キネシオロジストにとっては、キネシオロジーを使ってさまざまな検査を行う前にはスイッチングがないかを調べ、あればそれを除去しておく──というのは常識。しかし、事前にどれだけ入念にスイッチングを調べて取っておいても、スイッチングそのものを100%回避できるわけではない。
スイッチングについては、このブログで過去に何度か述べてきたし、他の人のブログでも書かれるようになってきたので、詳しくは過去記事を検索してほしいが、非キネシオロジストのためにスイッチングについて簡単に紹介すると──
日本語では「神経学的混乱」などと訳されるが、「明確な理由もなく筋肉の強弱が変化してしまう現象」を指す。
キネシオロジーとは、術者が指標となる筋肉(これをインジケータ筋と呼ぶ)を任意に決め、そのインジケータ筋の強弱の変化を診ることで、対象者の身体的、心理的な状態を読み取っていくものなので、スイッチングがあるとキネシオロジーによる検査そのものが意味のないものになってしまうのだ。
そしてスイッチングは、対象者側にある場合はもちろんだが、術者側にあっても正しい検査ができない。
そういうわけで、キネシオロジーの検査を始める前には両者ともスイッチングがないことを保証しておかなければならない。
──と、ここまではキネシオロジストにとっては常識、というか常識以前の話だが、スイッチングはそうそう一筋縄ではいかないもので、冒頭に述べたように「事前にどれだけ入念にスイッチングを調べて取っておいても、スイッチングそのものを100%回避できるわけではない」のである。
例えば、スイッチングは絵1枚、歌1曲でも起こってしまう。
これも以前ブログに書いた話だが、私は柄沢齋(ひとし)の木口木版画のシリーズ『死と変容』の中の『渦』という作品を持っているが、この作品を前にすると私自身も含めて大抵の人にスイッチングが出てしまう。
あるいはアニメ『ぼくらの』のOP、石川智晶の歌う『アンインストール』にも同じことが言えると思う。
その理由として考えられるのは、こうした作品は観る/聴く人の心に響いて、ある感情を引き起こすように働くが、その際に体の持つ特定のミネラルを大量に消費させてしまうのではないか、ということだ(実際、『インストール』を聴いている時に硫黄分を多く含む岩塩を摂るとスイッチングが消える)。
これらによって現れたスイッチングは、絵をしまうなり曲を止めれば消えるものだが、それに気づかないと、お互いがスイッチングを持ったままキネシオロジーによる検査をしているようなことになる。
※なお誤解しないでほしいのだが、これらの作品がダメだと言っているわけではない。観る/聴く人の心にある感情を引き起こすことができるというのは、作品にそれだけ力がある証拠なのだから。ちなみに私は、どちらの作品も大好き。
これは不特定多数の人にスイッチングが生じるものの例だが、ある特定の人にだけスイッチングが現れるものもある。例えば、ある特定の言葉。
私は最近、実家に帰ると母親からグダグダと小言を言われることが多い。そして今朝ふと思い立って母親の名前を思い浮かべると、耳のスイッチングが現れることがわかった。つまり、母親の名前が私にとってトリガーワードになっていたわけだ。だが、その名前でスイッチングが起こるのは私くらいなものだろう(なお、この件については対応したので、もうスイッチングは起こらない)。
これも以前ブログに書いた話だが、YouTubeに自分のキネシオロジー・セッションのデモ動画を公開している人がいるが、それを視るとクライアント役の人とセッションしている途中、ある言葉を口にした後、術者にスイッチングが現れている。多分、自分が口にした言葉の中に彼にとってトリガーとなるものが含まれていたのだろう(が、術者である彼はスイッチングに気づくことなくセッションを続けている)。
これは言葉がトリガーとなったケースだが、人によっては色、形、匂いなどがトリガーとなる場合もあるだろう。要するに「何でもあり」なのだ。
スイッチングが起こっても別に本人に痛みが出たり気分が悪くなったりするわけでもなく、全ての検査結果が真逆に出るわけでもないので、夢中でセッションをやっている間は、そのことに気づくことはとてもムズカシイ。回避策は「できるだけ注意する」ことくらいしかないのが実情。
私の場合は、個人的にスイッチングがあるとYes/Noが反転してしまいやすい質問があるので、治療が上手くいかない時はそれを使って自分にスイッチングがないかどうかを調べるようにしている。それで十分なわけではないが、何もしないのに比べればずっといい。
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また東洋医学でいうところの「気」とも関連しているのでしょうか?
手技療法や鍼灸で特に気やエネルギーに関するテクニックは、筋反射テスト以外でも施術行為自体がスイッチングがあるとうまくいかないこともあるのでしょうか?クラニオなどもスイッチングがあると施術や効果に違いが出るのでしょうか?鍼灸の脈診もスイッチングがあると変わりそうな気がします。さらに神経学的混乱という意味合いであれば、鍼などを下手に打つこと自体がスイッチングが発生してしまうのではないかと考えてしまいます。
先生のブログは考えさせられることが多く、とても勉強になります。石川智晶さんのアンインストール聴いてみます。
コメントありがとうございます。
スイッチングについては、「スイッチング」と一言で言ってしまっていますが、たくさんの種類があり、それが起こる部位も原因も単一のものではない、というのが私が経験を通して得た見解です。ですから
>スイッチングは脳や神経の混乱(?)状態なのでしょうか?それとも心理的な混乱状態を指しているのでしょうか?あるいはその両方なのでしょうか?
という質問に対する回答は、「そのいずれもある」です。また、絵や音楽でスイッチングが起こる、ということを考えると、「場の状態」もスイッチングの発生に影響していることになります。
>手技療法や鍼灸で特に気やエネルギーに関するテクニックは、筋反射テスト以外でも施術行為自体がスイッチングがあるとうまくいかないこともあるのでしょうか?
スイッチングがあると理学検査(整形外科テスト)で正しい結果が出ないことがある、ということを私自身が経験しているので、スイッチングで施術の効果が変わる可能性はありますが、どの程度変わるかはケース・バイ・ケースでしょうから、これについての回答は「Yes&No」です。
世の中には、スイッチングを除去するだけで治療している人もいるそうなので、これはこれで突き詰めていくと面白いのではないでしょうか。