今日は、とある技師さんが、体下部前壁やや大彎寄りに浅い陥凹性病変を捕まえていました。逐年受診の方でした。
1年前の写真をみると、胃粘膜に余分なしわが入っており、なおかつ空気が多少少ない状態でした、病変の指摘は多少難しいように思いました。
2年前の写真は、圧迫枕によって的確に前壁撮影がなされていました。写真をみると未分化型の0-Ⅱc様の像が描出されている印象を受けました。この時点で指摘できていたのでは??と思わせる症例でした。
今年の写真をみたところ、今年の写真でも粘膜面にうっすらと描出されていたため、がんの深さは粘膜面に留まっている様子でした。がんの進展範囲は少し大きくなっていましたが。悪性度が低いのでしょうか。
本症例で気づいた点を述べます。
2年前の写真では気づいていませんでした。
胃がんの肉眼形態を本格的に学ばなければ、早期発見は難しいように思います。
基準通り撮影を行うことしか考えることはせず、早期胃がんを発見するためにも、早期胃がんの胃透視写真を数多く見て、眼を養う必要があると思われます。
新・胃X線撮影を基準通り行えさえすれば、かなりの症例で早期胃がんは描出されてきます。しかし、写し出されていてもそれが早期胃がんであることを認識できる能力を身につけていなければ、がんにたいして追加撮影を行うことはできません。
写っていてもそれが、がんなのか知っていないと正常と思うわけです。
それは当然でしょう。異常だとは思わないのだから、正常と思うしかありません。
異常は異常であると、わからないといけません。
まさに今回の症例はそれを物語っているといえましょう。
そしてもう1点。
現在、医師による胃透視の読影力は年々低下しております。内視鏡への関心から医師のよる胃透視離れが顕著です。新撮影法できれいに写し出されていても、胃透視上で胃がんを指摘できる医師が少ないのです。
読影力が身についた医師が診断すれば、たとえ追加撮影がなされていなくても高率に早期の段階の胃がんを指摘することはできるといえましょう。
技師による追加撮影がなければ、医師は小さな胃がんを指摘できない。そんな現状に危機感を覚えます。
胃透視よりも内視鏡のほうが発見率が良いという理由として、胃透視を的確に読める医師が年々減っていきていうことが挙げられます。
撮影法は確立されているのです。胃透視検査が劣っているわけではないのです。
技師のレベルアップはもちろん大切ですが、医師の胃透視への読影力も向上させないと、今後の胃透視存続は危ういでしょう。
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