法師蝉

月欠ける下でスマッシュ打ちあいぬ
夕暮れて日差し秋じむころとなる
法師蝉去り行くものを追いて鳴く

秋の朝

雨音に新たに涼しき朝となる
秋の蚊にまなじりまでも喰われけり
秋の朝飛行機雲の斜線かな

秋雷

カンナ燃ゆ三十八度の日中に
地に余熱空より秋のきたりけり
秋雷や吾に新しき力

墓参り

積乱雲見上げて母と墓参り
文月や手酌で飲みし濁り酒
秋暑し山のむこうに雲が湧く

八月

（台湾・行天宮）
立秋や祈りの人の中にいる

温き水受けて残暑の昼下がり
八月の光を宿す川の水

夏料理

あらし接近溽暑の夜に目覚めけり
夏料理囲みあのころに戻る
夏の果南へ向けて旅に出る

夏未明

正面に月見て帰る七月尽
静けさを深呼吸して夏未明
釣竿を肩に少年晩夏光