新年あけましておめでとうございます。みなさまの2018年はいかがだったでしょうか。
私の2018年は大きな変化もなく割と「凡」な1年かと思いきや、年末麻雀にて緑一色を上がってしまい『2018年が「凡」だった理由はてめえか~』となりました。
まあ、麻雀の中でも最も好きな役なので良しとしましょう。2019年の目標は九蓮宝燈を上がることです(大嘘)
というわけで(?)毎年恒例!独断と偏見による年間映画ランキングベスト10の発表です!
今年は東京国際映画祭で割と命を削ったせいか、鑑賞本数は新旧合わせて129本となりました。
【第1位】
ジュリア・デュクルノー監督
『RAW〜少女のめざめ〜』
製作国:ベルギー
日本公開日:2018年2月2日
2018年の首位は、個人的なフェチにドンピシャだった少女が欲望に目覚めていく本作品。カット、美術、演技、音楽、どれもが「抑圧からの解放」の世界観を緻密に構成しており、監督の初長編作品とは思えないクオリティの高さでした。
厳格なベジタリアンの家系で育った超ストイックな主人公が、大学という野谷に放たれ欲望の味を覚えていく過程が本当にスリリンング観る者を魅了します。最終的に食人という欲望にたどり着くのですが、そんなタブーな欲望を満たせるたったひとつの可能性とは……?
完全に「カニバリズム」なのでグロい描写や血が苦手な方にはおすすめできませんが、勇気がある方はぜひチャレンジを!
作品の詳しい感想はこちら
【第2位】
リューベン・オストルンド監督
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
製作国:スウェーデン
日本公開日: 2018年4月28日
2017年にパルムドール(カンヌの最高賞、今年は是枝監督の『万引き家族』が受賞したことで話題に!)を受賞した作品。ホラーでも戦争モノでもないにも関わらず、精神がジリジリなぶられる非常に後味の悪い作品です。
人の倫理観を問う作品は多々あれど、本作は鑑賞者である私たちの倫理観をも試すようなブラックコメディー。観客は主人公クリスティアンが巻き込まれる事件に対し思わず笑ってしまいますが、同時に観客は自省も促されます。「あなたは本当にクリスティアンとは違う行動がとれますか?」と。
人数が増えれば増えるほど責任の分散が起きてしまう集団心理「傍観者効果」というギミックが、私たちの倫理観に問いかけます。
作品の詳しい感想はこちら
【第3位】
ジョーン・ベイカー監督
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
製作国:アメリカ
日本公開日: 2018年5月12日
フロリダでモーテル暮らしをするシングルマザーのヘイリーとその娘ムーニーの物語。ディズニーという巨大資本とヒドゥン・ホームレス(隠れたホームレス:定住せずモーテル暮らしを強いられる人々)という貧困層が併存するフロリダの姿が巧みに描かれています。
カラフルな世界観で繰り広げられる無邪気な子供たちのドラマと、背景に忍び寄る悲劇(母子強制別居)が前半後半で対照的な作品です。カラフルな建物の背景に広がる暗雲が作品の構造をそのまま代弁するかのよう。
大人もたじたじのガキ大将ムーニーが、作中に唯一見せる涙(まさに"漢"泣き!)にはもらい泣きせざるを得ません。
作品の詳しい感想はこちら
【第4位】
石田祐康監督
『ペンギン・ハイウェイ』
製作国:日本
日本公開日: 2018年8月17日
森見登美彦の原作をアニメ化。完全にノーマークでしたが、これがもうとんでもなく素晴らしく今年の邦画1位となりました。
大人になりかけの「少年」が憧れの「お姉さん」と一緒に世界を救う話。言葉では説明できない世界観なのでぜひ観てみてください。ペンギンの雪崩が二人を異世界に連れていくクライマックス(!?)は、爽快であると同時に別れを暗示された切なさも同居する素晴らしいシーン。かーっ、これぞ青春!な映画です。
あと、「お姉さん」役を演じた蒼井優の声優としての実力に思わず脱帽すること間違いなし!
