公立相馬総合病院の研修医のブログ

被災地医療を支える公立相馬総合病院
http://www.bb.soma.or.jp/~psghjim1/

相馬野馬追 vs フジロック vs JSMO

2017年07月30日 | 日記
またまたご無沙汰しております。
研修医の名取です。

さて今週末は相馬地域において最大のお祭り相馬野馬追が今まさに開催されています。
20万人の来場数があるとのことで福島県を代表するお祭りです。
市内は大変な盛り上がりになり、もちろん相馬の研修医の私も観覧しに行っているか、と思いきや……

今週末は私の大好きな日本最大のロックフェス、フジロックが苗場で開催されているのです。
相馬からは苗場は遠い(涙)、でも全国的に見れば近いのかな?
この点だけは相馬の弱点ですが、まあ苗場はどこからでもアクセスが難しいですよね。
というわけで、優雅に夏のフジロックを満喫しているかと思いきや……

なんと今週末は、癌化学療法最大の学会、日本臨床腫瘍学会JSMOの学術集会が神戸で開催されていたのです。
というわけで、なんと上の二つのイベントを差し置いて私はこの学会に参加してきました。
JSMO?何それ?と言われそうですが、めちゃくちゃ面白いですよ〜。
日進月歩している抗癌剤の最新の知見が得られるのです。
数年前は抗PD1抗体医薬が一世を風靡しましたが、数年後の今はさらに効きそうなPD-L1抗体が使われ始めており気になるところです。
肺癌へのALK阻害薬も期待できますし、大腸癌へのS-1/CPT-11+B-mabレジメンも期待できます。
癌はなかなか根治は難しいですが、化学療法領域はどんどん進歩していて患者さんにとってはとても朗報だと思いました。

というわけで今年の野馬追は観覧できず残念でしたが、懐かしい先生方や著名な先生方にも会えましたし、ほかの研修医や学生さんとも交流ができ、色々と満喫した学会でした。



新専門医制度について

2017年07月09日 | 日記
お久しぶりです、研修医の名取です。

研修が忙しくなかなかブログを書けずに悶々としていましたが、やっとログインできました。6年生の皆様はマッチング登録の季節ですね、くれぐれも忘れずに登録して下さいね!そして試験と面接でしょうか、なんとも就職活動は大変ですが頑張って下さい。
(当院も何卒ご贔屓に。)

ところで、研修医2年目の私の方にも就職活動の時期が巡ってまいりました。しかも先の見えない新専門医制度の情報を収集しながらの手探りの就職活動になります。ここで皆さんもきになる新専門医制度について少し解説しておきましょう。学生さんも患者さんも知っておいて損はない内容だと思います。

新米医師は研修医が終わると、消化器内科や皮膚科などそれぞれの専門に分かれて専門性を磨いていきます。研修医という身分ではなくなりますが専門の研修(研鑽)は終わりません。経験と試験によって専門性を証明された医師が各科の専門医です。日頃患者さんはかかりつけのお医者さんが専門医を持っているかどうかは気にしていないと思いますが、教育をきちんと受けているかどうかの証明ですので気にしてみても良いかも知れません。少数ですが専門医という証明を取らずに自己研鑽をしていく生き方もあります。

ところで新専門医制度は現行の専門医の質をさらに担保するために導入されるはずの制度でした……。ですがあまりにも質の高い専門性を担保するために研修可能な施設が大学病院(医局)一つしかないような県が現れました。そのような制度設計だったため、医師の偏在とキャリアの多様性のなさに反対にあい今年度2017年度の導入が見送られました。その後、300床以下の病院でも特例で基幹病院となれることや、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県では例年の平均程度に募集人数を抑える改変がなされ、現段階では来年度2018年4月から始まることが決まった……ような雰囲気……になっております。このようなフワフワした雰囲気の中、9月に就職先が開示され、大学病院(医局)以外にもいくつか就職先の病院が提示されると思います。そして慌ただしく10月から一次募集の試験が開始されるのではないかという予定になっています。落ちたら三次募集まではあるようなので私もどこかには引っかかってくれれば嬉しいのですが…。

そして晴れて専門医の基幹病院に就職した後の話になりますが、ここから学生さんの初期研修先の選択にも影響のある話ですが、例えば内科専門医を取得するための経験すべき160症例のうち、80症例は研修医時代の症例が使用できるそうです。中には大学病院のような大きな病院でしかお目にかからないような疾患もあるので、専門医の症例収集まで見越した初期研修先を考えるとなると大学病院レベルという考え方もありそうです。一方で、市中病院の方が病床のサイクルの速さも含めて患者数が多いので、市中病院の方が経験症例数が多いのかも知れません。

