しばらく前、腰痛の人ばかり立て続けに来たことがあった。治療していると、時々そんなことがある。ユングの言うところの「共時性」だろうか…というのはさて置き、その時の腰痛患者には、もう一つの共通点があった。全員が喫煙者だったのである。
結論から言えば、彼らの腰痛を作り出していた直接の原因は、大腰筋と腰方形筋の弱化にあった。
大腰筋は腰椎に始まり、途中、骨盤前面から始まる腸骨筋と一緒になって大腿骨近位の内側(もっと正確には、小転子)に終わる。
腰方形筋は骨盤の上縁に始まり、腰椎と第12番肋骨に終わる。
いずれも、骨盤のアラインメント(位置決め)に関与している筋肉で、それが弱化したことで骨盤が変位していた(骨盤が歪んでいた)のだ。では、それと喫煙が関係合ったのか? 実は大ありだった。
上には書かなかったが、大腰筋、腰方形筋は横隔膜にも付着しているのだ。
横隔膜は胸腔と腹腔を隔てる筋肉性の膜で、一定周期で上下運動を繰り返して胸腔の内圧を変化させる。これによって、無意識的に呼吸ができている。
彼らの大腰筋、腰方形筋の弱化の原因が、この横隔膜にあった。横隔膜の問題が、そこに付着するそれら2つの筋肉に影響していたのである。
そして、更にその横隔膜の問題の原因を追っていったら、喫煙による肺へのダメージだった、というワケ。
話を整理すると、
喫煙 → 肺へのダメージ → 横隔膜の問題 → 大腰筋・腰方形筋の弱化 → 骨盤の変位
という流れで、最終的に腰痛という症状が出ていたのである。
この話は患者さんにもしたけれど、それで喫煙をやめたかどうかは不明。ただ、治療していた私は、やっぱりタバコはからだに悪いやと、改めて実感した次第。
それから、誤解されないように書いておきますが、
・もちろん、喫煙が常に腰痛の引き金になるわけではありません。
・横隔膜の問題は肺から来るものだけではありません。
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