緑さす

文庫本閉じトースト色の麦の秋
ポロシャツのボタン外して薄暑かな
図書館の新書コーナー緑さす

天清和

東京は窓の連なり五月の夜
天清和手書きの文字に残る熱
クレパスの感触ぐいと夏の朝

立葵

家々を映し飛び去る植田かな
薔薇香る真昼の窓にたたずめば
立葵千鳥ヶ淵の水光る

麦の秋

夏きざすゆっくり回る風速計
ゆるり田に入る水照らす夕陽かな
傾ける日差しの色の麦の秋

夏きざす

＜ZARD・坂井泉水三回忌コンサート＠日本武道館＞
薔薇供えカラーも供え合掌す
「負けないで」街は薄暑よ泉水の忌
夏きざす勇気こそあれ泉水の忌

かきつばた

はつ夏の海へ大きくロッド振る
かきつばた水に映りし空の色
ジェット機のふわり飛び立つ夕薄暑

蛇苺

差し伸べし枝の広やか若楓
蛇苺幼き日々は胸底に
赤き薔薇咲く日曜の天気雨

青羊歯

青羊歯の色深まりし静けさに
午後の陽は谷の若葉に残りけり
山路にてトイプードルと出会う初夏

麦の秋

素肌には親しきものよ夏の風
山越えて麦の秋へと坂下る
残照に高々とあり椎若葉

若葉風

いきいきと若葉の峰に風寄せる
頂に吹かれておりぬ若葉風
木下闇蛙の卵ひっそりと