最後にちょっとお茶を濁した感じになりましたが、そこまで先を見据えて初期臨床研修病院を選ぶのはちょっと窮屈ですし、最初は初期研修に専念してもいいんじゃないかな~というのが私の感想です。

久しぶりにながながと読んでいただきありがとうございました。








自由と自立と代償

2017年04月30日 | 日記
研修医の名取です。
この4月は実習と見学の学生さんが来てくださいました。
辺境の相馬に来て頂いてせっかくですので何かを得て戻って頂ければ嬉しいです。

今回は新年度になったので新5・6年生に向けて久しぶりに当院の良さをお伝えしようと思います。特に今回は他の病院には真似できない大きな二つの特徴を取り上げます。

①研修医を一人の医師として扱ってもらえること
②個人の要望を受け入れる自由と寛容さがあること

どちらの利点も、よくある研修病院比較本やwebのようなオモテには出てこないフワッとした内容であるのに、じつはとても大切な利点だと私は思っています。学生さんはこの項目のウエイトの重さに気がつきにくいかもしれませんが、実際に働いているとこの二つの利点でだいぶ成長具合と充実感が変わってくると感じます。

一つ目の、正当に医師として扱われると自分の当事者意識と責任の感じ方は段違いになります。うちの研修をしながら学生気分にはなり得ません。これは逆に正当に扱われず当事者意識が芽生えないような研修病院があるという事を意味していますが、そのような病院の研修医と比較して2年後には精神的に相当自立して大人な考えの医師に成長しているはずです。

二つ目は、個人個人の事情や要望を汲んで貰える自由さがあり、これはプログラムを自由に組めるといったチャチな自由程度ではありません。当院では研修医の意見を公式に吸い上げる制度に加えて、院長や副院長レベルの先生と個人的に飲みながら話を聞いてもらうといった非公式なチャンスが多々あります。特に後者は当院のような小さな病院のコミュニティでしかできないことではないかなと感じます。おかげでトップに意見がすぐ届き、主科を研修しながら救急外来を担当させてもらったり町のクリニックの研修に行かせてもらったりと自分好みの研修をさせてもらっています。また、実家に頻繁に帰るといったことやペットを飼いたいなどのプライベートなことにも個々に対応してもらっていて、これには大変感謝であります。

このような研修ですが、利点だけを書くのは私の主義ではないので裏面もお伝えしておこうと思います。一つ目の、医師として扱ってもらえるということは、ひよっこであっても甘えは許されない立場になってしまいます。最初は大変厳しいです。勉強して自分で考えて判断するからこそ自立の精神が得られると思っています。二つ目の自由と寛大さを履き違えてしまうと好き勝手な研修生活が送れてしまいます。偏った研修や、何もしない研修や、我儘な医師に育つといったことにならないよう自分で律する必要があると私も注意しています。

このような研修病院ですので、ぴったり合う方にはとても合った研修生活を送ることができますし、これを読んでピンと来たら是非見学に来てくれたら嬉しいです。そうでなくても研修病院を選ぶ際の考え方の参考になれば良いなと思っています。

相馬 福島 ドライブ

2017年04月22日 | 日記
研修医2年目の名取です。
2年目になると研修医終了後の進路考えなくてはなりません。
医師のキャリアを少し説明しますと、研修医が終了すると診療所を開設できるような普通の医者になります。ですが診療所を開設できるような専門分野の実力がないため、まずは消化器科や循環器科など自分が専門としていく「診療科」を選択し、自分の専門分野として学んでいくわけです。ひとつの診療科の中にも大きな違いがあり、大学の医局に入局する場合と病院の診療科に就職する場合があります。そして生き方の問題として、専門医の取得、大学院で学位を取得、そしてどちらも取得しない、といったような生き方を見据えながらそれに合った就職先を吟味していくことになります。私も就職活動の一環で福島市に行ってまいりました。

さて前置きが長くなりましたが、福島市との往復ついでに恒例の趣味のドライブを楽しんできました。地元の方はよくご存知のルートかもしれませんが、相馬近辺の魅力としてせっかくですのでその一端をご紹介します。