【第5位】
アンドレイ・ズギャビンツェフ監督
『ラブレス』
製作国:ロシア
日本公開日: 2018年4月7日
今回紹介する中で最も暗い話です。愛を失い離婚を予定していた夫婦が失踪した息子アレクセイを探す物語。"LOVELESS"というタイトル通り、そこに愛はなく、愛を求めて命を賭した息子が全く報われない悲劇です。
監督のアンドレイ・ズギャビンツェフは、前作の『裁かれるは善人のみ』で地方の汚職を題材に「ロシアの暗部」にスポットを当てました。今回は「人類の暗部」とも呼ぶべき、行き過ぎた自己愛に焦点を当てています。「個人の時代」と声高に謳われているこの社会が行き着く先は果たして……
人間の性根はどこまでいっても、何をしても、変わらないものなのでしょうか。
作品の詳しい感想はこちら
【第6位】
スティーブン・スピルバーグ監督
『レディ・プレイヤー1』
製作国:アメリカ
日本公開日: 2018年4月20日
言わずもがな、巨匠スティーブン・スピルバーグの最新作。VRの世界で繰り広げられるどエンタメ!IMAXで鑑賞しましたが全く新しい映像体験に、映画の更なる可能性を感じました。
加えて!『シャイニング』の世界観に入っていけるし、メカゴジラとガンダムが戦うし、もうサブカル好きにはたまらない演出の数々!難しいことを考えず、これだけ手放しに楽しめるのは流石としか言いようがありません。
【第7位】
ヨルゴス・ランティモス監督
『聖なる鹿殺し』
製作国:ギリシャ
日本公開日: 2018年3月3日
あの『ロブスター』のヨルゴス・ランティモス最新作。エウリピデスのギリシア悲劇をベースにした復讐譚です。
父親を過失と思しき医療事故で殺された青年マーティンが、超常的な呪いで執刀医スティーブンに復讐をせんと家族に接近していく。本人への復讐ではなく「家族を失う」という同じ軸で、スティーブンの家族に死の呪いをかけるマーティン。妻・娘・息子の誰を犠牲にするかスティーブンに選択するよう迫ります。一体誰が「聖なる鹿」として犠牲になってしまうのか……暫く残る余韻がザ・ランティモスの真骨頂。
「目には目を、歯には歯を」のハンムラビ法典を思わせる公平性や説明のない超越した能力に神々しささえ見出せてしまう、マーティンを演じたバリー・コーガンに注目!
今年上映の『女王陛下のお気に入り』も今から楽しみです。
作品の詳しい感想はこちら
【第8位】
吉田恵輔監督
『愛しのアイリーン』
製作国:日本
日本公開日: 2018年9月14日
同監督の『ヒメアノ〜ル』という衝撃から2年。またもやとんでもない作品が……金で買われたフィリピーナは日本で幸せになれるのか、という単純な話ではなかった!
木野花の渾身の演技始め、俳優陣がとても素晴らしい。アイリーン役のナッツ・シトイやカメレオン俳優安田顕、実力派俳優伊勢谷友介など、役者が魅せてくれる映画でもあります。『ヒメアノ〜ル』同様、過激なエログロ有りなので耐性ない人はお気をつけください。
【第9位】
ヨアキム・トリアー監督
『テルマ』
製作国:ノルウェー
日本公開日: 2018年10月20日
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で知られるラース・フォン・トリアー監督の親類ヨアキム・トリアーの北欧ホラー。
敬虔なキリスト教の家で育ったテルマは、大学入学を機に内に秘めていた超能力が暴走を始める。テルマが自身の癲癇現象を調べていく内に、自らの正体に気づいていく行程には手に汗を握ります。要所に自由の象徴としての鳥が出てきますが、長年家族に飼い殺されていたテルマは鳥籠から羽ばたけるのでしょうか。
テルマの超能力があまりにも強力でチート過ぎるのがポイント。なお、ホラーと言うほど怖くはありません。
【第10位】
ハイファ・アル=マンスール監督
『メアリーの総て』
製作国:イギリス
日本公開日: 2018年12月15日
私の中でたぬき系美女No.1と呼び声の高いエル・ファニングが、「フランケンシュタイン」の作者メアリーを演じた作品。
エル・ファニング好きは確実に見てほしいのはもちろんですが、「フランケンシュタイン」が生まれるまでのドラマが非常に巧みに描かれています。グレー基調の中世的世界観も素敵だし、エル・ファニングは神美人だし、バイロンの愛人役を演じたベル・パウリーもキュート!そして何より、文学における女性の地位獲得という側面にも踏み込んでいます。(監督がサウジアラビア初の女性監督というのもまた深い意義があります)
ポリドリが「吸血鬼」を生み出した「ディオダディ荘の怪奇談義」も描かれ、そこで睨みを効かせるフュースリの「夢魔」がとんでもなく良いスパイス!
