二月尽く

頬白のつがい来ている梅林に
風未だ少し冷たし二月尽く
満開の梅が彩る山の裾

初蝶

頂に初蝶と会う真昼かな
梅が香の中を通りて池に出る
春風や竹にさす陽を揺らしけり

春浅し

春浅しカフェオレボウルを買い求む
春睡に身を蕩かせているばかり
老紅梅幹も空ろに花咲けり

枝垂れ梅

枝垂れ梅しだれて滴落としけり
有明の峰に登れば春霞
咲く梅の大きく動き目白飛ぶ

梅林

また戻りくるなり春の眠りより
梅林に雨降り出せる静けさよ
梅が香をなお濃く雨の降り始む

春動く

いにしえの歌の話を春霞
香の中に咲きそろいたり白き梅
春動くそぞろ歩きの人増えて

囀り

囀りの群れ来て木々を渡りゆく
沖霞み播州平野陽の満ちる
春風の止まれば笹の葉の止まる

春めく

春めきて南北の甍光りおり
遠山の上に霞のたなびける
青空へこぞって立ちぬ膨らむ芽

多喜二忌

早春のイーゼルに白きキャンバスを
浅き春茸を入れしミルクスープ
折り畳み椅子の背固き多喜二の忌

雨水

陽に透けし紅梅の色鮮やかに
薄き陽の竹林にさす雨水かな
描き終えて伊予柑ひとつ剥きにけり