今回の行きのルートは県道308号線を使いました。時間がなかったため写真はありませんが、山里に桜と菜の花が咲き乱れていてピンクとイエローがきれいな本当におススメのコースでした。この桜の咲く時期は特にお勧めのルートですので是非行って見て下さい。写真を取れなかったことは痛恨の極みです。


そして福島市から相馬市への帰りにはあまりお勧めしないコース、国道349号線、通称「さよく」を使いました。お勧めしない理由はまったくの遠回りであるためです。が、今回はドライブが目的ですので私的にはOKです。きれいな虹が見えたのでパチリ。


田んぼから虹が生えているようです。


もうひとつ349号線ルートをお勧めしない理由は、道幅が狭いうえにところどころ荒れています。雨のときは道路の竹がしなっておおいかぶさったりもします。道路が崩れて迂回ルートを走らされてしまう場合もあります。


道路脇の泣き地蔵?……看板を読んでみたらちょっと怖い。



書き終えてみたら、なぜかお勧めしない道路の紹介みたいになってしまいましたが、いろいろな発見があるのでドライブ出張は楽しみです。今日も長々とご覧頂きありがとうございました。

はじめまして 

2017年04月15日 | 日記
今年度から初期研修医として公立相馬総合病院で働かせて頂くことになりました鈴木健太と申します。地元相馬の出身で福島医大卒です。

公立相馬で働きはじめて2週間ほどたちました。午前中は、看護師業務を体験させて頂き、午後は循環器内科でお世話になっております。

思うようにいかないことも多いですが、少しずつ前に進んでいきたいと思います。

簡単ですがよろしくお願いします。

平成29年度が始まりました

2017年04月15日 | 日記


新年度が始まり相馬に戻ってきました研修医2年目の名取です。
まずなんといっても、当院に新たに2人の研修医が入職しました!!!
お2人にはぜひ相馬の医療を力強く支えて欲しいと思います!
ブログにも近々登場すると思いますので乞うご期待です。

写真はホテルリステル猪苗代から見える磐梯山です。先週は福島県全体の研修オリエンテーションが猪苗代で開催され、2人の新研修医に加えて私も引率のような立場?で行ってまいりました。福島県内には18の臨床研修病院がありますが、このオリエンテーションでは大人数を前にして病院ごとに壇上で自己紹介をするイベントがあります。今年度の当院の新研修医の自己紹介も堂々としたもので頼もしい限りでした。私もなぜか県のスタッフに目を付けられ2年目代表として乾杯の挨拶をしました。結構緊張しますね、お互い無事終わって良かったですね。そして夜は隣の研修病院である南相馬市立総合病院の先生方と新研修医の方と合同でホテルの小部屋でしめやかな飲み会が催されました。お互い相双地区の医療を支えている病院として同じ思いを共有できるとても良い飲み会でした。近隣にはこの2つの研修病院しかないのですから是非協力していきたいと思います。

まあそんな様子で無事に猪苗代のオリエンテーションは終わりましたが、出張には別の楽しみもあります。私の趣味はドライブなので、新しい道を開拓できる出張は楽しみでございます。相馬福島間は、つい3月から速くて快適な相馬福島道路が開通しましたが、そんなつまらない道は私は通りません。今回は昨年道に迷った真野ダム(はやま湖)の山越えルートのリベンジで猪苗代に抜けました。
そうしたら、いましたねお猿さんが。
いつもの相馬クオリティで安心しました。
動物園の猿よりドキドキして見ることができるのでおすすめです。


春宵一刻値千金

2017年04月01日 | 日記
暦上は年度始め、実質は4月3日(月)からですね。
そろそろ2年目となる研修医名取です。

あっというまの一年でした。
新人ゆえに物足りないことや歯痒いこともありましたが、新人ゆえに思い切って気楽にできた部分も多々ありました。ですが2年目もそれでは進歩がありませんね。4月からは大学病院から当院に戻ります。当院の研修では益々医師としての自由と責任をひしと感じることのできる自覚を持った研修ができると期待しています。

ところでこのブログは当院や福島県沿岸部の医療の現状を知っていただいて、それが研修医募集の一助となればという期待を込めてボランティアで続けています。これまでブログを書く習慣がなかったので何を書けば興味を持っていただけるのか戸惑いましたし、料理や景色など写真に収める習慣がなかったためブログに彩りが足りなく、食べ終えてから気付きダメモトで空のお膳を写真に撮ってみたり……その虚しい写真を見ながら圧倒的にガールズパワーが足りないとしみじみ思いました。

加えて地方公共機関の名を冠して実名で書く難しさを知ることができました。炎上させずに何か意見を書く、しかも短時間に。これがなかなか難しい。ブログ読者も様々な方が読んでいることが判明し、有難い反面内容が特定されやすく守秘義務の観点から苦労しました。研修医と患者さんの心温まるエピソードなんて本当は最高なんですけれどね。

そのような苦労がありますが、このブログを通して当院や相馬市に興味を持ってもらえたらこんなに嬉しいことはありません。そしてブログ更新力も日頃のカルテ作成なんかに活きてきたら個人的には一石二鳥ですね。

毎回取るに足らない内容でしたが、それでも時々お読みいただきありがとうございました。来年度も当ブログをよろしくお願い申し上げます。


合格発表

2017年03月17日 | 日記
研修医の名取です。
本日は第111回医師国家試験の合格発表でした。

そして、事務方から嬉しい報告が!
当院の来年度の研修医内定の2人が合格したとのことでした。
頑張った!さすが!おめでとう!

当院に来年度から新しい仲間が加わります。
一緒に切磋琢磨して行きましょう!


第111回医師国家試験の合格率は88.7%とのことでした。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201703/550611.html

近年の中では難易度の高い試験になりました。
そのようななか合格された皆さん、本当におめでとうございます。
お疲れ様でした。
そしてこれからが始まりです。
皆々様方の研修医としてのご活躍を心からお祈り致しております。


相馬の隠れ聖地

2017年03月16日 | 日記
大学病院に研出張修中の研修医名取です。

相馬を不在にしているとまったく相馬の情報がなく、そのため当院が院内保育所事業を2018年4月から開設することなども後から知るといった具合です。相馬のブログなのに相馬の話にだんだん疎くなっていくため、時々検索をかけて情報収集するなど涙ぐましいことをしています。

最近は震災の日が近かったためか漫画家の吉田戦車さんや、ほぼ日の糸井重里さんが来相していたということを知りました。吉田戦車さんが利用した「かつ吉」はとんかつが美味しく私もときどき行っています。検索を続けていると、元SMAPの中居くんがプライベートで相馬駅で写真を撮ったり、くるりがsomaという歌を作っていることなども知ることができました。くるりが相馬の歌を作っていたなんてちょっと凄くないですか?

そして来たる3/23と3/24には、NHKでガッキー主演で野馬追いを題材にした「絆」というドラマが放送されるみたいです。由緒正しき相馬の中村神社でもロケが行われたとの情報もチラホラあり、そこは私のランニングコースだったりもするのでかなり嬉しいことです!個人的には、前回のガッキードラマ「逃げ恥」も昔住んでいた時の家の近くでロケが行われていて、今回のドラマでもランニングコースでロケが敢行されており、ガッキーに意味不明な親近感が湧いてきますが、ご本人と会ったことや見たことは微塵もありません。まあなんでもいいですが、とりあえずドラマは気になるので見てみようかと思います。おそらく他にもスポーツ選手や著名人が訪れたところや、歴史や文学に出てくるようなところが相馬にはたくさんあると思うので、ミーハー者としてはもう少し調べて聖地巡礼したいと思いました。

ところで、明日3/17日は第111回医師国家試験の合格発表日であり、ドキドキでございます。当院の研修医候補およびブログを見てくださっている皆さんの合格を心よりお祈りしています!





6年目の3.11

2017年03月11日 | 日記


3月11日、大学病院研修のため奇しくも相馬不在の研修医名取です。
東日本大震災から6年が経ちました。
6年目の相馬はどんな様子だったのでしょうか。
今日の様子は分かりませんが、この期に当時の当院の様子をお話ししようと思います。

震災時、当院の手術室や救急外来がある建物は倒壊の危険が懸念されるまで破壊されました。すんでのところで外科手術は終わっており患者さんは難を逃れました。他の病棟で診療を続けることができましたが、レントゲン装置が故障し透視の機械を代用するような急造の状態での診療でした。幸運にも高台にある当院には津波は届きませんでしたが窓から見える水平線に大津波の様子を見ることができたそうです。じきに津波に飲み込まれた方が運び込まれましたが、既に亡くなった方が多かったとのことです。