映画祭の作品はベストには入れないというルールに変更しましたので、最後に特別編という形で1本だけ映画祭の作品を紹介しておきます。
【特別編】
パールフィ・ジョルジ監督
『His Master's Voice』
製作国:ハンガリー
日本公開日: 東京国際映画祭
つい先日紹介したばかりですが、スタニスワフ・レムの原作小説「主の声(Głos Pana)」を大胆に解釈した本作を改めて紹介しておきます。
もともと、レム原作を始めとするSF系の作品は好みの傾向にありましたが、生命に纏わる壮大なテーマやミクロとマクロを往来する秀逸な映像構成、とにかくクールなクレジットなど、過去の名作に負けず劣らずの素晴らしいSF映画作品です。「全は一」「一は全」という仏教曼荼羅のような壮大な世界観は、クリスチャンのテレンス・マリック監督に通じるものを感じます。
東京国際映画祭で特に賞は受賞しなかったので、劇場公開はされないかと思いますが、ぜひ観る機会がありましたら観てみてください。
作品の詳しい感想はこちら
というわけで、今年も長〜くなりましたが、2018年映画事情を振り返ってみました。
好みの映画は上半期に集中していて、特に上位3作品はすべて上半期!下半期で最も好みだったのは『ペンギン・ハイウェイ』という結果でしたね。
毎年末友人と映画ランキングを発表し合っていますが、毎回「好みがわかりやすい」と言われています。
そして、それは若干自認もしており、「少女」が「制約」から「解放」されて「成長」する話は、『不思議の国のアリス』から連なる伝統だと思っているので問答無用で高く評価してしまうんですよね。(今年で言えば『RAW〜少女のめざめ〜』や『テルマ』)
これが所謂フェティシズムというやつですね……
これは『不思議の国のアリス』の系譜に違いない!という作品がありましたら、ぜひご一報くださいませ。
今年も良き映画たちに出会えますように、南無南無。
私の2018年は大きな変化もなく割と「凡」な1年かと思いきや、年末麻雀にて緑一色を上がってしまい『2018年が「凡」だった理由はてめえか~』となりました。
まあ、麻雀の中でも最も好きな役なので良しとしましょう。2019年の目標は九蓮宝燈を上がることです(大嘘)
というわけで(?)毎年恒例!独断と偏見による年間映画ランキングベスト10の発表です!
今年は東京国際映画祭で割と命を削ったせいか、鑑賞本数は新旧合わせて129本となりました。
【第1位】
ジュリア・デュクルノー監督
『RAW〜少女のめざめ〜』
製作国:ベルギー
日本公開日:2018年2月2日
2018年の首位は、個人的なフェチにドンピシャだった少女が欲望に目覚めていく本作品。カット、美術、演技、音楽、どれもが「抑圧からの解放」の世界観を緻密に構成しており、監督の初長編作品とは思えないクオリティの高さでした。
厳格なベジタリアンの家系で育った超ストイックな主人公が、大学という野谷に放たれ欲望の味を覚えていく過程が本当にスリリンング観る者を魅了します。最終的に食人という欲望にたどり着くのですが、そんなタブーな欲望を満たせるたったひとつの可能性とは……?
完全に「カニバリズム」なのでグロい描写や血が苦手な方にはおすすめできませんが、勇気がある方はぜひチャレンジを!
