2024年秋アニメとして見た再放送を含む16本から、夏まで放送されていた『烏は主を選はない』の再放送を除く15本の作品のネタバレなしの感想と評価。この「1」は、そのうち2025年1月も放送が続く7本について。
ちなみにアニメの評価については、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。
以下、並びは50音順で、評価はA~E。
『アオのハコ』第1クール
高校を舞台にした部活動+恋愛アニメ。部活動ものは一般に、同じ部の中での人間模様が中心になるが、『アオのハコ』はバドミントン部1年の主人公、猪股大喜が、バスケ部2年で次期エースの呼び声も高い鹿野千夏に恋をする。その千夏がある理由から突然、猪股家で暮らすことになり…。
原作は「少年ジャンプ」で連載中のマンガだが、大喜も千夏も別に必殺技などを出すことはなく、(公式サイトに依れば)“誰かを好きになった時”の心の機微を繊細に描いたという、「ジャンプ」らしからぬ(むしろ「マガジン」辺りに載っていそうな)作品。
青春の煌めきを感じさせる、いい作品だと思うけど、いきなり好きな人と同じ屋根の下で暮らすことになったり、大喜と千夏、そして大喜の幼なじみで新体操部期待の星、蝶野雛が三角関係になる、みたいな展開は恋愛作品としてテンプレすぎて、何だかな~と思ってしまうし、(歳のせいかもしれないが)見ていてそれほどドキドキもしない。映像は綺麗だし、決してつまらない作品ではないが、何か「それだけ」って感じてしまうのは私だけか?
評価はC+。
『青のミブロ』第1クール
いわゆる「新選組もの」だが、物語は新選組になる前の壬生浪士組(ミブロ)時代を、団子屋で祖母を手伝っていたのを土方歳三に見初められてミブロに入った、ちりぬにおのの目を通して描く。におはミブロの一員として京の治安を守る活動に従事する中で、己の使命に気づいていく。
史実に沿った「新選組もの」として見ると頭の中が「??」となってしまうが、主人公は架空の人物だし、物語も史実に設定を借りた単なるフィクションと考えれば、一応納得がいく。
視点が変われば見える風景もまた変わる。しばらく前まで幕末・明治を描いた作品は、大望を抱く若き志士たちが腐った幕府を倒して日本に夜明けをもたらした、という“薩長史観”に基づいたものが多かったが、ここに来て大河ドラマを含めてそうした一方的な視点は修正されつつある。『青のミブロ』もそうした文脈に位置づけられるものだろう。これは若く理想に燃え、自分たちこそが正義だと信じて疑わなかったミブロから見たミブロの姿を描いた物語なのだ。
原作は「マガジン」に連載中のマンガで、『青のミブロ─新選組編─』もあるので、もしかしたら原作マンガは新選組終焉まで描かれるのかもしれない。
評価はC+~B-。
『チ。─地球の運動について─』第1クール
今期の目玉とも言える作品で、15世紀のヨーロッパ、P王国を舞台に、異端とされた地動説を密かに研究する者たちとC教との戦いを描く。科学史に沿って地動説が確立されるまでをなぞるのではなく(なのでコペルニクスなどは出てこない)、1つの学説が困難の中、人々にどのように継承され、広がっていくか、が物語のメインストリーム。キーワードは「感動」だ。原作は既に完結しているので、最後までアニメ化されると思う。
以前のアニメでは、視聴者の「3話切り」を避けるため、第3話に衝撃展開を持ってくることがあった。今では視聴者はもっとこらえ性がなくなり、1話切りどころか事前に公開するPVだけで見るのをやめる0話切りなども続出し、第3話で衝撃展開というものは少なくなったが、この『チ。』では(別に3話切り対策ではないだろうが)第3話で衝撃展開が待っている。この展開は本当に衝撃的で、これによって一気に気持ちを持って行かれた視聴者が少なくなかったようだ。
ところで、『チ。』の原作マンガは既にいくつもの賞を受けているが、欧米の読者/視聴者からは「キリスト教は地動説を異端としたことはなく、ポーランドでは地動説を唱えた学者が拷問されたり処刑されたりした事実はない。このマンガはキリスト教に対する日本の誤った歴史観、宗教観に基づいていて、誤解を広める恐れがある」という声が上がっている。ただこの作品は、ポーランドではなくP王国での地動説を巡るキリスト教ではなくC教との確執、という架空の物語──あるいは我々とは違う世界線の話──なので、「史実と違う」と批判しても意味がない。
評価はB~B+。
『トリリオンゲーム』第1クール
