治療ツールというと、一般的には低周波や干渉波などの治療機器、キネシオテープなどのテープや包帯の類が考えられるが、ウチの治療室ではキネシオや超音波治療器もあるが、それ以上に2冊の本が治療ツールとして活躍している。これはその1冊にまつわる話。
その本の名は、C・W・リードビーターの『チャクラ』(平河出版刊)。初版が出たのは1978年──つまり昭和53年──の11月。この妙に垢抜けない装丁は、昭和50年代と言うより昭和40年代のテイストだが、版を重ね、私が持っているのは2004年7月発行の28刷である。手に入れたのは、六本木の青山ブックセンター(ABC)だった。
実はそれより前に、セミナーの帰りに寄った渋谷で小説を買ったのだが、その際、カバーを付けてもらわなかったので、帰ってから新聞の折り込み広告で即席のカバーを作った。カバーにしたあと気づいたのだが、そこにサントリーホールで開催されるアンドレアス・フォン・バンゲンハイムのギター・リサイタルの広告が載っていた。バイゲンハイムという名前は知らなかったが、曲目がバッハの「無伴奏チェロ組曲」だったのに惹かれて、(平日の夜で、本当は治療をやっている時間ではあったが、予約は入っていなかったので)聴きに行くことにした。
以前はサントリーホールにも年に2回くらいは行っていたし、それ以上にCINE VIVANT六本木に映画をよく観に行っていたが、そのCINE VIVANTがなくなってからは、六本木に行くことは全くといっていいほどなかった。その間、六本木ヒルズができたりして、このバイゲンハイムのリサイタルの少し前に別の用事で六本木に行ったら、街の様子がかなり変わってしまっていて驚いた。
その時も、ABCに立ち寄るつもりだった(と言うか、それも用事の1つだった)のだが、改装中で閉まっていて果たせなかった。ABCは特異な品揃えをする書店で、それゆえ私は大好きで六本木に行くと必ず立ち寄っていたが、少し前に一度経営不振で倒産してしまった。それが新聞やテレビでニュースとなり、存続を願う人たちが署名活動などをやって復活を果たしたのである。ということで、その復活後の姿をぜひ見てみたかった。その機会が、バイゲンハイムのリサイタルに行くことでやって来たのだ。
そしてそこで、このリードビーターの『チャクラ』を見つけたのである。その本を見た時、その本はまるで、そこで私が来るの待っていたかのように感じた。あの時、小説を買わなければ…あるいはそこでカバーを付けてもらっていたら…あるいは別の新聞広告をカバーにしていたら…あるいはその記事が別の人の別のリサイタルの予告だったなら…多分、私はこの本と出会うことはなかっただろう。シンクロニシティ(共時性)のようなものを感じて、リサイタルのあと改めてABCに立ち寄り、その本を買って帰った。
ちなみに、解説によると、著者リードビーターはH・P・ブラヴァツキーらが設立した神智学協会の会員の一人で、インドに渡り、ヒンドゥー教のグル、クート・フーミに師事。その後イギリスに戻り、神智学協会本部の一角に居を構え、そこで研究、著作、教育に専念。後に神智学協会の評議員を務め、またフリーメーソンの会員にもなっている。
さて、この『チャクラ』はタイトルの通り、古典的なインド医学の中に出てくる、ある種のエネルギー・センターであるチャクラについて解説したものだ(著者が神智学協会のメンバーであるため、オカルティックな視点からの解説になっているが)。しかし、ただそれだけのものなら、読んで勉強するための普通の本と変わりない。この本が治療ツールとして使える理由は、そこに付されたカラー・イラストにある。
チャクラの絵が描かれてある本は何冊か見たことがあるが、そのほとんど全てが、単なる丸か(仏教画を元にしたものなのだろうか)蓮の花をデザイン化したような線画として描かれていた。だが、この『チャクラ』には、そうした記号のようなものやデザイン化された線画ではなく、カラーで詳細に描かれたチャクラの絵が付いているのである。本文にはこうある。
本書に示したチャクラの図は、ある程度チャクラを発達させた人間が、十分に目覚めた透視力によってとらえた状態である。(中略)各チャクラは実物大に描いたが(後略)
私はもちろん、そんな透視力はないので、チャクラを見たことはないから、そのイラストがどれだけ正確なものなのかは、実際のところわからないが、例えば王冠のチャクラの説明には、
もとのエネルギーは、このチャクラの外輪において九百六十の波動に分かれる。本書巻頭のカラー図版Ⅰでは花弁が分かれているように見えないが、九百六十の線は忠実に再現してある。
と書かれている。
実のところ、私もこの本がツールとして使えるなどとは思っていなかった。あの時までは。あの時──私は腰痛の患者を治療していた。腰を前屈させると痛みが出る、その患者を、さまざまな角度から治療していたが、結果はあまり芳しくなかった。さて、どうしようか、と思ったとき、治療室に置いていた『チャクラ』が私の目にとまった。…確か、あの本にはチャクラの絵が載っていたけど、あれが使えないかな…。
半分冗談のつもりで、そのイラストを使って、その患者の弱っているチャクラを探してみることにした。AK(アプライド・キネシオロジー)の筋肉反射テストを使って一つひとつ調べていくと、“根のチャクラ”が弱っている、という結果が出た。そこで、これも冗談のつもりで、患者にこの“根のチャクラ”のイラストを見ながら前屈してみてほしい、と頼んだ。結果は、痛みなく前屈できてしまったのである。“根のチャクラ”は骨盤神経叢に対応していることから、調べると確かに弱さがあり、最終的にはそこを治療することで、その患者の腰痛を取ることができた。
不思議なことに、詳細に書かれたそのチャクラの絵は、本物のチャクラを補えるだけのものだったということになる。そして、その本はそのために、あの時、あの場所にあったのかもしれない。それ以来、この『チャクラ』は我が治療室でツールとして活躍してもらっているのである。
