、ということになる。

この業界では”口鍼(くちばり)治療”といって、治療技術はなくてもトーク(話術)で非常に高い改善効果を上げている治療家がいる。”口鍼”というのは、そういう治療家に対するある種の侮蔑を含んだ言い方だが、トークの力で通常より遙かに高いプラシーボ効果を引き出している、というふうに考えると、これはこれで立派な治療法だと言える。

それは裏返して言えば、その治療法あるいは治療家に対する信頼が低いと、治療による結果が出にくい、ということを意味する。聞いた話だが、ある鍼灸の先生は鍼灸治療を信用していないとおぼしき患者には治療を断るそうである。それは、こういった理由があるのかもしれない。もちろん、信じていない人にも信じさせるくらいの治療が本物の治療だ、という考え方もないではない。最初は皆、半信半疑なのだから。

もう一つには、治療法そのものの限界ということがある.

一般的なカイロプラクティックは病気の原因を脊椎の変位に求める。AK(アプライド・キネシオロジー)では主に筋肉を中心に人間の体を診ていく。キネシオテーピングでは筋肉+皮膚が中心となる。鍼灸では流派によっても異なるが、多くは脈状や経絡、ツボの反応に診断の基礎を置く。他にも、歯や顎関節の状態が全身の状態に関わってくると考える治療法、仙腸関節に重きを置く治療法、更には心(こころ)の状態こそが健康の本質だとする治療法・・・

挙げていけばきりがないが、あなたはお気づきになっただろうか。どんな治療法も、人間のどこか一部に着目し、そこにさまざまな疾患の原因を求めようとしていることに。

「万病は背骨から」というキャッチ・コピーがある。背骨は重要だ。しかし背骨だけでできている人はいない。(異論のある人もいるだろうが)人間の体には「気(=生体エネルギー)」が通る経絡というものが走っている。しかし経絡だけの人間はいない。皮膚も筋肉も心(こころ)も、みな同じことが言える。

それぞれの治療法には、人間を診るそれぞれの視点を持っている。その視点の一つ一つは確かに人間のある部分をとらえているが、しかし「人間丸ごと一個」をとらえてはいないのである。

では、たくさん治療法を知っていればいいのかというと、それもまた違う。「人間丸ごと一個」とは、世の中のあらゆる治療法(=人間を見る視点)を総動員してもなお、とらえきれない”複雑な何か”なのである。つまり、治療家はいつも何かが欠けた状態で治療をしていくしかないのだ。

結局、あなたにとって最良の治療は、あなたにしかわからない。どうか、それを探す努力を続けてほしい。私は切にそう願う。


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