いつも午前6時35分に家を出るのだが、今朝は5分遅れた。その5分を取り戻すため、駅まで自転車を飛ばし、駐輪場に駐輪して、直ぐに急ぎ足で職場へ向かった。
早朝ということもあり、また今日は特に肌寒いくらいの朝だった。
商店街を抜け、住宅街に入り緩やかな坂道を登る。次第に坂は急になり、登りきって汗ばむ頃には職場はもうすぐ。
その時、カラスが右手上空から飛んで来るのが見えた。カラスは口に白い物をくわえながら、道路を挟んだ左手へと下り立った。
口にくわえている白い物は、どうやら角食(北海道では食パンの事を角食という)のカケラの様だった。
カラスが直ぐにそれを食べるのかな?と思って見ていると、意外なことに、降り立ったそばの大きな水たまりにポイッと投げ入れた。誤って落としたのかな?とも思ったが、明らかに意図的に水たまりへ落としている様子だった。
水たまりをよく見ると、他にもいくつかパンが浮かんでいた。どこからか運んで来ているようだ。白いので、遠目にもよく目立つ。
どうするのだろうと見ていると、カラスは今落としたパンとは別の、水たまりの水をよく吸い上げたパンをくちばしで拾い上げ、美味しそうに飲み込んだ。
もしかしたら、これはカラスの調理なのではないか?カラカラに乾いた食パンのかけらを、水に浸して柔らかくして食べているのではないだろうか。
夏の朝のカラスの食卓。今日のメニューは、
”パン・デ・ア・ラ・ミズタマリ“
(テキトーなフランス語風)
「やっぱり夏は、喉越しの良い水を含んだパンだねえー」なんて、カラスの声が聞こえてきそうだった。
珍しいカラスの朝食風景を見て、「今日も朝から貴重なもの見たなあ」と楽しい気分になった。
職場は目の前。遅刻せずに、無事定刻に到着した。