連載シナリオ『黒電話』
15 走る軽トラック
荷台に正樹の荷物とサーフボード。
助手席に正樹座っている。
前のめりでハンドルを握る春江。
正樹(大声)「あ!」
春江、思わずブレーキを踏む。
春江「ビックリした!なあ、もう」
正樹「俺、港にバイク置いてきた」
春江、手を口に当て、大笑い。
春江「おにいちゃん、何やってるだよ」
正樹「別の船で送ったんで、コロっと
忘れてた」
正樹、笑う。
春江「それじゃ、今から港に行こう」
軽トラック、Uターンして走り去る。
16 春江の食堂
軽トラック、走って来る。
道路にチョークで落書きしている少年
順(7)、軽トラに気付き、
順「あ!おかあちゃんだ、ばあちゃん、おか
あちゃん戻って来たよ」
軽トラ、店の前で止まる。
順、運転席に駆け寄り、
順「あれ、おかあちゃんひとり?
バイトの人は」
春江、後を指差す。
順、軽トラの後に廻る。
順「あ!バイクだ、わーい、バイク、バイク」
正樹、バイクを降り、キョトンした表情。
春江「コレ、順、山本のお兄ちゃんに挨拶
しなさい」
順、春江の後に隠れて、覗き見する様に
顔を出す。
正樹、握手を求める様に、手を出し、
正樹「始めまして、山本です」
春江「順、ほら握手」
順、手を出し、
順「青木順です、宜しくお願いします」
順、深々と頭を下げる。
正樹も頭を下げ、
正樹「こちらこそ、宜しくお願いします」
春江、笑顔。
春江「ウチの看板娘・三姉妹、紹介すわね、
おかあさん、おばちゃん、
バイトさん来たよ」
正樹、首を傾げる。
老婆三人、歌江(70)、照江(68)、
花江(65)店の奥から出て来る。
花江「ほーい」
歌江「へい、へい」
3人、横一列に並ぶ。
春江「ウチの母とその姉です」
正樹「今日からアルバイトでお世話になりま
す、山本正樹です、宜しくお願いします」
正樹、深々と頭を下げる。
花江、正樹の肩を叩き、
花江「固いこと、いいから」
正樹、頭を上げる。
花江「私が春江の母の花江、こっちが姉の
照江、大姉の歌江」
照江「よろしくお願いします」
歌江「あんちゃん、よろしゅうたのむわ」
花江「今年のバイトは可愛い顔しとるわ」
歌江「おお、これで、かき氷一杯余分に売れ
るわ」
花江「去年のは、使えんかったもんな」
歌江、軽トラの荷台を見て、
歌江「あんちゃんは、コマイ船、乗るんけ?」
正樹「は?」
正樹、首を傾げる。
春江「サーフィンするかって」
正樹、頷いて、
正樹「はい、大好きです」
花江「この島じゃサーファーは、モテるけん
のう、にいちゃんポイント高いで」
照江「これで、かき氷もう一杯やな」
花江「かき氷どころか、フランクフルト一本
追加や」
歌江、正樹に近付き、股間を軽く叩き、
歌江「あんちゃん、このフランクフルトは
売らんでええから、ちゃんと仕舞っときな」
花江と照江、爆笑
正樹と春江、顔が真っ赤に成る。
順、正樹と春江を見比べキョトンとして
いる。