最近、自分のやっている頭蓋仙骨治療(クラニオセイクラル・セラピー)が少し上達した感じがして、うれしい。特に、「ミステリアス・ゲートウェイが開く」感覚が掴めつつあるような気がしている。CRANIOSACRAL BIODYNAMICSという本と出会って2年。それまで自分が習い覚えてきた頭蓋仙骨治療を全部捨てて、ゼロから積み上げ直してきた結果がやっと出てきた、という感じである。
私が頭蓋仙骨治療を初めて知ったのは、カイロの学校の2年次のインターン先でのこと。時に1998年。そして翌年の1999年から、その先生が主催する勉強会(セミナー)が本格的にスタートし、その年のテーマが、頭蓋仙骨治療だった。それから、およそ5年。自分のやっている頭蓋仙骨治療が何となくサマになってきたな、と思っていた頃、勉強会でその本が紹介され、希望者がまとまってamazonに注文して買った。
その本、CRANIOSACRAL BIODYNAMICS全2巻(Franklyn Sills著)。2巻合わせて860ページという分厚い本。しかも全部英文(当たり前か)。ただイラストは比較的多く、そのイラストにある頭蓋にホールドする手の形などは、それまで習って知っていたから、「ああ、これならイラストを頼りに”つまみ読み”すれば行けそうだ。専門用語は調べればわかるし、中身の大半はもう知っていることのようだから」と考えていた。ところが、いざその”つまみ読み”をしてみたら、「??」…全く聞いたことのない言葉がゾロゾロ。inertial fulcrumって何? biosphereなんて辞書引いたって出てないぞ。そもそもBreath of Lifeやらpotencyやら、一体何のこと?? 結局、最初から読まなければならなくなって、計2巻の全部ではないが7割弱くらいを、半年程かかって読んだ。それは、私がそれまで5年かけて習い覚えた頭蓋仙骨治療とは、全く異質の世界だった。
私が習ってきた頭蓋仙骨治療は、ジョン・アプレジャーの考え方に従ったものだ(実際、私が教わった先生は、アプレジャーから習っている)。アプレジャーのスタイルとは、(私が理解している範囲で)まとめると…
「頭蓋・仙骨のリズムは、静脈洞の中で周期的に繰り返される、脳脊髄液の産生と排出のリズムが形作っている」、という機械論的モデル(これを、圧力一定モデルと言う)に基づいている。
頭蓋・仙骨のリズムは8~14回/分を1サイクルとするものである(この回数は個々人で、あるいは同じ人でもその時の体調によって変化する)。従って、治療は全て、このリズムに基づいて行われる。
頭蓋や仙骨にホールドする手の圧は、5g程度のごく軽いものとする(これが一般的に言われる、”5gタッチ”である)。
治療で行うさまざまなテクニック--静止への誘導、頭蓋骨のリフト、CV4など--は、全て術者が自ら行う。
(頭蓋・仙骨の自動運動の動きは、便宜上、屈曲と伸展という2つの相に分けて考えるが)治療における全ての操作は、自動運動の屈曲と伸展が切り替わるポイント(これを中間位と言う)で行わなければならない。
心理・精神面の治療を行う手法として、体性感情解放(ソマト・エモーショナル・リリース)というものがある(らしいが、私は名前しか知らない)。
…といったようなものである。そして多分、日本で一般的に言われている頭蓋仙骨治療とは、このアプレジャーのスタイルによるものである。
では、CRANIOSACRAL BIODYNAMICSに書かれていたものは? というと…
頭蓋・仙骨のリズムは、Breath of Life(命の息吹)あるいはOriginal Matrix(根元基盤)というものが生み出している。これらは私にもまだ良く説明できないが、「生命を生命たらしめているもの」だと思われる。このBreath of Lifeが体液の中にpotency(ポーテンシー=ある種の生命エネルギー)を生み出すところから、生命が始める。その生命が根元的に持っているリズムが、頭蓋・仙骨のリズムとして感じられるものである。
頭蓋・仙骨のリズムは1種類ではない。最も根元的なリズムをLong Tideと言い、100秒で1サイクルというリズムを刻む。その上に2.5回/分のサイクルのリズムで動くmid-tideというものがある。このLong Tideとmid-tideは、どの人もほぼ同一のリズムである。そしてその上に、8~14回/分を1サイクルとするCRI(クラニアル・リズミック・インパルス)というリズムがある。CRIは個々人や外的な要因で変化しやすい上、トラウマやショックなどに触れた時、そこで現れる症状を制御できなくなる恐れがあるため、治療ではあまり利用すべきではない。どうしてもCRIで治療する必要がある場合を除き、基本的にはmid-tide以上を使う。
ホールドする手の圧(というのは、表現として正確ではないが)は、CRI、mid-tide、Long Tideのどれを見るかによって変える必要がある。数字的な目安はないが、いずれにせよ非常に軽いタッチで行う。なお、私は勉強会で「手をメルトさせる(=溶け込ませる)ように触れる」と教わったが、字義通りそれをすると術者と患者の境界を曖昧にしてしまう恐れがあり危険なため、そういうタッチはすべきではない、と思う。
