梅が香

梢よりゆらめき出ずる春の雲
春の陽の注ぐ本堂鬼瓦
谷からの風梅が香を運ぶ

春の水光りつ橋をくぐりゆく
来るものを浮かべ静かに春の水

強東風

一斉に羽ばたきの音春の鳥
頂に立ち強東風を真向かいに
春色の川は南へ流れゆく

大江戸は大き春陽のなかにあり
紅梅の花びら陽に透け空に透け

料峭

料峭の頂つつむ光かな
八重の梅一重の梅と咲きにけり
写さんと寄れば梅の香が包む

雪解けを待つ公園の木々の影
白鳥の帰り支度の整いぬ

きさらぎ

冴返る竹林の上吹く風に
きさらぎや空気再びしんしんと
曇天を映して池の春寒し

陽あたりのよきところより梅開く
春の陽のあふれる窓辺にギター弾く

春陰

雨日ごと梅の開花を促して
春雨や図書館で選ぶ本五冊
半地下より上りて春陰の中へ

島々も海もやわらか瀬戸の春
ビル映す春青空とビルの影

梅開く

優嵐スケッチブック


せせらぎの音を近くに梅開く
陽を溜めし頂にあり春の風
うすうすとむらさきだちて春の山

牡蠣筏沖に浮かべて春の海
梅咲くや天神さまの境内に

春の夕

紅梅の開く雨滴を留めおき
雨あがる春の山路に人と会う
春の夕途切れ途切れのハーモニカ

さあ蜜を吸うぞ吸うぞと目白来る
白梅のうしろの空の明るさよ

梅林

昼の陽の薄きに紅梅の開く
さみどりの梅の蕾の膨らみぬ
静かなることこそよけれ梅林は

囀りやきらめく森の中ほどに
穏やかな春の港に船休む

未開紅

梅林の季節始まる未開紅
二月早や閉店セールの園芸店
沖よりも甍の光り春めきぬ

紅梅と白梅と香を放ちけり
早春の陽を浴び白きクルーザー

余寒

余寒去り木々伸びやかに影を成す
陽炎のかなたに甍連なりぬ
薄氷の池なかばまで残りおり

春雪の駅に降り立つふたりかな
舫われしボートも揺れず春の浦