五月尽

やわらかき旋律流れ窓若葉
五月尽刈られし草の匂い満つ
まず鳥の声に始まる明易し

青羊歯

初夏の海白波ひいて船帰る
谷埋めて青羊歯なびく昼の陽に
ものの影みな涼やかに朝の眼に

青嵐

われ包む森のざわめき青嵐
夏草を行くわが膝にとんぼ群れ
はつ夏の沖に四国の島なみを

夏料理

夏の森歩くその香を吸い込んで
夏料理かこみ談笑夜更けまで
頂に残照長く夏夕べ

緑陰

緑陰に葉ずれの音を聞いている
葉桜や石段に影揺らしつつ
ひるがえる胸の白さよ夏燕

四十雀

竹林の揺れにとまりし四十雀
桜の実散り敷く下に駐車する
蝶の道われも歩みて夏真昼

柄長

いま降りし頂濡らす緑雨かな
田は水を受けて輝き夏浅し
柄長わが頭上に群れてひとしきり

谷空木

瀬音いま耳に迫りし谷空木
立てし帆のごとき芭蕉若葉かな
椎の花少年少女老い易く

緑さす

緑さす坂を少年駆け下る
山法師空より星を受けて咲く
日差しなお輝く風の手毬花

竹落葉

風吹けば竹鳴り続く竹落葉
若葉風吹き木漏れ日を浴びており
因幡へと続く街道若葉かな