深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

時を駆ける治療家 2

2008-04-17 23:27:17 | 症例から考える

以前、ブログに時遡行(ときそこう)というテクニックについて記事を書いた。時遡行とは、「過去に生じた問題が現在の自己に影響し、尚かつ、現時点の治療では効果がない時、問題が生じた時期まで遡って治療する」テクニックである。と言っても、退行催眠をかけたりするのではなく、その問題の生じた過去のある時期の体の状態を再現させ、それを治療する、という手法である。

その時遡行を使っていて、ふと思ったのは──

過去の状態が再現できるのは、身体記憶がその時その時で、前の情報に上書きされるのではなく、新しい情報として書き加えられているからで、それは現在においても問題が未解決だから残っている、というわけではない。とすれば、その時点で、何らかの問題が起こったか否かに関係なく、過去の任意の時点の体の状態が再現できるはずだ。

──ということだった。

そこで、いつも参加しているCBSセミナーの実技の時間に、ある人が別に人に行った治療が「なかったこと」にできるかどうかを試してみた。もちろん、ほんの冗談半分に。そうしたら、それができてしまったのである。その後も何度か繰り返しやってみたが、その都度、同じように「なかったこと」にできることがわかった。しかも、一度「なかったこと」にしたことを取り消す──つまり、最初の状態に戻す──ことができることも。

で今、実際に自分の治療に取り入れている。と言っても、治療の失敗を誤魔化すためではなく、治療前と治療後の違いを明確にわかってもらうためである。実際に行っているのは、「なかったこと」にするのではなく、例えば「治療する前の状態」に戻ってもらい、「治療後の状態」と比較するのである。

これで便利なのは、治療を行った後に「あっ、治療する前にあれも調べておくんだった」と思ったことがあれば、いつでも治療前の状態に戻して、術者自身が治療の前後で変化があったのかなかったのかを確認できることだ。

ある時点の状態に戻す──あるいは、ある時点の状態を再現させる──方法は非常に簡単で、いつの状態に戻すかを明確に決めて、患者の体にその時点の状態を見せてほしい、と求めるだけである。私は、身体情報とは常に新しいページが書き加えられている1冊の本のように考えていて、そのページをめくり返すようなイメージで、体に過去の状態を見せてほしいとお願いしている。

私は会社員をしていた頃、コンピュータのシステム開発の仕事をしていた。プログラミングをやったことのある人はわかると思うのだが、プログラム開発には大きく、設計、作成(コーティング)、テストというフェーズがある。設計で十分な検討を重ね、注意深くコーディングしたプログラムでも、すぐに思い通りに動くことはほとんどない。プログラムにさまざまなミスが入り込んでいるからで、それをバグ(虫)と言う。そのバグを取り除くのが、テスト段階で行うデバッグである。

プログラムは、実際にはコーディングしたプログラム(ソース・コード)の数十万行、数百万行が一瞬にして実行されてしまうので、我々には最後に出てきた、誤った実行結果しか見えない。ソース・コードをプリントアウトして、どこにバグがあるのかを手で追っていくのは限界がある。そこで使われるのがデバッグ・ツール、デバッガ(特に、シンボリック・デバッガ)である。

シンボリック・デバッガは一種のシミュレータで、ソース・コードを1行ずつ実行したり、その途中の変数の値を覗いたり、処理の途中で変数の値を書き換えたりすることができ、どこにバグがあるかを効率的に調べることができる。

「ある任意の時点の体の状態を再現させる」というのは、ちょうどシンボリック・デバッガを使ってデバッグするのに似ている。例えば、「1週間前に急に右脚が痛み出し、最初は右脚だけ痛かったのが、だんだん腰にも痛みが出てきた」などと言われたら、理屈の上では、痛みが出た前後を含めて現在に至るまでの体の変化を、例えば30分刻みくらいで見ていくこともできるのだ(実際には、治療にかけられる時間にも限度があるので、よほどのことがない限り、そこまではやらないと思うが)。

しかし、もちろんシンボリック・デバッガが万能のツールでないのと同じように、この方法も万能ではない。例えば、問題が発生した時点の体の状態は見られても、それがどんな原因で引き起こされたのかは、これだけではわからない。ただ、上にも述べたように、非常に使い勝手がよく、高い可能性を持つツールだと思われる。あなたが治療家なら、一度お試しいただきたい。そのためのノウハウのシェアとして、この文章は書いた。


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