先日おトイレは掃除したのだが、トイレ内の小物を置いてある棚は掃除をしなかった。
棚の上には、おとぎ話の小さな人形たちが飾ってあり、どかすのがちょっと面倒だったのだ。
しかし、だいぶホコリも溜まっている、今日こそはと意を決して棚の上の掃除をしようと思った。
人形というのは、かつて流行った食玩「午後三時のおとぎばなし フェアリーテイル」のフィギュアたち。海洋堂の実によく出来た物だ。
それは、以前勤めていた会社の同僚からもらったものだ。確か、その方の祖父が営むコンビニ店を閉める事になり、不要だからとタダで5箱もくれたのだった。
おトイレの棚の掃除の際は、いつも人形たちを便座カバーの上に並べるのだが、今日に限って、カバーのかかっていない後ろの部分に並べた。
先ず、ドン・キホーテ、それからブレーメンの音楽隊、そして赤ずきん、アリとキリギリス、と並べた。最後に人魚姫を置いた時、安定が悪く倒れて隙間に入り込んでしまった。あっと思ったその瞬間「チャンポン!」と音がした。
まさか!予想だにしなかった。隙間からそのまま便器の中へ落ちてしまうなんて…。人魚姫ー!
私は一瞬固まった。どうしよう。
落ちてしまった人魚姫。このまま流してしまおうか。人魚姫が望むなら、そのまま海まで帰してあげようか。
いやいや、パイプ内に引っかかったら、詰まりの原因になって大変なことになる。
でも、便器の中からどうやって取り出そう…。
他の4体を安全な場所へ移してから、恐る恐る便座のフタを持ち上げた。
透き通った水の中に、美しい人魚姫が涼しげにこちらを見ていた。嗚呼、人魚姫!救わなければ。
そうだ!いらない割り箸を使おう。
早速割り箸で人魚姫を挟もうと奮闘するけれど、汚水に手を触れたくないので、ビビってうまく行かない。
そうしているうちに、汚水にかすかに手が触れた。ええい、もうこうなったらやっちゃえニッサン。もう大胆に半分汚水に手を浸しながら、割り箸で人魚姫を救った。
いらないビニール袋に入れ、風呂場の排水口に近い場所で袋に入れたまま水で洗い、その後漂白剤に浸けて除菌した。自分の手も殺菌消毒作用のあるハンドソープで洗った。
人魚姫をよーく水洗いした後、水気を拭きながら、しげしげと見た。蓄積していたホコリも流れ落ち、色も鮮やかで、ボディーもお顔も美しい。
ついでに他の4体のフィギュアも水洗いした。開封したばかりのような美しさに蘇った。
海洋堂のフィギュア、やっぱり素晴らしい。
トイレの棚を拭き、フィギュアを再び並べた。
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人魚姫は海には帰らず、我が家のトイレに滞在しています。