少し前のことだが、渋谷に映画『クライマーズ・ハイ』を観に行った。映画が始まるまで時間があったため、同じビルの中にあるビック・カメラを見て歩いていて、パソコンやソフトのフロアで、MS(MicroSoft)が販促のために作った小冊子を見つけた。手に取って、最初は見るともなしに見ていたのだが、これが結構面白くて、つい1冊もらってきてしまった。
その小冊子は「使い比べ十番勝負」というもので、前半が「WindowsVista(Service Pack1適用済み)vs WindowsXP」、後半が「2007 Office System vs Office 2003」という内容になっている。「使い比べ十番勝負」と言うが、実は小冊子に載っているのは、そのうちの5つだけで、十番勝負全てを見るにはMSのHPに行く必要がある。小冊子をお持ちでない方は、まずMSのHPを見てほしい。
Vista vs XP 十番勝負
2007 vs 2003 十番勝負
小冊子は前半は左開き、後半は右開きで見る体裁になっているのだが、もちろん私のツボにはまったのは、そんな見かけ上の話ではない。販促を目的としているのだから、旧製品と比較して新製品の優位性を謳(うた)うのは当然としても、それがあまりにも手前味噌であざとく、しかもお粗末で、読んでいて笑い出しそうになってしまったからだ。
例えば、「Vista vs XP 十番勝負」の「Round1:セキュリティ対策」では、
検証1:入り込む悪質ソフト「スパイウェア」への対策ができるのは?
結果:Windows Defender※でスパイウェアからがっちりガード
とあるが、Windows Defenderでなくても、アンチ・スパイウェア・ソフトは世の中にたくさんあって、それをどれか1つ入れておけばいいだけのこと。また、Vista本体にはアンチ・ウィルス機能がなく、セキュリティ・ソフトは導入しなければならないのだが、一般に市販のセキュリティ・ソフトにはアンチ・スパイウェアが最初から含まれているものが多い。その場合、OS側のアンチ・スパイウェア機能(要するにWindows Defender)との競合を避けるため、OS側の機能を「無効」に設定しておかなければならない。じゃあ、何のためのWindows Defenderだよ!
しかも、ご丁寧に
※WinsowsXPをお使いの方でもWebサイトからダウンロードして入手することが可能です。
という但し書きまである。これじゃあ、Round1のこの勝負は、本当はXPと引き分けジャン。
また、
検証3:迷惑メールへの対策ができるのは?
結果:WindowsVistaなら迷惑メールも怖くない
で、「WindowsVista標準搭載のWindowsメールでは、迷惑メール対策機能が標準装備となりました」だって。でも、そんなのはMSがシェアにあぐらをかいてOutlookExpressの機能拡張をサボってただけであって、他のメーラーには、とうに「スパムメール・フィルタ」が入っていたし、それは当然XPでも動く。この件でもVistaの何が優位なのか全然わからん。
「Round3:自己解決機能対決」でも、
検証1:パフォーマンスの低下や動作不安定を解決してくれるのはどっち?
結果:WindowsVistaなら、パフォーマンス低下の原因を診断して、解決方法もわかる!
とあるが、実体はどう考えても、今までのヘルプ機能に毛が生えたもの、としか思えない。人によっても違うのかもしれないが、私は今までWindowsのヘルプ機能が役に立った経験は全くない。
…というわけで、「確かにこの機能はVistaならでは、だよな」と思うものもあるが、全体を通して見ると、Vistaの売りとされるものの大半はアプリケーションやネットワーク・サービスを使えば代替できてしまうことがわかり、益々Vistaに入れ替えようという気が起こらなくなる…という、実に不思議な販促資料なのだ。
「2007 vs 2003」でも同じで、2007がいかに直感的に少ない手数でスムーズに使えるか、をしきりに謳っているが、「直感的に少ない手数でスムーズに使えるか」は、ユーザーがそのインターフェースにどれだけ習熟しているかで決まる。かつて開発を行ってきた経験から言うと、ユーザーはインターフェースを変えられるのを極端に嫌う。開発サイドで「客観的に見ても、こっちの方が絶対使いやすいよ」と思うものであっても、ユーザーにとっては、今まで慣れ親しんできた操作環境が変わることは、一時的であっても作業効率が落ちることになるからだ。だから、インターフェースの変更には慎重でなければならない。
しかし、そんなことをMSが知らないはずはない。2007でインターフェースを大幅に変える時も、ユーザーからの反発を想定してさまざまな手を打っていたことは知っているが、それがMSの想定を遙かに超えたものだった、ということだ。もちろん、それには、2007とそれ以前のOfficeソフトとの間にファイルの互換性がない、というお粗末な作りも関わっていたことは確実だ。
いずれにせよ、天下のMSがこんなユーザーに媚びるような販促資料を作らなければならくなっている、ということに、今のMSの焦りが垣間見える。それはWindowsとOfficeソフトで圧倒的なシェアを握り、1社独占体制を作り出すことで成り立ってきた、MSのビジネスモデルが終焉に近いことを表しているようにも見える。大容量・高速回線が常時接続されている環境が整い、必要な機能はネット上でいくらでも無料で手に入る。必要なのは、高機能でなくても安全性・信頼性の高いOSと、高性能ブラウザだけでよくなりつつある。しかし、MSはInternetExplore(IE)の機能向上を怠り、OSの高機能化に邁進してきた。MSの凋落は、ある意味、当然のことだったのかもしれない。
創設者であるビル・ゲイツはMSを去り、舵取りは2代目の手に移った。今後、MSがどうなっていくのか、MSが嫌いな私にはとても興味がある。
その小冊子は「使い比べ十番勝負」というもので、前半が「WindowsVista(Service Pack1適用済み)vs WindowsXP」、後半が「2007 Office System vs Office 2003」という内容になっている。「使い比べ十番勝負」と言うが、実は小冊子に載っているのは、そのうちの5つだけで、十番勝負全てを見るにはMSのHPに行く必要がある。小冊子をお持ちでない方は、まずMSのHPを見てほしい。
Vista vs XP 十番勝負
2007 vs 2003 十番勝負
小冊子は前半は左開き、後半は右開きで見る体裁になっているのだが、もちろん私のツボにはまったのは、そんな見かけ上の話ではない。販促を目的としているのだから、旧製品と比較して新製品の優位性を謳(うた)うのは当然としても、それがあまりにも手前味噌であざとく、しかもお粗末で、読んでいて笑い出しそうになってしまったからだ。
例えば、「Vista vs XP 十番勝負」の「Round1:セキュリティ対策」では、
検証1:入り込む悪質ソフト「スパイウェア」への対策ができるのは?
