エステティシャンの皆様へ

連載シナリオ『黒電話』

７６　道路(青山付近)
　　旧型ＢＭＷ車内(１０年落ち？)
　　博信、ジャケットのポケットに手を入れ
　　ている。
博信「・・俺、三友不動産に就職きまった
　んだ」
泰子「すごいじゃない、おめでとう」
　　泰子、窓の外を見ながらタバコを吹かす。
博信「いつまでも、ＤＪじゃマズイだろ」
泰子「そうね」
博信「泰子のお父さんにも挨拶いかなきゃ
　マズイし」
泰子「挨拶？」
　　博信、緊張している。
博信「俺も、ここらで身を・・」
　　泰子、博信の顔の前に手を出し、
泰子「待って！」
　　博信、ドキッとした顔。
泰子「姉達は２５で結婚させられたけど、
私は３０まで結婚する気ないわ、ライフイズトゥショート、
エンジョイマイライフ、エンジョイマイセルフでしょ」
博信「で、でも？」
泰子「それに、私がＯＫしても、両親が賛成
　しないわ、ウチの家系は、東大か習学院じ
　ゃないとダメなの、たしかヒロ君、
　大工文化中退だったわよね？
　無理だわ」
　　泰子、キッパリした口調で言う。
　　泰子、エルメスのバッグから
　　トランシーバーを取り出し。
泰子「あ！もしもし、聴こえますか？泰子で
　すけど？終りましたので、迎に来て下さい」
男の声「了解しました」
　　　×　×　×
　　赤いフェラーリ後方から走って来て、
　　博信のＢＭＷの後ろに止まる。
　　泰子、ＢＭＷを降り、
　　フェラーリに乗り込む。
　♪フェラーリ、轟音を轟かす。
　　泰子、手を上げ、指だけ動かして、
　　博信へサヨナラポーズ。
　　フェラーリ、轟音と共に走り去る。
　　　×　×　×
　　ＢＭＷ、スモールグラスの窓が開く。
　　博信、泣きそうな顔。
　　博信、婚約指輪が入ったケースを手にし
　　ている。
博信「妾の娘が、偉そうに」
　　博信、指輪(ケース)を投捨てる。
博信「バカにしやがって」
　　ＢＭＷ、スモールグラスの窓が閉まる。
博信「畜生」
　　博信、泣き始める。
　　　×　×　×　
　　ＢＭＷ、タイヤを鳴らして走り出す。
博信「チキショー」
　　博信、泣きながら、鼻水を垂らし運転し
　　ている。