作品の詳しい感想はこちら
【第2位】
リューベン・オストルンド監督
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
製作国:スウェーデン
日本公開日: 2018年4月28日
2017年にパルムドール(カンヌの最高賞、今年は是枝監督の『万引き家族』が受賞したことで話題に!)を受賞した作品。ホラーでも戦争モノでもないにも関わらず、精神がジリジリなぶられる非常に後味の悪い作品です。
人の倫理観を問う作品は多々あれど、本作は鑑賞者である私たちの倫理観をも試すようなブラックコメディー。観客は主人公クリスティアンが巻き込まれる事件に対し思わず笑ってしまいますが、同時に観客は自省も促されます。「あなたは本当にクリスティアンとは違う行動がとれますか?」と。
人数が増えれば増えるほど責任の分散が起きてしまう集団心理「傍観者効果」というギミックが、私たちの倫理観に問いかけます。
作品の詳しい感想はこちら
【第3位】
ジョーン・ベイカー監督
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
製作国:アメリカ
日本公開日: 2018年5月12日
フロリダでモーテル暮らしをするシングルマザーのヘイリーとその娘ムーニーの物語。ディズニーという巨大資本とヒドゥン・ホームレス(隠れたホームレス:定住せずモーテル暮らしを強いられる人々)という貧困層が併存するフロリダの姿が巧みに描かれています。
カラフルな世界観で繰り広げられる無邪気な子供たちのドラマと、背景に忍び寄る悲劇(母子強制別居)が前半後半で対照的な作品です。カラフルな建物の背景に広がる暗雲が作品の構造をそのまま代弁するかのよう。
大人もたじたじのガキ大将ムーニーが、作中に唯一見せる涙(まさに"漢"泣き!)にはもらい泣きせざるを得ません。
作品の詳しい感想はこちら
【第4位】
石田祐康監督
『ペンギン・ハイウェイ』
製作国:日本
日本公開日: 2018年8月17日
森見登美彦の原作をアニメ化。完全にノーマークでしたが、これがもうとんでもなく素晴らしく今年の邦画1位となりました。
大人になりかけの「少年」が憧れの「お姉さん」と一緒に世界を救う話。言葉では説明できない世界観なのでぜひ観てみてください。ペンギンの雪崩が二人を異世界に連れていくクライマックス(!?)は、爽快であると同時に別れを暗示された切なさも同居する素晴らしいシーン。かーっ、これぞ青春!な映画です。
あと、「お姉さん」役を演じた蒼井優の声優としての実力に思わず脱帽すること間違いなし!
【第5位】
アンドレイ・ズギャビンツェフ監督
『ラブレス』
製作国:ロシア
日本公開日: 2018年4月7日
今回紹介する中で最も暗い話です。愛を失い離婚を予定していた夫婦が失踪した息子アレクセイを探す物語。"LOVELESS"というタイトル通り、そこに愛はなく、愛を求めて命を賭した息子が全く報われない悲劇です。
監督のアンドレイ・ズギャビンツェフは、前作の『裁かれるは善人のみ』で地方の汚職を題材に「ロシアの暗部」にスポットを当てました。今回は「人類の暗部」とも呼ぶべき、行き過ぎた自己愛に焦点を当てています。「個人の時代」と声高に謳われているこの社会が行き着く先は果たして……
人間の性根はどこまでいっても、何をしても、変わらないものなのでしょうか。
作品の詳しい感想はこちら
【第6位】
スティーブン・スピルバーグ監督
『レディ・プレイヤー1』
製作国:アメリカ
日本公開日: 2018年4月20日
言わずもがな、巨匠スティーブン・スピルバーグの最新作。VRの世界で繰り広げられるどエンタメ!IMAXで鑑賞しましたが全く新しい映像体験に、映画の更なる可能性を感じました。
加えて!『シャイニング』の世界観に入っていけるし、メカゴジラとガンダムが戦うし、もうサブカル好きにはたまらない演出の数々!難しいことを考えず、これだけ手放しに楽しめるのは流石としか言いようがありません。
【第7位】
ヨルゴス・ランティモス監督
『聖なる鹿殺し』
製作国:ギリシャ
日本公開日: 2018年3月3日
あの『ロブスター』のヨルゴス・ランティモス最新作。エウリピデスのギリシア悲劇をベースにした復讐譚です。
父親を過失と思しき医療事故で殺された青年マーティンが、超常的な呪いで執刀医スティーブンに復讐をせんと家族に接近していく。本人への復讐ではなく「家族を失う」という同じ軸で、スティーブンの家族に死の呪いをかけるマーティン。妻・娘・息子の誰を犠牲にするかスティーブンに選択するよう迫ります。一体誰が「聖なる鹿」として犠牲になってしまうのか……暫く残る余韻がザ・ランティモスの真骨頂。
「目には目を、歯には歯を」のハンムラビ法典を思わせる公平性や説明のない超越した能力に神々しささえ見出せてしまう、マーティンを演じたバリー・コーガンに注目!
