ドラマが待ち遠しくてならない。そしてたった15分で終わってしまうので、更に翌日が待ち遠しくなってしまう。
ドラマを見て生まれたこの“奇妙な感覚”、主人公が感じているのと同じ、この感覚をどう表したら良いのか、表現に戸惑う。
ここからはドラマのネタバレも生じるので、まだご覧になっていない方はご注意を。
詳細なあらすじは省略するとして、この奇妙な感覚が生まれる部分をザックリ説明すると…。
主人公の直樹は、ヴァーチャルリアリティのトワイライトの中では、女子高生のアバターとなってナオキと名乗り、その世界を一人で過ごす事を楽しんでいた。そこでホナミという女性のアバターと出会い、共に過ごして行くうちに、お互いに好感を持ち、恋愛感情が生まれる。
それがおじさんである直樹の初恋なのだが、ホナミが突然居なくなって、恋心が止まらない直樹は、ホナミの個人情報を取得し、現実世界のホナミに会いに行ってしまった。
ここからはネタバレです。
現実のホナミは、穂波という名の直樹よりも年上の高齢男性だった。
「さもありなん」と思いつつ、ストーリーを追っていたけれども、ホナミの正体は“お婆さん”か“若い男性”だと推測していた私には、坂東彌十郎さん演じるお爺さんには、結構ショックが大きかった。
主人公の野間口徹さん演じる直樹も、この現実にショックを受け、この関係をどう受け止めて良いのか、混乱が生じる。
正に視聴者…私は、この主人公と同じ思いを抱え、どう受け止めたものかと、一緒に混乱し続けながらドラマの展開を見守りつつ、先が気になって気になってしょうがないのである。
本来、VRの中では、アバターを操り、名前を名乗っているけれども、どこの誰であるか素性の知れない匿名である。
アバターの性別が女性であっても、今回のドラマのように男性が操作している場合もあれば、女性の場合もあり、更に現代に照らして言えば「LGBTQプラス」の何れかの人の場合もあるわけだ。
今回のドラマでは、ナオキとホナミは、本来は匿名のままで終わる関係であったのが、現実世界でも接触してしまった事で、2つの世界での関係性が並行して進むことになった。
VRの中では、かわいい女子高生と魅力的な女性だが、現実にはさえない中年おじさんの直樹と、現役時代は成功者であったと思われる穂波。
この極端な対比も面白く、穂波の孫、葵の登場によって、直樹のゲーマーとしての腕前が披露されるのは、ちょっと嬉しい場面だった。
穂波があまりに博識で料理もうまく、現役時代には大成したと思われる人物だったので、葵との会話が弾むところが、隠された直樹の良さが表れていた。
VRのファンタジーな夢世界と現実世界の厳しさの対比も、年齢を問わず多くの視聴者を引き付ける要因かもしれない。
穂波の家に行く時は、直樹はいつもバイクを使う。
野間口さんのモッズコートとベスパの組み合わせ。レトロチックなヘルメットも良く似合っていて、カッコイイ。
このモッズコートとベスパは、1979年の映画「さらば青春の光」を彷彿とさせ、効果的。切なさが増す。
このドラマは間違いなく野間口さんの代表作だ。
「現実世界で俺は終わっている」と自ら語る直樹は、人と関わることを避けてきた。
それがヴァーチャルの世界で恋をした事で、リアルな人間と関わりを持つ事になった。
直樹は回を追うごとに、少しずつ変化し、魅力的になって行く。
それに伴って、野間口さんがどんどんカッコ良く見えてくる。
アバターナオキを演じる、ツインテールの倉沢杏奈ちゃんもとってもキュートだ。
ああ、今夜が待ち遠しい。