「高校2年生になる孫息子が、木に対して強い興味を持っていましてね。
聞きますと、幼児の頃からフランス製の木のおもちゃで遊ばせていたそうです。
物心つく頃から『木の温もり』を感じながら育った孫は、
そのような感性を持つ子に育ったのでしょうね」
自らも幼少時から木に囲まれて育ち、今も好んで木造住宅に暮らす知人は、
そう言って頬を緩めた。
日本は国土面積の6割強を森林が占める、
先進国の中ではフィンランドに次ぐ第2位の森林大国だ。
古代の昔から常に森林と背中合わせに暮らし、
その性質を見抜き、生かす知恵を身につけてきた。
そこから世界に誇る「木の文化」を生み出してもいる。
だが、林業の現実は厳しい。
2022年の産出額は5807億円と、やや増加傾向にあるが、
それでもピーク時の1980年、1兆1588億円の半分程度だ。
原因は、一言で言えば生活環境における〝木離れ〟であろう。
周囲を見渡しても分かるように、たとえば住居は、
かつては木造家屋がほとんどだったものが、
今はマンションなどに取って代わられている。
木材需要の減少を知る一例が目の前にある。
この林業の不振は、いろんな問題につながる。
一例が防災だ。よく「森林は緑のダム」と言われる。
スポンジのようにすき間の多い森林の土は、すき間に雨水を蓄え、
川へゆっくり送り出す。
それにより大雨が降っても洪水になりにくくしているのだ。
また樹木の枝葉や地表を覆う植物は地面の浸食を防ぐし、
根がしっかり土をつかまえているため、山崩れ(土砂崩れ)を防ぐ効果がある。
ただ、これら森林の持つ働きは、
間伐や下刈りなど適切な手入れがあってこその話だ。
その手入れには、当然人手がいる。
ところが林業が不振になると、若者の林業離れを招き、
就業者の高齢化が一段と進む。その結果、森林管理が行き届かなくなるのだ。
毎年のように各地で大きな豪雨被害が繰り返されている。
線状降水帯という厄介な気象現象によって川が氾濫し土砂崩れを起こす。
その原因の一つとされているのが、森林の脆弱化なのだ。
そんな危険な季節が近づいてきた。
こうした災害を防ぐにも、やはり「幼い頃から木に触れさせ、親しませる。
ここから始めよ」ということか。
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