会うなり、Iさんは
「疲れた顔してる」と私を見て言った。「えっ、そう?そんなことないよ」
と私は言いながら、心の中では、「疲れた顔」それは正確に言うと、私が2年分老けたということなのだと察した。
私は3人の中では最年長。二人は50代後半。
悲しいことに、60代を超えると信じられないくらい、老化が加速し始める。
タレントさんでも、少し見ないうちに、大きく容貌が変わって驚くのも、この年代あたりからだ。
2年の月日をまたいで再会した私の容貌は、2年分お婆さんになっている。
出かける前に、白髪を隠したり、丁寧にメイクアップして、いつもは3分で済ませるところを、気がつけば20分以上鏡の前で奮闘し続けた。だけど、意味なかったな。
女はある年齢になると、男性と会うよりも、女性と会う時の方が、“身なり”にいつも以上に気を使う。
40代の時にクラスメートの女友だち二人と会ったときに、一人が「昨夜は日頃しない高価なパックをした」と告白した。
その時は口には出さなかったけど、「何でそこまで」と密かに驚いたけど、今ならその気持ちがよく分かる。
張り合いたいわけじゃない。優位に立ちたいわけでもない。
これは、女の性(さが)。
独身で若い時の化粧は、男性へのアピールであったかも知れないけれど、年をとってからは相手が男であれ、女であれ、誰であっても、美しくありたいのだ。
娘がたまにペットと一緒に自撮りをした写真をラインで送ってくる。
親バカだと自覚してるけど、その写真を見るたび、若い、かわいい、美しいと見入る。
60を半ばへ到達しつつある自分の顔は、自撮りだとどう写るのか。
スマホのカメラ機能を開け、被写体を自分に切り替える。その瞬間、見えるスマホを操る老婆の姿にあ然とする。
いや、鏡で毎日会っている自分と違いすぎる…と思う。ここまでじゃない。頭の中で、必死に弁護、自分の姿を擁護する自分がいる。
すっぴんのまま、一番良い顔を作って自撮りしてみる。ひぇ~、こんなもんか。これが私なの?
側にいた夫をつかまえて、無理矢理見せる。
「ねえ、私の顔ってこんな風なの?」
夫は鼻で笑って「いや、ちょっと違うね」という。
気を使ったのかな。でも、少し安心する。
別の日、化粧をしたついでに、再び自撮りでどの程度に写るのかの検証をしてみた。
出窓の前に立って、思いっきりの笑顔で自撮りしてみる。
おっ、ちょっとは等身大の自分に近く写ってるぞ。嬉しい。
この写真、遺影にいいかも。
Yeah(イエイ)!