春の峰

菜の花や見上げる北の山に雪
陽を踏みて登りゆくかな春の峰
つやつやと葉は朝の陽に椿咲く

春時雨

午後の陽と風と梅散る下にいる
桜咲く峰に降り来る宵の雪
春時雨去り広やかに播磨灘

花冷え

花冷えの定まらぬ空見上げおり
春休み少女は花の色の服
永き日の古木の根方に座りけり

桜東風

西行の歌碑の頂桜東風
風よけてつつじ咲き初む頂に
囀りと木漏れ日連れて森歩く

梅散る

春霖の明け海青さ取り戻す
梅散るや梅林に陽は高かりき
今朝晴れて峰に吹きくる桜東風

楽聖忌

煙らせて降り続くなり花の雨
彼岸過ぎ漣たちし池の面
「田園」を口笛で吹き楽聖忌

春霖

春霖の頂の雲の中にいる
青鷺と我と濡れたり春霖雨
咲き初めし門の桜に雨つづく

涅槃西風

あの人やこの人のこと涅槃西風
陶芸の土ひんやりと春の昼
韮たっぷり入れる汁物雨の午後

菜の花

菜の花や東へ向かう列車ゆく
スノーフレーク恥ずかしがり屋の女の子
湯を落とす音のかすかに春の夜

春分

春分の空一面の黄沙かな
風の夜の明け海峡の霾景色
春分の都会見下ろし観覧車