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ポジティブな私 ポジ人

映画「蜘蛛女」の哀愁

めっきり映画を見ることがなくなった。
かつては、映画情報誌の「スクリーン」や「ロードショー」を購入しては、くまなく映画をチェックして劇場で観る作品の品定めをしていたいたものだった。
最近はもっぱらテレビ番組「王様のブランチ」のLiLiCoさんの映画コーナーだけがたよりとなってしまった。

忘れられない映画作品は数々あるけれど、最近思い出したのはゲイリー・オールドマン主演の1993年製作の映画「蜘蛛女」。

この映画の中でゲイリー・オールドマンが演じるのは、マフィアと癒着して、汚いお金を得ている悪徳警官だ。
それなりに安定した日々を送っていたのだが、レナ・オリン演じる悪女モナの護送をすることになり、それが彼の人生の全てを狂わせていくことになる。

ジャンルでいうと、クライム・サスペンスに当たるのだろうか。ハラハラするシーンが多いし、予想外の展開にドキドキする。

2000年以降の彼の作品を、ほとんど観ていないので、それ以前の作品ということになるが、私が観たゲイリー・オールドマン主演の作品の中では1番好きだ。

本来、人のお手本となるべき警察官という職でありながら、貪欲でずるくて弱くてどうしようもない男。見方を変えると、人間らしいといえば人間らしいのかも知れない。そんな役柄が、彼のはまり役でもあると思う。

映画「レオン」の中でも薬中の警察官を演じていて印象的だったが、「蜘蛛女」の中の彼は、よりリアルに存在するような警察官を演じている。

美しく優しい妻がいながら愛人を囲い、人生を最大限に楽しんでいる小心者の小悪党的な役柄なのだ。

愛人役は若いジュリエット・ルイスが演じている。

この映画のなかで、私の度肝を抜いたのはレナ・オリンの悪女っぷりだ。
レナ・オリンといえば、映画「存在の耐えられない軽さ」に出演していた女優さんだが、本作では彼女の演技力の幅の広さを知らされた。正に怪演。
特に、護送中の車から逃げ出す際の手口は“見もの”。あの姿こそが題名「蜘蛛女」の由来になったのでは無いかと思ったぐらいだ。

脱走した後もゲイリー・オールドマンを翻弄し、人を殺すこともいとわない恐ろしい女。
危うい均衡を保っていた主人公の日常が、彼女によって、どんどん崩壊の一途をたどる。
観ているこちら側も、主人公の心理にそってハラハラし、気が気ではない。

原題は“Romeo is bleeding”
日本の題名とは、印象が随分異なるが、やはり「蜘蛛女」の題名の方が似つかわしいかも知れ無い。

やがて、恐ろしくも切ない物語のエンディング。
切な過ぎて、何時までも心に余韻が残る。

いつも、少し切ない物語に惹きつけられる。
音楽もちょっと悲しい曲の方が好き。
明るい物よりも、いつも陰りのあるものを好んでしまう。

この映画に強く惹かれるのも多分、主役のゲイリー・オールドマンから感じられる独特の哀愁が理由なのかも知れない。




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