表紙には、葉っぱを素材にした切り絵作品をつまみ、空へかざしている写真が使われている。
「これ知ってる」
何で見たのだったろうか。
葉っぱには、繊細に切り出されたメルヘンな世界がひろがっている。
思わず手に取ってパラパラとページをめくった。
本の題名は「いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界」
“リト@葉っぱ切り絵”さんが制作した葉っぱの切り絵作品集だ。
仕事を終え疲れた体に、森の動物や海の生き物たちが繰り広げる心優しい物語が、ホッコリと心を癒やしてくれる。
半分ほど読み進んだ。
いいなぁー、欲しいなーと言う気持ちがちらっと湧いたが、兎に角帰ってご飯支度をしなきゃと、本を閉じ地下鉄へ急いだ。
家に帰り、食後コーヒーを飲みながら、胸に蘇るほっこり感。やっぱり明日買って帰って来ようと決心した。
翌日、仕事帰り、同じ書店の同じ場所に積まれていた目的の本。
無い!
あー、やっぱり昨日買って帰るんだったー。
でも待てよ、どこかに残っているかも。
書店の検索機械で書名を入力する。
在庫の書棚番号が示される。在庫2冊の表示。あったー。
せかせかと、早足で書棚へ。一冊確保。すぐレジへ行き、精算をすませた。
家に帰りじっくり作品を鑑賞しながら、それぞれの作品に添えられた短い物語を読む。
一冊あっと言う間に読み終えた。
何て優しくて美しい世界が繰り広げられているのだろう。
作品にふれている間、すっかり子供の頃にかえって楽しんだ。
リトさんは心根の優しい方だ。
葉っぱ切り絵作家になる前は、会社勤めをされていたのだが、ADHDという障害があり、随分苦労され苦しまれたようだ。
でも、インターネットでスペインのアーティストによるleaf artに偶然出会ったことにより、葉っぱの切り絵作家の道を進むきっかけになったという事だ。
リトさん風に真似して写真を取ってみた。
9月の中旬、秋晴れの気持ちの良い日、夫を誘って買い物がてら、散歩に出かけた。
天神山…と言っても丘の様なゆるやかさだが…を登りきって降りてきた時、地面に自然が作り出したリーフアートが落ちていた。
思わず拾い上げ、リトさんの作品風に写真を取ってみた。
現実社会は言うまでもなくシビアだ。
自分も含め、皆、大なり小なり悩み苦しんでいる。生きるって大変だ。
でも、リトさんの葉っぱ切り絵を見ていると、束の間、その世界の中へ入り込み楽しい気持ちで満たされる。幸福になれる。
リトさんが楽しんで切り出した作品なので、きっと作品を通じて、それがこちらにも伝わってくるのだろう。
「いつでも君のそばにいる」をいつでもそばに置いておく。心の救命本として。