治療で行うさまざまなテクニック--静止への誘導、頭蓋骨のリフト、CV4など--は、全て患者主導(!)で行う。具体的には、アプレジャーのスタイルが、術者が自らの意志で操作して行っているのに対し、例えば「静止に入りますか?」と(頭の中で)患者に問いかける形で行う。すると、患者の体がそうする必要があると判断すると、自然に静止に入る。
mid-tideやLong Tideになると、既にその動きは屈曲・伸展と言ったカテゴリーでは言い表せなくなる(それでも一応、同じ言葉は使われるが)上、中間点も明確ではなくなる。それに、操作は患者主導になるので、中間位を意識する必要はない。
心理・精神面の治療を行う手法の一つとして、フォーカシングをmid-tideあるいはLong Tideの状態で行う、というものがある。なお、Sillsは安易に体性感情開放を行うことは、患者を再トラウマ化してしまう恐れがある、と警告している。
…と、アプレジャーのスタイルにことごとくNOを突きつけるような内容だった(とは言え、余談だが、Sillsはアプレジャーの本に推薦文を寄せていたりするので、別にアプレジャーと対立関係にあるわけではないようだ)。
そして何より、CRANIOSACRAL BIODYNAMICSに書かれた頭蓋仙骨治療に特徴的なのが、mysterious gateway(ミステリアス・ゲートウェイ)である。別名eye of the needle(針の目)とも言うが、なかなかうまく説明できない。人間の持つ深いレベルの自然治癒機構を作動させる、その入り口、とでも言ったらいいだろうか。それが開くとある種の光を感じる、と言うのだが、それが今までずっとわからなかった。それがここに来て、私が治療に当たって「ある誤解」をしていたことがわかった。実はテクストをしっかり読んでいれば、何度も繰り返し注意がなされていたことだったのだが。それを修正してから、「これがミステリアス・ゲートウェイかぁ」というものが、少し感じられるようになってきたように思う。
いずれにせよ、私はこのCRANIOSACRAL BIODYNAMICSにショックを受けて、それまで5年かけて一度身につけた頭蓋仙骨治療を全部捨て、この2冊の本を頼りに(何と言っても、イギリスまでセミナーを受けに行くカネも時間もなかったので)、試行錯誤しながら頭蓋仙骨治療をもう一度ゼロから積み上げてきた(SillsはCRANIOSACRAL BIODYNAMICSを、独習書ではなくセミナーを受講している人の参考書/副読本という位置づけで書いたらしいが)。
まだまだわからないことは多いが、2年かかって何とか形になってきたのは、とにかくうれしい。
私が頭蓋仙骨治療を初めて知ったのは、カイロの学校の2年次のインターン先でのこと。時に1998年。そして翌年の1999年から、その先生が主催する勉強会(セミナー)が本格的にスタートし、その年のテーマが、頭蓋仙骨治療だった。それから、およそ5年。自分のやっている頭蓋仙骨治療が何となくサマになってきたな、と思っていた頃、勉強会でその本が紹介され、希望者がまとまってamazonに注文して買った。
その本、CRANIOSACRAL BIODYNAMICS全2巻(Franklyn Sills著)。2巻合わせて860ページという分厚い本。しかも全部英文(当たり前か)。ただイラストは比較的多く、そのイラストにある頭蓋にホールドする手の形などは、それまで習って知っていたから、「ああ、これならイラストを頼りに”つまみ読み”すれば行けそうだ。専門用語は調べればわかるし、中身の大半はもう知っていることのようだから」と考えていた。ところが、いざその”つまみ読み”をしてみたら、「??」…全く聞いたことのない言葉がゾロゾロ。inertial fulcrumって何? biosphereなんて辞書引いたって出てないぞ。そもそもBreath of Lifeやらpotencyやら、一体何のこと?? 結局、最初から読まなければならなくなって、計2巻の全部ではないが7割弱くらいを、半年程かかって読んだ。それは、私がそれまで5年かけて習い覚えた頭蓋仙骨治療とは、全く異質の世界だった。
私が習ってきた頭蓋仙骨治療は、ジョン・アプレジャーの考え方に従ったものだ(実際、私が教わった先生は、アプレジャーから習っている)。アプレジャーのスタイルとは、(私が理解している範囲で)まとめると…
「頭蓋・仙骨のリズムは、静脈洞の中で周期的に繰り返される、脳脊髄液の産生と排出のリズムが形作っている」、という機械論的モデル(これを、圧力一定モデルと言う)に基づいている。
頭蓋・仙骨のリズムは8~14回/分を1サイクルとするものである(この回数は個々人で、あるいは同じ人でもその時の体調によって変化する)。従って、治療は全て、このリズムに基づいて行われる。
頭蓋や仙骨にホールドする手の圧は、5g程度のごく軽いものとする(これが一般的に言われる、”5gタッチ”である)。
治療で行うさまざまなテクニック--静止への誘導、頭蓋骨のリフト、CV4など--は、全て術者が自ら行う。
