『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず……』
この名文で始まる方丈記に、友人は改めて胸を震わせた。
「800年ほど前の天変地異、時代の転換、大変動を驚くべき描写力で
余すところなく語り、滔々と流れる悠久への思いにかられる」とまで語る。
実を言うと、彼は「方丈記」を手にして読んだのではない。
NHKの古典朗読を聞き、たっぷりとその世界に浸ったのだった。
もう一人の友人、こちらは女性だが、
彼女はスマホでYouTubeの「小説朗読」にすっかりはまってしまったという。
もともと不眠症とは無縁の質。布団を被り「さあ、寝るぞ」と言い聞かせれば、
ものの30秒で寝入ってしまうそうだが、
就寝時の「朗読」にはまってしまったことで、
「眠いけれど寝たくない、寝なきゃいけないのに眠れない」
と途方にくれると嘆いている。彼女いわく。
「何せ、静まり返った夜にしんみり聞く山本周五郎は最高。
周五郎だけではなく、藤沢周平も外せない。
作品を聞いていると胸が熱くなったり、ほろりとしたりで、
話の途中で寝るなんてとんでもないことだ」
「朗読を聞く」のにはまるのは夜に限ったことではないらしい。
昼間、BGM代わりに家事をしながら流し聞きをしてみても同じことだった。
洗濯も掃除もさっぱり手につかず、とうとう、座り込んで聞き入ってしまい、
夕飯の支度が遅くなってしまうこともあったという。
「夢中になって読んだ本も、人の声で耳から聞くと、
また違った臨場感に惹きつけられる」のだそうだ。
本は「読む」時代から「聞く」時代に変わってきたのか。
どうもそうなりつつあるらしい。
つい、この間まで「電子書籍化」ということで、
本を読むのも紙のページをめくるのではなく、画面を指先でめくる時代になった、
そう思っていたのだが、もう次は「聞く」時代なのだという。
「オーディオブック」=「聞く読書」ということもよく聞くようになったし、
実際スマホをはじめ、さまざまなデバイスを通じて
「耳で聞く読書」が広まっているのは確かだ。
また、友人がはまってしまったYOU TUBEでも小説朗読がたくさんアップされている。
さらに俳優や声優の朗読によるCDセットの広告もよく見かける。ちなみに友人は、
「『眠る朗読』というものもあり、一晩中絵本や物語を読み聞かせてくれる。
こちらは耳に優しいゆっくりとした声で、遠慮なく眠くなる。
質の良い睡眠を貰ったようで、翌朝の目覚めもいい」と教えてくれた。
「字間、行間に込めた作者の思いを読み解きながらページをめくる」
と教えられてきた僕なぞはどこか馴染みにくいのだが、
いずれにせよ、何事につけても世は変わっていくものだ。
方丈記はこう続いている。
「……よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまるためしなし」
方丈記 知識がふえました。
普通にしゃべればいいものを
言葉の 余韻がいいです。
このようにそらんじれる
憧れです。
よどみに浮かぶうたかたは
久しく、、、。
仏教で無常と言うらしいと
聞きましたが味がないですね。
私は、NHK 日曜名作劇場で
西田さんと竹下さんの名演に
這っています。
おじゃましました。
古典は実に味わい深いですね。
読み解く難しさはありますが、じわっと感慨が沁み込んできます。