京都が好き 写真が大好き by たにんこ

長く写真をやってると 
聞こえないものまで 
聞こえてくるんだな

じっち ばっぱ

2006年01月28日 12時03分33秒 | Weblog
お爺さん=じっち
お婆さん=ばっぱ

宮城県は仙台ではこう呼んでいた。
お爺さんは じっち お婆さんは ばっぱ。
今こうして改めて書いていると 笑えるよな。

子供は時に 少々残酷な所を見せる時がある。
じっちは おれを可愛がってくれたんだけど おれは寡黙なばっぱの方が好きだった。
ばっぱは おれが遊びに行くと「ん”ん”~~~ん”」と唸り 顔をくしゃくしゃにして喜んでくれた。
いや 別に言語障害じゃあないんだ。
表現が何時もそうなんだ。
じっちも 勿論喜んでくれた。
理由がある。
約電車で2時間30を 小学一年生の時から 一人で仙台まで行ってたからなんだ。
ばっぱと言えば「こご=こっちに来なさい」と言ったきり 黙ってしまうんだよ。
おれは ばっぱの目の前にある 大きな火鉢の前に座る。
ばっぱは 目に笑みを浮かべながら すっぱぁ~すっぱぁ~と それは満足そうに 美味しそうに キセルでタバコを吸う。
すると おれはまだまだ子供だから 話し相手 遊び相手が欲しくなるわけだ。
当然 じっちを捜す。
捜した挙句 忙しいからとの理由で またばっぱの目の前に座る。
するとばっぱは「どれ…行くが」と言う。
足腰弱いばっぱが 近所のデパートまで行くと言うんだ。
嬉しかったなぁ。
でも それからが大変だ。
そこの長男夫婦の叔母さんが「何処行くんすか?=何処に出かけるんですか」と聞いても 返事なんかしない。
じっちも まさかばっぱがお出かけするとは 夢にも思わないから「おい 何処行くのや?おい…」と言っても ばっぱは何処吹く風である。
で ばっぱも切れちゃうんだ。
「やがまし”!!!」と一言言うと そこに居る二人は おれの顔を見て「何処に行こうとしてるの?」と すがるような目で見るんだ。
「デパート」と答えると 又大騒ぎだ。
聞いた途端 叔母は「何しに行くんすか?ねっ何しに行くんすか!?」と慌てふためく。
ばっぱは うるさいハエでも追い払うように おれを呼び「はやぐごっ!=早くおいで」と言うんだ。

デパートでは おれはおおはしゃぎだ。
ばっぱと出かけるなんて 年に一回有るか無いかだから それですら嬉しかった。
ばっぱは と言うと 今思うとおかしいんだけど 通路の真ん中で杖を突いて仁王立ちし 微動だにしないんだ。
しかも 和服姿なんだよな。
おそらく 薄い目できょろきょろしていたに違いない。
おれが おもちゃの何に興味があって 何を欲しがっているのか 見ていたんだろう。
飽きてきた頃ばっぱを捜すと…でかい買い物袋を店員に持たせ 自分はキセルのタバコを すっぱぁ~~~と吸っている。
「ばあちゃん…」と声をかけると「ん”…ん”!」と唸り 店員が持っているでかい買い物袋を おれに持たせる。
子供だから「何だよ ばっぱの買い物かよ」と 心の中で怒鳴っていた。
違うんだな…「ただいま!」と帰ると 直ぐにばっぱは「あげろ=その買い物袋を開けなさい」と言う。
開けると…欲しかった玩具が目の前に有るんだ。
「やれ!=早く遊んで 私に見せてくれ」とばっぱがニコニコ顔で言う。
ばっぱは 遊んでいるおれの直ぐ傍で「これ なにっしゃ?=これは なんなの?」とか「こいずは?=これはどんな風なの?」と聞いて 一緒に遊んでくれた。

寝る時は ばっぱがおれの右で じっちはおれの左側。
つまり川の字になって寝るんだ。
何時も寝る時には 子守唄の代わりに戦時中の話をしてくれてた。
何故ばっぱは子守唄を歌ってくれないかと言うと…ばっぱは歌っている途中で乗って来ちゃって 子守唄ではなくなり でかい声で歌いだすからなんだ。
だから 戦時中の話をしてくれる。
でもそれも良し悪しなんだ。
ある夜 おれが「ばあちゃん 話して」とリクエストした。
ばっぱは 悲惨な戦時中の話を とつとつと話してくれた。
その話の中で B29からの爆撃の話があった。
ばっぱは「にげだ にげだ!ん~~~どにげだ=逃げた 逃げた どんどん逃げた」と話す。
「いずまでにげでも B29のあんじぎしょうは あだまのうえがらいなぐなんねんだ=何処まで逃げても B29の あんちきしょうは 頭の上から 居なくならない」と言った。
おれは子供だから わくわくどきどきしながら聞いていたわけだけど その一節の所で「???」疑問に思ったんだよな。
だから こう言った「ばあちゃん…飛行機が居なくならないって…もしかすると 飛行機の飛んで行く方向に 逃げてたんじゃあないの?」
ばっぱは夜中に「!!!んだいっちゃ!…おれよぐたすがったなや…=そのとおりだ 私達 良く助かったな」と怒鳴った。
2~3分の静粛の後 ばっぱと二人でゲラゲラ大笑いした。