エステティシャンの皆様へ

連載シナリオ『黒電話』

７１　春江の住居(半年後)
　　正樹、仏壇の前で寝ている。
　　正樹、目を開ける。
　　仏壇に順の遺影の写真置いてある。
　　正樹、空虚な目で仏壇を見詰る。
　　正樹、肩まで髪が伸びている。

７２　同・食堂
　　客が独りも居ない。
　　春江、テーブルに肘を置き、
　　手に頬を置き、溜息をつく。
花江「もう、半年に成るがな、あのあんちゃ
　んのこと、どうする？」
　　春江、感心なさそうに、ソッポを向き
春江「どうもこうも・・」
花江「島の噂になっとるで」
春江「何が？」
花江「自分の息子殺した男と
　出来てるゆうて」
春江「馬鹿馬鹿しい」
花江「馬鹿じゃねえぞ」
春江「私、やましいことないもん」
花江「なくても、ある様に見えるがな」
春江「言わせておけばいいがに」
花江「アホ！島に住めなくなるど」
春江「お兄ちゃんは、今つらいんよ、
　家にも帰りたくないゆうて」
花江「順、殺した奴やないか」
　　春江、立上がり
春江「馬鹿！お兄ちゃんが殺したん
　じゃないがね」
花江「一緒や」
春江「お兄ちゃんは、自分を責めて、
　辛いんよ、此処追出したら、
　死ぬかもしれんよ」
花江「死ねばいいんじゃ、簀巻きにし、
　海放りこんだろ、思うがな」
春江「おかあさんの馬鹿！」
　　春江、花江の頬にビンタ。
花江「おまえ、親ぶったな！」
春江「お母さんが、変なことゆうからよ」
花江「何が変なことじゃ、お前なんか、島か
　ら出て行け」
春江「出て行ったるわ」
花江「おー出て行け」
春江「畜生！私が一番つらいんだ」
　　春江、泣き出す。
春江「順が死んで・・・順が死んで・・・
　順が・・・順が・・じゅーん・・」
　　春江、花江を見る。
　　花江、胸を抑え倒れている。
春江「お母さん、お母さん？」
　　花江、虫の息で苦しそうな表情。