(頭蓋・仙骨の自動運動の動きは、便宜上、屈曲と伸展という2つの相に分けて考えるが)治療における全ての操作は、自動運動の屈曲と伸展が切り替わるポイント(これを中間位と言う)で行わなければならない。
心理・精神面の治療を行う手法として、体性感情解放(ソマト・エモーショナル・リリース)というものがある(らしいが、私は名前しか知らない)。
…といったようなものである。そして多分、日本で一般的に言われている頭蓋仙骨治療とは、このアプレジャーのスタイルによるものである。
では、CRANIOSACRAL BIODYNAMICSに書かれていたものは? というと…
頭蓋・仙骨のリズムは、Breath of Life(命の息吹)あるいはOriginal Matrix(根元基盤)というものが生み出している。これらは私にもまだ良く説明できないが、「生命を生命たらしめているもの」だと思われる。このBreath of Lifeが体液の中にpotency(ポーテンシー=ある種の生命エネルギー)を生み出すところから、生命が始める。その生命が根元的に持っているリズムが、頭蓋・仙骨のリズムとして感じられるものである。
頭蓋・仙骨のリズムは1種類ではない。最も根元的なリズムをLong Tideと言い、100秒で1サイクルというリズムを刻む。その上に2.5回/分のサイクルのリズムで動くmid-tideというものがある。このLong Tideとmid-tideは、どの人もほぼ同一のリズムである。そしてその上に、8~14回/分を1サイクルとするCRI(クラニアル・リズミック・インパルス)というリズムがある。CRIは個々人や外的な要因で変化しやすい上、トラウマやショックなどに触れた時、そこで現れる症状を制御できなくなる恐れがあるため、治療ではあまり利用すべきではない。どうしてもCRIで治療する必要がある場合を除き、基本的にはmid-tide以上を使う。
ホールドする手の圧(というのは、表現として正確ではないが)は、CRI、mid-tide、Long Tideのどれを見るかによって変える必要がある。数字的な目安はないが、いずれにせよ非常に軽いタッチで行う。なお、私は勉強会で「手をメルトさせる(=溶け込ませる)ように触れる」と教わったが、字義通りそれをすると術者と患者の境界を曖昧にしてしまう恐れがあり危険なため、そういうタッチはすべきではない、と思う。
治療で行うさまざまなテクニック--静止への誘導、頭蓋骨のリフト、CV4など--は、全て患者主導(!)で行う。具体的には、アプレジャーのスタイルが、術者が自らの意志で操作して行っているのに対し、例えば「静止に入りますか?」と(頭の中で)患者に問いかける形で行う。すると、患者の体がそうする必要があると判断すると、自然に静止に入る。
mid-tideやLong Tideになると、既にその動きは屈曲・伸展と言ったカテゴリーでは言い表せなくなる(それでも一応、同じ言葉は使われるが)上、中間点も明確ではなくなる。それに、操作は患者主導になるので、中間位を意識する必要はない。
心理・精神面の治療を行う手法の一つとして、フォーカシングをmid-tideあるいはLong Tideの状態で行う、というものがある。なお、Sillsは安易に体性感情開放を行うことは、患者を再トラウマ化してしまう恐れがある、と警告している。
…と、アプレジャーのスタイルにことごとくNOを突きつけるような内容だった(とは言え、余談だが、Sillsはアプレジャーの本に推薦文を寄せていたりするので、別にアプレジャーと対立関係にあるわけではないようだ)。
そして何より、CRANIOSACRAL BIODYNAMICSに書かれた頭蓋仙骨治療に特徴的なのが、mysterious gateway(ミステリアス・ゲートウェイ)である。別名eye of the needle(針の目)とも言うが、なかなかうまく説明できない。人間の持つ深いレベルの自然治癒機構を作動させる、その入り口、とでも言ったらいいだろうか。それが開くとある種の光を感じる、と言うのだが、それが今までずっとわからなかった。それがここに来て、私が治療に当たって「ある誤解」をしていたことがわかった。実はテクストをしっかり読んでいれば、何度も繰り返し注意がなされていたことだったのだが。それを修正してから、「これがミステリアス・ゲートウェイかぁ」というものが、少し感じられるようになってきたように思う。
いずれにせよ、私はこのCRANIOSACRAL BIODYNAMICSにショックを受けて、それまで5年かけて一度身につけた頭蓋仙骨治療を全部捨て、この2冊の本を頼りに(何と言っても、イギリスまでセミナーを受けに行くカネも時間もなかったので)、試行錯誤しながら頭蓋仙骨治療をもう一度ゼロから積み上げてきた(SillsはCRANIOSACRAL BIODYNAMICSを、独習書ではなくセミナーを受講している人の参考書/副読本という位置づけで書いたらしいが)。
まだまだわからないことは多いが、2年かかって何とか形になってきたのは、とにかくうれしい。
時々おかしくて、声を上げてしまいました。
知り合いでも、この本を読破しているのは数人なので、感心しました。
がんばってください。