パンジー

青赤黄パンジー並んで咲きにけり
陽に翅を広げて蝶の留まりぬ
はくれんや日ごと飛び立つ用意して

菜の花

菜の花の咲く川べりのふたり連れ
春の川のぞけば静かに鯉の群れ
幼子を真ん中にして梅林に

雉

なずな咲く野辺の光を歩きおり
流れかね菜屑留まる春の川
雉鳴いてわが足元をたつ真昼

春休み

風なくてしんとしている竹の秋
少年も少女も自転車春休み
並びいて地の星となるいぬふぐり

青草

青草の斜面を滑る子らの橇
風吹く坂彼岸桜の咲き初めし
立ち止まり木の芽の音に耳を澄ます

春霰

草木染め材を集めて春の野に
春霰ひととき山野包み過ぐ
地の菫見る吾れもまた跪く

春疾風

膨らんで桜蕾の風に揺れ
点々と朱を点じたり藪椿
画用紙をクレヨン滑り春疾風

彼岸明け

繰り返す出会いと別れ鳥雲に
土ぼこり風一陣の彼岸明け
春の朝もっとも深く眠りけり

沈丁花

北風の未だ冷たき彼岸の夜
坂上る男の抱く黄水仙
夕暮れにほの白くあり沈丁花

木の芽

曇天や山路に満ちる木の芽の香
藪椿朝な夕なに続々と
吹き来れば葉のはらはらと竹の秋