今年上映の『女王陛下のお気に入り』も今から楽しみです。
作品の詳しい感想はこちら
【第8位】
吉田恵輔監督
『愛しのアイリーン』
製作国:日本
日本公開日: 2018年9月14日
同監督の『ヒメアノ〜ル』という衝撃から2年。またもやとんでもない作品が……金で買われたフィリピーナは日本で幸せになれるのか、という単純な話ではなかった!
木野花の渾身の演技始め、俳優陣がとても素晴らしい。アイリーン役のナッツ・シトイやカメレオン俳優安田顕、実力派俳優伊勢谷友介など、役者が魅せてくれる映画でもあります。『ヒメアノ〜ル』同様、過激なエログロ有りなので耐性ない人はお気をつけください。
【第9位】
ヨアキム・トリアー監督
『テルマ』
製作国:ノルウェー
日本公開日: 2018年10月20日
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で知られるラース・フォン・トリアー監督の親類ヨアキム・トリアーの北欧ホラー。
敬虔なキリスト教の家で育ったテルマは、大学入学を機に内に秘めていた超能力が暴走を始める。テルマが自身の癲癇現象を調べていく内に、自らの正体に気づいていく行程には手に汗を握ります。要所に自由の象徴としての鳥が出てきますが、長年家族に飼い殺されていたテルマは鳥籠から羽ばたけるのでしょうか。
テルマの超能力があまりにも強力でチート過ぎるのがポイント。なお、ホラーと言うほど怖くはありません。
【第10位】
ハイファ・アル=マンスール監督
『メアリーの総て』
製作国:イギリス
日本公開日: 2018年12月15日
私の中でたぬき系美女No.1と呼び声の高いエル・ファニングが、「フランケンシュタイン」の作者メアリーを演じた作品。
エル・ファニング好きは確実に見てほしいのはもちろんですが、「フランケンシュタイン」が生まれるまでのドラマが非常に巧みに描かれています。グレー基調の中世的世界観も素敵だし、エル・ファニングは神美人だし、バイロンの愛人役を演じたベル・パウリーもキュート!そして何より、文学における女性の地位獲得という側面にも踏み込んでいます。(監督がサウジアラビア初の女性監督というのもまた深い意義があります)
ポリドリが「吸血鬼」を生み出した「ディオダディ荘の怪奇談義」も描かれ、そこで睨みを効かせるフュースリの「夢魔」がとんでもなく良いスパイス!
映画祭の作品はベストには入れないというルールに変更しましたので、最後に特別編という形で1本だけ映画祭の作品を紹介しておきます。
【特別編】
パールフィ・ジョルジ監督
『His Master's Voice』
製作国:ハンガリー
日本公開日: 東京国際映画祭
つい先日紹介したばかりですが、スタニスワフ・レムの原作小説「主の声(Głos Pana)」を大胆に解釈した本作を改めて紹介しておきます。
もともと、レム原作を始めとするSF系の作品は好みの傾向にありましたが、生命に纏わる壮大なテーマやミクロとマクロを往来する秀逸な映像構成、とにかくクールなクレジットなど、過去の名作に負けず劣らずの素晴らしいSF映画作品です。「全は一」「一は全」という仏教曼荼羅のような壮大な世界観は、クリスチャンのテレンス・マリック監督に通じるものを感じます。
東京国際映画祭で特に賞は受賞しなかったので、劇場公開はされないかと思いますが、ぜひ観る機会がありましたら観てみてください。
作品の詳しい感想はこちら
というわけで、今年も長〜くなりましたが、2018年映画事情を振り返ってみました。
好みの映画は上半期に集中していて、特に上位3作品はすべて上半期!下半期で最も好みだったのは『ペンギン・ハイウェイ』という結果でしたね。
毎年末友人と映画ランキングを発表し合っていますが、毎回「好みがわかりやすい」と言われています。
そして、それは若干自認もしており、「少女」が「制約」から「解放」されて「成長」する話は、『不思議の国のアリス』から連なる伝統だと思っているので問答無用で高く評価してしまうんですよね。(今年で言えば『RAW〜少女のめざめ〜』や『テルマ』)
これが所謂フェティシズムというやつですね……
これは『不思議の国のアリス』の系譜に違いない!という作品がありましたら、ぜひご一報くださいませ。
今年も良き映画たちに出会えますように、南無南無。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます