池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

「テ・ルーキス・アンテ」初演

2009-02-01 | 作品発表・プログラム

現音の作品発表は聴く機会も多く、日常的な出来事と捉えていたが、いざ自分が出品するとなると、平静を装っていても実は興奮しているようだ。
28日のリハを聴いて以来、暗譜での力漲るN児の演奏を思い出したり、本番の演奏や、それを聴くお客さんの反応を想像する度に、条件反射的に目が潤んでしまう。
当日は目覚ましの2時間も早く目が覚めてしまった。

多治見のゲネプロが終わり、N児の2曲目、自分の曲。
ピアニストの前田氏が客席の僕に駆け寄り、ピアノの位置の希望を聞く。真ん中と答えたら、子供が隠れてしまうとの事で、端っこでもなるべく音が立つような角度でお願いする。
演奏が終わるとマエストロ金田さんが見た事の無い険しい表情で、何か無いかと僕の方を向く。歌は問題ないと答え、ピアニストにコーダの部分もバスをもう少し出すよう告げた。

開場になり、ロビーで知人の来場を待つが、何だかさっぱりお客が入らない。後で聞けば、長蛇の列で待っていたお客さんたちは、入ってすぐ180度折れ曲がる、サブの入口へどんどん流れて行ったそうだ。それでも数人の知人・恩師には挨拶が出来た。日頃極めて非社交的な生活をしているので、両手で握手するだけでも充分、非日常的だ。

開演時刻になると、ホールはN児メンバーの待機席を除き、満席になっていた。僕は真ん中付近の最後列の席に着いた。
自分の曲は感激しつつ、自己批判しつつ聴く。リハでは声に関して極めてマニアックな試行錯誤を展開したが、本番をお客と一緒に聴くと、もっと大きくて単純な、ゲネラルパウゼ(総休止)でのピアノのペダルの残し方が気になり、悔いた(→感想例)。
演奏が終わり拍手の中、僕はステージに向かった。僕が歩き始めると拍手が大きくなった気がした。見れば団員たちも拍手してくれていた。泣けてきたが、顔を上げて団員に笑顔を見せた。
*  *  *
6日後、CDが届く。作曲上の演奏時間、つまりメトロノーム指定通りの場合は9分20秒としていたが、実演では最後の拍手を5秒ほど含めても、何と8分50秒だった。
指定よりも遅くなることの方が圧倒的に多いことを考えれば、今回のはかなり速い。児童合唱は活発に明るくのびのびと歌うのは得意で、荘厳に暗くどっしりと歌うのは不得手だろうことは理解できる。前半は重厚なテンポ設定にしていたが、そこが速くなり、演奏時間が短くなった訳だ。
ピアニストの前田氏は冷静だった。伴奏の時は合唱にぴったり付き、中間部の短く印象的なソロでは、ゆったりとねじを巻き戻すかの如く。

テンポの難しさについては自分も覚えがある。右手のピアノ曲を自演した際、同様に1割ほど演奏時間が短かくなった。
自身の現代作品を暗譜で初演したが、暗譜に不安があり、その怖さから早く逃れようと興奮し、頭の中のメトロノームがいかれてしまったのだ。

ゲネラルパウゼでのピアノのペダルの残し方は全く問題無かった。指揮者のアクションに自分の判断が惑わされ、不安に思っただけだった。
今回のNHK東京児童合唱団の演奏は、高い水準で仕上がっている。マエストロ金田さんと子供たちの若さがなせる、生ならではの熱演だ。



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4 コメント

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いい演奏会でした。 (作曲@平良)
2009-02-01 23:06:39
池田先生の作品はバッハを思わせるものがありました。力強い音運びが見事でした。
また、良い作品を書いてください。
私も力及ばずながらも、書いていきます。
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作曲@平良さん (I)
2009-02-02 01:03:42
ご来場、そしてコメントありがとうございました。
ご活躍をお祈りします。
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池田さん、「テ・ルーキス・アンテ」の初演おめで... (内藤美和)
2009-02-06 00:35:08
父からも宜しくとのことです。ありがとうございました。
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内藤美和さん (I)
2009-02-06 11:37:03
ご来場、そしてコメントありがとうございました。
N児の演奏や、作品に対する姿勢には本当に心が打たれました。
お父様によろしくお伝え下さい。
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