圧倒的な陽キャで人たらしな天王寺陽(ハル)と、陰キャだがパソコンとネットには超詳しい平学(ガク)。ひょうんなことから知り合った2人がタッグを組んで(というか、実際はハルがガクを巻き込んで)、資産1兆ドル(トリリオン・ダラー)を目指してビジネスの世界でのし上がっていく。彼らの前に立ち塞がるのは、ITの分野で日本を牛耳るドラゴンバンク・グループと、その総帥である黒龍一真と娘のキリカ(通称、桐姫)。
「ビックコミック・スペリオール」に連載中のマンガが原作。池上遼一によるマンガのコッテリした絵柄をアニメで見るのはどうかと思ったが、シリアスに見せかけたギャグのようなストーリーに意外に合ってる。
この作品は先にドラマ化されていて、私はそれを見ていたので、物語の展開を知った上でドラマ版と比べながら見ている。ドラマ版もアニメ版も原作に忠実に作られている(ただ原作は完結してないので、ドラマの最後はオリジナル展開だった)が、両者の微妙なニュアンスの違いに、それぞれの制作陣の原作解釈の違いが垣間見えて興味深い。
評価はB-。
『ラディアン』2期途中(再放送)
原作はフランス人、トニー・ヴァレントによる異世界もののマンガ(日本語版もあるらしいが、私は未読)が原作。私は本放送も見ていたので、今回が二度目となる。
1期のランブルタウン編から自身の力が暴走するようになったセトは、仲間に迷惑をかけることを恐れて、たった1人で魔法使い騎士たちの都、カスラーン・マーリンへと旅立つ。
そこで運良く魔法使い騎士団に潜り込んだセトは、これまで出会ったことのないスペクトル・ネメシスの掃討戦に駆り出された末に負傷し、奇妙な場所に捕らわれの身となってしまう。
1期のランブルタウン編で動き出した物語が、この2期で更に加速する。登場する人物も、1期でセトと一緒にアルテミス学院に入ったネリやドク、そして魔法使いを目の敵にして追う異端審問官たち(特に「奇跡の人」と呼ばれる幹部クラス)に加えて、カスラーン・マーリンの魔法使い騎士団、紛争を金儲けの種にする商人男爵のグループなどが加わり、それらが縦横に絡み合いながら物語が進んでいく。初見ではないが、やっぱり引き込まれてしまう。
評価はB+~A-。21話構成のため2025年冬期も続く。
『Re:ゼロから始まる異世界生活』3期前半(襲撃編)
突然、異世界に行ってしまい、そこで死なない(何度死んでも、死に戻りしてしまう)存在となってしまった少年、ナツキ・スバルの物語。彼が恋したエルフの少女、エミリアはルグニカ王国の次期国王を決める王選候補の1人。
今回、スバルとエミリアはやはり王選候補の1人、アナスタシアから他の王選候補者たちと共に水門都市、プリステラへと招かれ懐かしい面々と再会するが、そこに彼らの怨敵である魔女教の大罪主教たちが現れる…。
3期は前後各8話構成だが、第1話が90分スペシャルなので実質1クール11話。その第1話から『リゼロ』らしい飛び切り残酷でエグい物語が展開する。1期、2期のスバルは(彼自身も言っていたように)やたらと虚勢を張って大口を叩き、結果として周りから弾かれてしまうイタいヤツだったが、3期ではそれまでの失敗を糧に、そういう軽薄さが減って、慎重さと思慮深さが身についてきた。だが決して主人公を甘やかさない『リゼロ』では、そうした変化と成長を上回る試練が彼を襲う。それでも随所にスバルの成長が感じられ、見ていてワクワクが止まらない。
評価は文句なしのA。そして続く3期後半(反撃編)は2025年2/5からだ。
『るろうに剣心─明治剣客浪漫譚─』2期(明治動乱編)第1クール
2期第1クールは、明治政府転覆を目論む志々雄真実(ししお まこと)一派の企てを阻止するため、緋村剣心は江戸で知り合った人たちと別れ、1人京に向かうが、その途中、巻町操という少女と出会い、一緒に旅することになる。その操は剣心にとって因縁の男の縁者だった。一方、剣心に一方的に別れを告げられた江戸の面々も、それぞれの思いを抱いて剣心を追って京へ。
1期のレビューでも書いたように絵柄もストーリー展開も古い「ジャンプ」マンガそのもの。とはいえ、ちゃんと見られる作品になっているので2期もこうして続けて見ている。旧アニメ版をファンからボロクソに叩かれているが、それはリメイク版にありがちな話で、旧版を見ていない私には面白ければそれでいい。物語自体は完全なフィクションだが、『るろ剣』には「日本の夜明けがなった明るい明治」ではない、「暗く陰惨な明治」が描かれているところが好きだ。
評価はB-。
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