桜紅葉

はや桜紅葉に夕べ早くなり
居待月夕餉の箸をとめて見る
豊の秋辻に幟の立ちにけり

月の出

月の出を見んとて窓に寄りにけり
ふと耳を澄ます夜更けの虫の声
空分けて葉月満月昇りくる

秋半ば

白き花に白き蝶群れ秋真昼
露草や高き雲間の空の色
秋半ば午後の日差しが部屋に入る

夜長

うすぐもり遠くで運動会の音
秋分や昔のものを片づける
一服の熱き茶を入れ夜長かな

名月

名月のややほっそりと昇りくる
良夜なり球打つ音も軽やかに
一片の雲なき空に今日の月

林檎

北国の水の匂いの林檎かな
青鷺を映して静か秋の水
川の辺に咲きそろいたる彼岸花

秋彼岸

快晴の遠嶺を霧のくだる朝
空真青むらを囲んで色づく田
くっきりと秋の彼岸に入りにけり

秋晴れ

捨てるべきものを捨て去る秋晴れに
地図買いて雨中を帰る秋の昼
秋の蝉思い出したるように鳴く

赤とんぼ

早稲を刈る輝く日差し浴びながら
刈られたる田に藁の香の残りおり
朝の陽に羽光らせて赤とんぼ

秋の蝶

西瓜生るごろんと駐車場の隅
秋天に鳶つれだちて弧を描く
ゆっくりと羽ばたき幾度秋の蝶