結果:Windows Defender※でスパイウェアからがっちりガード
とあるが、Windows Defenderでなくても、アンチ・スパイウェア・ソフトは世の中にたくさんあって、それをどれか1つ入れておけばいいだけのこと。また、Vista本体にはアンチ・ウィルス機能がなく、セキュリティ・ソフトは導入しなければならないのだが、一般に市販のセキュリティ・ソフトにはアンチ・スパイウェアが最初から含まれているものが多い。その場合、OS側のアンチ・スパイウェア機能(要するにWindows Defender)との競合を避けるため、OS側の機能を「無効」に設定しておかなければならない。じゃあ、何のためのWindows Defenderだよ!
しかも、ご丁寧に
※WinsowsXPをお使いの方でもWebサイトからダウンロードして入手することが可能です。
という但し書きまである。これじゃあ、Round1のこの勝負は、本当はXPと引き分けジャン。
また、
検証3:迷惑メールへの対策ができるのは?
結果:WindowsVistaなら迷惑メールも怖くない
で、「WindowsVista標準搭載のWindowsメールでは、迷惑メール対策機能が標準装備となりました」だって。でも、そんなのはMSがシェアにあぐらをかいてOutlookExpressの機能拡張をサボってただけであって、他のメーラーには、とうに「スパムメール・フィルタ」が入っていたし、それは当然XPでも動く。この件でもVistaの何が優位なのか全然わからん。
「Round3:自己解決機能対決」でも、
検証1:パフォーマンスの低下や動作不安定を解決してくれるのはどっち?
結果:WindowsVistaなら、パフォーマンス低下の原因を診断して、解決方法もわかる!
とあるが、実体はどう考えても、今までのヘルプ機能に毛が生えたもの、としか思えない。人によっても違うのかもしれないが、私は今までWindowsのヘルプ機能が役に立った経験は全くない。
…というわけで、「確かにこの機能はVistaならでは、だよな」と思うものもあるが、全体を通して見ると、Vistaの売りとされるものの大半はアプリケーションやネットワーク・サービスを使えば代替できてしまうことがわかり、益々Vistaに入れ替えようという気が起こらなくなる…という、実に不思議な販促資料なのだ。
「2007 vs 2003」でも同じで、2007がいかに直感的に少ない手数でスムーズに使えるか、をしきりに謳っているが、「直感的に少ない手数でスムーズに使えるか」は、ユーザーがそのインターフェースにどれだけ習熟しているかで決まる。かつて開発を行ってきた経験から言うと、ユーザーはインターフェースを変えられるのを極端に嫌う。開発サイドで「客観的に見ても、こっちの方が絶対使いやすいよ」と思うものであっても、ユーザーにとっては、今まで慣れ親しんできた操作環境が変わることは、一時的であっても作業効率が落ちることになるからだ。だから、インターフェースの変更には慎重でなければならない。
しかし、そんなことをMSが知らないはずはない。2007でインターフェースを大幅に変える時も、ユーザーからの反発を想定してさまざまな手を打っていたことは知っているが、それがMSの想定を遙かに超えたものだった、ということだ。もちろん、それには、2007とそれ以前のOfficeソフトとの間にファイルの互換性がない、というお粗末な作りも関わっていたことは確実だ。
いずれにせよ、天下のMSがこんなユーザーに媚びるような販促資料を作らなければならくなっている、ということに、今のMSの焦りが垣間見える。それはWindowsとOfficeソフトで圧倒的なシェアを握り、1社独占体制を作り出すことで成り立ってきた、MSのビジネスモデルが終焉に近いことを表しているようにも見える。大容量・高速回線が常時接続されている環境が整い、必要な機能はネット上でいくらでも無料で手に入る。必要なのは、高機能でなくても安全性・信頼性の高いOSと、高性能ブラウザだけでよくなりつつある。しかし、MSはInternetExplore(IE)の機能向上を怠り、OSの高機能化に邁進してきた。MSの凋落は、ある意味、当然のことだったのかもしれない。
創設者であるビル・ゲイツはMSを去り、舵取りは2代目の手に移った。今後、MSがどうなっていくのか、MSが嫌いな私にはとても興味がある。
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