※ 久しぶりに小ネタです。
恥ずかしいお迎え
「じゃあ。お疲れ様です」
藤原が定刻きっちりに、暇乞いをしたのを田口は「お疲れ様でした。明日もよろしくお願いします」と言って、見送った。
パタンとドアが閉まると同時に、にわかに田口が椅子から立ち上がり、もの凄い勢いでその辺りを片付け始めた。
「急がないと、あれがやってくる…」
呪詛のような田口の呟き。普段の彼を知っている人物がそれを聞いたなら、この浮き世ばれした愚痴外来についに幽霊も愚痴を言いに来たのかと思うぐらい、田口の動きは速かった。
「よし! 完了!」
田口が喜んだのも一瞬。
「行灯くーん。帰りましょー!」
やたら脳天気な声がドアの外から聞こえて来たと同時に、バンッと勢いよくドアが開いた。
「迎えに来たぞ。ほらっ、帰るぞ。今日の夕食は、麻婆豆腐!」
「……」
にんまり、ご機嫌で登場したのは、オレンジの将軍だった。
今日こそ、この当てつけのようなお迎えから逃げられると思ったのに…。自分を振りかえつつ、むかむかしてくる田口。
「…」
無言で、ロッカーをドンと締め、これまた、無言で鞄を手に、無言で愚痴外来のドアへ向かう。
いっそ、速水をここに閉じ込めたろか。そんな思いを抱く。
が、おっとり田口の行動など、とっくに把握しているらしい速水は、田口がドアを閉める前にちゃっかり廊下に逃げている。
「……」
田口は速水を無視して外付けの階段へと向かう。その後ろから、
「ありすぅ。ママは今日も機嫌が悪いみたいだそぉ。だけど、最初に俺たちを忘れたのは誰だっけー? あの厚労省のうんたらかんたらに呼び出されて、そのあげく、彦根に回収されるってどういうこと?」
すねきったことを抱き上げたありすに愚痴るのが、田口の耳に聞こえる。
「……」
白鳥に呼び出されたあげく、終電に間に合わず、東京駅で呆然としていたところを、大阪から帰ってきた彦根に発見され、桜宮まで送りますよと言われ、良かったと思った…。
なのに、なぜ速水がごね続けるのか。田口には理解できずにいた。
★★突然の厚労省からの呼び出し?に、慌てて飛び出していった田口先生。直ぐに戻れると思ったけれど、そうは問屋はおろさないが、権ちゃんがらみのお仕事です。
でもって、将軍は帰宅したら、嫁がいないので大捜索をしたんでしょうね。でもって、のーんびり彦根っちに送ってもらってる姿を見て、プチって何かがキレたんです。
久々に思いついたしょーもないネタでした。