その本の名は、C・W・リードビーターの『チャクラ』(平河出版刊)。初版が出たのは1978年──つまり昭和53年──の11月。この妙に垢抜けない装丁は、昭和50年代と言うより昭和40年代のテイストだが、版を重ね、私が持っているのは2004年7月発行の28刷である。手に入れたのは、六本木の青山ブックセンター(ABC)だった。
実はそれより前に、セミナーの帰りに寄った渋谷で小説を買ったのだが、その際、カバーを付けてもらわなかったので、帰ってから新聞の折り込み広告で即席のカバーを作った。カバーにしたあと気づいたのだが、そこにサントリーホールで開催されるアンドレアス・フォン・バンゲンハイムのギター・リサイタルの広告が載っていた。バイゲンハイムという名前は知らなかったが、曲目がバッハの「無伴奏チェロ組曲」だったのに惹かれて、(平日の夜で、本当は治療をやっている時間ではあったが、予約は入っていなかったので)聴きに行くことにした。
以前はサントリーホールにも年に2回くらいは行っていたし、それ以上にCINE VIVANT六本木に映画をよく観に行っていたが、そのCINE VIVANTがなくなってからは、六本木に行くことは全くといっていいほどなかった。その間、六本木ヒルズができたりして、このバイゲンハイムのリサイタルの少し前に別の用事で六本木に行ったら、街の様子がかなり変わってしまっていて驚いた。
その時も、ABCに立ち寄るつもりだった(と言うか、それも用事の1つだった)のだが、改装中で閉まっていて果たせなかった。ABCは特異な品揃えをする書店で、それゆえ私は大好きで六本木に行くと必ず立ち寄っていたが、少し前に一度経営不振で倒産してしまった。それが新聞やテレビでニュースとなり、存続を願う人たちが署名活動などをやって復活を果たしたのである。ということで、その復活後の姿をぜひ見てみたかった。その機会が、バイゲンハイムのリサイタルに行くことでやって来たのだ。
そしてそこで、このリードビーターの『チャクラ』を見つけたのである。その本を見た時、その本はまるで、そこで私が来るの待っていたかのように感じた。あの時、小説を買わなければ…あるいはそこでカバーを付けてもらっていたら…あるいは別の新聞広告をカバーにしていたら…あるいはその記事が別の人の別のリサイタルの予告だったなら…多分、私はこの本と出会うことはなかっただろう。シンクロニシティ(共時性)のようなものを感じて、リサイタルのあと改めてABCに立ち寄り、その本を買って帰った。
ちなみに、解説によると、著者リードビーターはH・P・ブラヴァツキーらが設立した神智学協会の会員の一人で、インドに渡り、ヒンドゥー教のグル、クート・フーミに師事。その後イギリスに戻り、神智学協会本部の一角に居を構え、そこで研究、著作、教育に専念。後に神智学協会の評議員を務め、またフリーメーソンの会員にもなっている。
さて、この『チャクラ』はタイトルの通り、古典的なインド医学の中に出てくる、ある種のエネルギー・センターであるチャクラについて解説したものだ(著者が神智学協会のメンバーであるため、オカルティックな視点からの解説になっているが)。しかし、ただそれだけのものなら、読んで勉強するための普通の本と変わりない。この本が治療ツールとして使える理由は、そこに付されたカラー・イラストにある。
チャクラの絵が描かれてある本は何冊か見たことがあるが、そのほとんど全てが、単なる丸か(仏教画を元にしたものなのだろうか)蓮の花をデザイン化したような線画として描かれていた。だが、この『チャクラ』には、そうした記号のようなものやデザイン化された線画ではなく、カラーで詳細に描かれたチャクラの絵が付いているのである。本文にはこうある。
本書に示したチャクラの図は、ある程度チャクラを発達させた人間が、十分に目覚めた透視力によってとらえた状態である。(中略)各チャクラは実物大に描いたが(後略)
私はもちろん、そんな透視力はないので、チャクラを見たことはないから、そのイラストがどれだけ正確なものなのかは、実際のところわからないが、例えば王冠のチャクラの説明には、
もとのエネルギーは、このチャクラの外輪において九百六十の波動に分かれる。本書巻頭のカラー図版Ⅰでは花弁が分かれているように見えないが、九百六十の線は忠実に再現してある。
と書かれている。
実のところ、私もこの本がツールとして使えるなどとは思っていなかった。あの時までは。あの時──私は腰痛の患者を治療していた。腰を前屈させると痛みが出る、その患者を、さまざまな角度から治療していたが、結果はあまり芳しくなかった。さて、どうしようか、と思ったとき、治療室に置いていた『チャクラ』が私の目にとまった。…確か、あの本にはチャクラの絵が載っていたけど、あれが使えないかな…。
半分冗談のつもりで、そのイラストを使って、その患者の弱っているチャクラを探してみることにした。AK(アプライド・キネシオロジー)の筋肉反射テストを使って一つひとつ調べていくと、“根のチャクラ”が弱っている、という結果が出た。そこで、これも冗談のつもりで、患者にこの“根のチャクラ”のイラストを見ながら前屈してみてほしい、と頼んだ。結果は、痛みなく前屈できてしまったのである。“根のチャクラ”は骨盤神経叢に対応していることから、調べると確かに弱さがあり、最終的にはそこを治療することで、その患者の腰痛を取ることができた。
不思議なことに、詳細に書かれたそのチャクラの絵は、本物のチャクラを補えるだけのものだったということになる。そして、その本はそのために、あの時、あの場所にあったのかもしれない。それ以来、この『チャクラ』は我が治療室でツールとして活躍してもらっているのである。
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