全国から救援物資を積んだトラックが被災地入りする中、原発の問題が勃発し福島県だけは県境でトラックが立往生する羽目になりました。薬や食料が不足する中、相馬を経由する避難者やかかりつけ以外の地域住民が外来に大勢殺到し、対応や物資のやりくりに追われたそうです。そのような混乱において、家を無くしたり家族を亡くしたりしたスタッフも懸命に働いたと聞いています。地域に残った開業医の方々も当院を拠点に集まり避難所の医療を支えたそうです。

当院は震災後のこの一帯で診療を続けた唯一の病院だったそうですが、放射能が広がり迫るなかスタッフはどれほどの不安だったかと想像します。院長の強い決断力とスタッフ一人一人の不屈の精神を感じます。原発との距離や、妊婦や小さな子供などそれぞれ家庭の事情があるためスタッフが避難することは全く責められることではありませんが、町の大きな病院が診療を続けたことは地域住民の大きな心の支えになったのではないかと思います。

これが当院から伝え聞いた6年前の3.11の様子です。6年が経ち普段のスタッフは震災について多くを語らず、普段は私もブログに綴りません。被災地には震災を忘れたい生者の想いと忘れ去られたくない死者の想いがあります。ですが震災に直面した病院組織の経験を後世に伝えることも生き残った者の使命と思います。

亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します。

百考は一行に如かず

2017年03月07日 | 日記



大学病院で研修中の名取です。
気管挿管を行いましたが、久しぶりなので成功してほっとしています。
相馬で出来るようになっておいて心から良かったと思います。

大学病院でも実技のチャンスが回ってくる時があり「君、これできる?」と聞かれますが、もちろん出来るものと出来ないものがあります。
「できません」と答えると、基本的にそのときは流されます。
教えて貰えるよう食い下がるときもありますがそれはその時の雰囲気次第であり、余裕のある時間に教えて貰いながら行うことのできる次のチャンスを待つしかないのです。
できない手技はいつまでもできない、悪循環の始まりです。

大きな病院は難しい手技も多くコンプライアンスの遵守も厳格であるため研修医に任せられない一面があることは確かのようです。
他にも、職場の余裕、教育の優先度、指導者の心持ち、など山ほど理由がありますが割愛します。
そういったなか成長の場が少なくもんもんと過ごしています。

先日相馬の当院の先生と会ったときにそんな愚痴をこぼしたところ、その代わり相馬では見れないものを見ただろう、との返答が返ってきました。
確かに学術的に勉強になることはありました。
要するに、手技が先か、勉強が先かの問題ではあります。

さらに続けて、やれば見るだけよりも100倍経験や勉強になる、とも言っていました。
手技が先か、勉強が先かの問題ではあるのですが、手技を行うことは勉強になります。
そして私は最初に手技を習得した方がその後ストレスなく物事が流れることを感じます。
これが私が研修医時代に手技を重視する理由ですが、皆さんはいかがでしょうか。

灯台下暗し

2017年03月04日 | 日記
研修医の名取です。

昨日は東北大学で病院説明会がありました。
東北大学は関連病院がとても多いために、当院は毎年苦戦を強いられていたようです。特に福島県沿岸部の臨床研修病院は地元の福島や宮城といった地元の学生さんから注目されないようで、それは臨床研修指定病院となってまだ3年と歴史が浅いこともその一因だとは思っています。

しかし当院は、震災前は全国的には無名の病院だったのですが、原発から近いといったマイナスイメージと引き換えに、これまで世界の人が経験したことのないような災害のなか必死に地域医療を支えた病院として全国的に知名度を上げ、関東や関西の大学から研修医がフルマッチするような病院となりました。そして本当は地元の大学からも研修医を迎えたいという思いはあります。

昨日は何名か説明を聞いてくれた学生さん達がいました。自分の大学の近隣に、全国から研修医が集まる病院があるのを知り興味を持ってもらえたら嬉しく思います。そして未曾有の困難のなか病院を支えたスタッフ達を見てみたいといった気概のある学生さんが見学に来てくれないかなと思っています。

カイザーとカエサル

2017年03月03日 | 日記

研修医の名取です。

産婦人科をまわっていて感じたのですが、産婦人科は略語の浸透力が半端ではないと感じます。
ギネ(婦人科)とかプレビア(前置胎盤)とかベッケン(逆子)とかカイザー(帝王切開)とか。
ベッケンやカイザーなんかは医療というよりサッカーの話かなと思わなくもないですが。
とりあえずスタッフ全員が使用するくらいに浸透しています。
一般的に知っている方もいるのではないでしょうか。

ところで、カイザーの響きと帝王の響きどちらも格好良いので語源が気になり調べてみました。
意外と複雑でしたので説明します。
カイザーはドイツ語で帝王という意味、さらに帝王はローマのガイウス・ユリウス・カエサル将軍の「カエサル」から来ているようです。さらにカエサルというのはラテン語で分家という意味を持ち、本家から「切り取られた者」という意味を持つそうです。さらにこの切り取られた者の語源があり、古代ローマでは妊婦が死亡した際に胎児をお腹から取り出して埋葬しており、この胎児を「カエサル」(=切り取られた者)と呼んだのが最初の語源になるそうです。ですので古代の胎児を取り出すことと現在のドイツ語の帝王を混ぜ合わせて日本語の帝王切開となったみたいですね。

なかなか勉強になりました。

原発近隣の地域医療

2017年02月18日 | 日記
研修医の名取です。
最近、録画していた福島県広野町にある高野病院のドキュメンタリー番組を見ました。高野病院は原発から22kmのところにある原発に最も近い病院です。昨年末にたった一人の医師である院長が急死したため残された入院患者を診る医師がいないことが話題となっています。テレビで取り上げられたこともあり、私が相馬の研修医だと知ると話題を振られることもあります。

院長が亡くなる前からこの地域唯一の病院である高野病院の存続が危ぶまれていましたが、県からの支援はなく、院長が亡くなり再三の要請でやっと支援を決めたようです。しかし人的支援があるわけではなく、現在は全国からのボランティアの院長がなんとか交代で支えているようです。

現在のボランティアの院長は東京から来た私と同世代の36歳の先生とのことです。私も原発事故で医師不足となった相馬市の力になりたい気持ちでここに来ているため、勝手に親近感を持ってしまいました。震災のとき、原発事故が起こったことにより様々な社会問題が長期化することを確信しました。ですので数年後も支援が必要な状況であるかもしれないとは思っていました。

結局この相双地区は震災から6年もの年月が経とうとしていますが、医師不足が解決されていません。今はもともと地域を支えてきた当院の先生方のような医師と、私達のような自分達の意思で来る医師に支えられています。原発事故後の地域医療を医師個人の良心にのみ委ねるのは地域のインフラとしては不確実であると思います。このような大きな問題に対して6年もの間に抜本的で即効性のある地域医療の体制を構築できなかったのだろうかと思います。

とは言え私は私のできる事をやるだけです。原発に近い研修病院は、原発から23kmの南相馬市立総合病院と、40kmの当院である公立相馬総合病院の2つです。この2つの病院に自分の意思で全国から来た研修医達が研修をしています。私達は私達なりに得るものがあるだろうと研修病院を選びましたが、私達がいることで相双地区の医療が少しでも支えられたら嬉しい限りです。

病院とタリーズコーヒー

2017年02月12日 | 日記
土曜の日当直が開けた研修医の名取です。

ここの大学病院には日当直というのがあります。
相馬にはこの制度が無いため今まで知りませんでしたが、日当直は文字通り日直と当直を連続で行います。そして日当直の翌日には、次の先生との引継ぎがあり、そのため午前中が潰れます。ですので土曜の日当直は、土曜は昼夜働きそのまま日曜の昼も働き、週休なしの完成、という研修医に恐れられている勤務形態なのです。

そのような殺伐とした状況のなか、広い院内をふらふら歩いていますと院内にタリーズコーヒーのお店を見つけました。
さすが大学病院。
落ち着いて小洒落た店内、あたたかいコーヒーに日当直の憂鬱な気持ちもなんと癒されることか……。
勤務中なのでもちろんテイクアウトですが。

最近、病院にタリーズコーヒーが出店されているのをよく見かけます。私の母校の付属病院にもタリーズコーヒーが出店されていまして、これには理由があります。タリーズコーヒー日本法人創業者の松田公太氏が、身内の見舞いに毎日病院を訪れていた際に、院外に出れない患者さんや看病で疲れている家族、ひいては緊張感を強いられる職員にも病院内で本格的な美味しいコーヒーを提供してあげたいと感じたそうです。そのような経緯のもとタリーズコーヒーは「日々の緊張感のある医療現場での癒しの空間の提供」の理念を掲げて積極的に病院に出店しているのだそうです。
素晴らしい着眼点だと思いますし、お陰様で私も癒されております。

相馬の当院にはまだタリーズがありません。
公立相馬総合病院への出店も、ぜひ!